9月14日 食いしん坊の日
サラダが美味しいのだと、隣の席の先輩が写真を見せてくれた。グリーングリーンしい葉っぱのそれかと思って覗いてみると、春雨とエビがお目見えする。
「サラダと言うと冷たいイメージだけれどね、じわっと温かいサラダもあるんだ」
雑誌を見て、昨日早速家で作ったらしい。
「うん、美味しそうですね。それでメインは?」
「いや、これだけだよ」
確かにサラダにしてはボリュームがあるけれど。
「それだけで足りるのですか?」
私が尋ねると、先輩は足りると言う。そして、何かを思い出しては味わうように目を閉じた。
「堪能したいんだよ、俺はね」
私は、お昼ご飯に買ったスナックサンドを手に覚悟する。
これは、食べることをこよなく愛する先輩の一人語りが始まる。なお、聴衆は1名。
食事はね、自分で簡単に作ることの出来る幸せなんだ。きっと他にはそうそう無いぜ。
仕事の案件や、働く環境、仲間とかさ、ある程度選んだり避けたりすることは出来ても完全に自由には出来ないだろう。
オシャレもそうだ。既に与えられている素材でどうにか工夫するけど、皆が皆、望めばモデルになれる訳では無い。きっとそれには相応の努力が必要で、それをもってもなれない人もいるよ。
でも、『食』だけは違うんだよ。
人は今の時代1日3食食べている。これを好きなようにすることは出来るんだ。具体的には美味しいものを食べるということだけど、それが思うままにできるんだよ、食事というのは。
もちろん安い食べ物や料理、高い食べ物や料理、様々にある。そりゃ高い食べ物は確かに美味しいだろう。だろう、と言うのは、俺自身、高い食べ物を食べ尽くしたことは無いからあくまで推測なわけだけど。まぁ、いずれにしてもきっと美味しいだろうね。
でも、そうは思わない料理も人もあるだろう。個人の好き嫌いもあるだろうし、その時々の気分もある。それも好きにすればいいのだ。
高価な霜降り和牛のステーキはさぞ美味しかろう。けれど俺は、安い!旨い!早い!の牛丼だって食べたい。時によってはステーキを放っても牛丼を選ぶかもしれない。
同じようにして、大トロも大好きだけどたまに無性に赤身の鉄火巻が食べたくなることもあるしね。土鍋で炊いた料亭ご飯よりコンビニおにぎりを選ぶ時もある。
殆どの人、特に大人だけれど、こんなふうにしてその時の自分の好きなように選べるし食べられるんだ。あぁ、ちょっと手間や努力も必要かもしれないけれど、そんなものは大したことではない。俺にとってはね。そうやって努力するかしないかさえ、自分で決められる。
そうして選んだ『食べたいものを自由に選択』した結果、自分はどうなると思う?
幸せになれるんだよ。
先輩の顔を見ると、実証済みであることがよく分かる。
では選んだものが期待を下回ったら?食を自由に選択できない人はどうしたらいいの?そう聞いてみたかったけれど、またの機会にしよう。
私は今、手に持つスナックサンドを食べたくて仕方ないのだから。
今の私と食を大切にするのだ。
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【今日の記念日】
9月14日 食いしん坊の日
世の中の食いしん坊に向けてさまざまな食の楽しみを提案する雑誌『dancyu(ダンチュウ)』を発行する株式会社プレジデント社が制定。食事をもっと美味しく、もっと楽しくすることを常に心掛けるとともに、生産者や料理人などへの感謝を忘れない、真の食いしん坊のための日とするのが目的。日付は9と14で「く(9)い(1)し(4)んぼう=食いしん坊」の語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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