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0808_流れ出る

 ザッと明るい中で雨が降った。降ったというよりも、降り抜けていった感じ。蒸し暑いのに爽やかだった。ベタベタと張り付く汗が不快で、雨に当たりにいくくらいには蒸し暑くて気持ちよかった。雨はまた降る。

 雨と匂いで夏を感じて、春を思っては気づけば1年の半分が過ぎたことを知る。雨粒とともに私の毎日も流れ落ちるようで、それは私をいつも妙な気分にさせる。流れ落とすほどの私の毎日は取り立てて何もないのだった。なにもないはずなので流れ出ていったとしても、さして困ることはないはずなのに、私は結構困っている。

 あれもやろうと思っていたのに、
 これもやりたかったのに、
 今年はこうしようと決めたのに、
 年の後半にはこうなっていたかったのに、

 思うばかりで何もしていない。何もしていないから、雨とともに流れ出ていく。流れ出ていくから、私の中に残らず、私の思いは消えていき、ふとした時に思い出しては急に慌てふためく。

 私は急ぎ、雨を止めることにした。
 雨が上がれば、流れ出ない。
 流れでなければ私の思いはきちんと私の中にある。ふとした時ではなく、いつでも心にそれがある。

 雨が止み、不穏な雲ぐもの隙間から、きらきらと輝く晴れ間が見えた。この景色はいつも不思議に思う。怒っている人と笑っている人が仲良くすることとどこか似ている。

 私の思いは、雨に流れることなく、胸の中にしっかりと残っていた。

 私は安心して、ただ空を見上げた。

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