0318_願いましては
私がまだ泣かなかった頃、あなたはさめざめ泣いていました。
私がほんの少し、涙をこの目に浮かべていた頃、あなたはようよう号泣しておりました。
私がやっと、涙をほろりと頬を伝えて地面に落としたその頃、あなたは泣きつかれ、うとうとし始めました。
私が目をつむり、その目尻に涙の粒が次から次へとあふれ出る頃、あなたは眠気から覚め、今どこにいるのかとキョロキョロあたりを見回しました。
私が机に突っ伏して、誰からの声も耳に届かせなかった頃、あなたは遠くの誰かを見つけ大きく手を振り立ち上がりました。
私がもう、誰をも寄せ付けず、部屋の電気も真っ暗に、泣きはらしたのかはらしていないのかも見えずに確認できないそんな頃、あなたは覚えたての爽やかな歌を歌って駆け出しました。
私が止まり、あなたが駆ける。
こんなことはどこの誰でもよくあることでいちいち気にしたとてどうにもならないのだけれど、どうか出来れば、私を知るあなただけは、私と一緒に真っ暗な部屋の中にいてほしかった。
たった1つの大きな願い。
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