0613_私に足る
額に汗をかいていた。
まもなく梅雨だというのに、からりとキレイに晴れている。西日が私の頬をさし、じりついていた。
私はその日、仕事が上手くいかなかった。だからって、落ち込んで下を向くのはなんだかとても嫌だったので、18時に仕事を終えて退社をすると、スキップした。別に、気持ちが晴れるわけでもなかった。
あれもやらなくてはならなかったのに。
あれも止まっている。
あれはどうだったかな。
先延ばしすることさえ先延ばしにしている。自分は怠惰なのだろうかと思っている。その上、要領もよくないだろう。学もなければ器量もないのだからどうしようもない。ははは、と思わず笑う。笑って泣く。誰に何を言われたわけでもないけれど、自覚している。そんな自分にに同僚や先輩は優しく接してくれるのだから、世の中は随分と優しくできているのだと思う。私はそれに甘んじているのだろう。
明日こそ、あれをやろう。全てが難しいのであれば、あの一部分だけでもやろう。そうやって、また1日頑張ろう。
私は何度も思い、振り払い、前を向くことにする。
気付くと私の額にはじんわりと汗が滲むのだった。
少なくとも、私はこうして必死に生きている。それでは足りないのかもしれないけれど、私にはこれでいい。
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