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0615_今だけは

 気だるそうに吐き出した煙が、もあもあと空を飛び、最初から自分は雲だったとでもいうように自由に広がり、いずれ姿を消す。
 私は消えないのになぁと思いつつも、日中からベランダで軽いアルコールを飲むことを幸せと言うのだろうと思う。日差しが適度にさして陽気である。せっかくの太陽の陽を直視することは残念ながらできないが、暖かさでそれを感じている。

 今週は確かに忙しかった。
 はじめての案件がいくつもあり、ひとつずつ確認して進めていくのに随分と時間を要した。おかげでその他の仕事が思うように進まなかった。
 私はそれを気に病んでいた。
 仕方のないことをぐだぐだと考えていることほど無駄なことはない、そんなことは知っているがそれが性分である。それこそ仕方ない。だから、半ば強制的に意識を逸らす必要がある。そこで、ベランダで一人ビアガーデンを実施しているのだが、これがなんとも快適なのだ。

「かんぱーい」

 私は一人、缶を空に向けてかざした。

 地球上、全ての人に乾杯をしたくなる。
 全てのの人が、今だけ仕事も家事もなにもかも忘れて、あなたもどうか飲み物をもって空にかざして。

「かんぱーい」

 隣から、小さな声で「かんぱい」と聞こえる。
 見えない同僚が世の中にはたくさんいるのだと、私は笑っている。


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