0726_川がある
川が流れている。
毎日川沿いの土手を歩く習慣のある私にはいつもの光景である。
今日もちゃんと、川が流れているなと確認している。毎日ちゃんと確認をしないとあるとき突然で川がなくなっているかもしれない。もしくは、川はあるとして、水が流れていないかもしれない。
だから、私は『ある』ものを確認しておきたい。
「今日も生きてる」
目の前に水川がいて、私はそう言った。水川は、またかといった顔つきで、生きているよと言った。
「そんなに毎日確認しなくてもいなくならないよ」
「いや、わからないだろう」
「それを言ったら、すべてのものに言えることだよ。全ての存在を毎日確認してるのか」
水川が言い、私はそうだと答えた。答えて、すぐに訂正した。全てではない。
朝起きて、目覚ましがあって正常に動いていることを確認する。キッチンまで向かう動線でカーペットやスリッパ、キッチンに入れば冷蔵庫やそこにあるもの全ての存在を確認する。
「お前の存在は誰が確認してくれるの」
「······ああ、そう言われると」
私は周りのもの全てを確認しては安心していた。けれど、その私自身がいなくなってしまえば、その全ては私にとって、ないに等しい。
私の確認が必要なのだ。
「朝起きていればそれは生きているんだよ」
水川が、まるで発見した!とでも言いたげに笑っていった。まるでその通りだと思いながらも、恐怖を覚えた。これまでの1つひとつの確認が、私の生存如何で全てが『なし』になるのか。そう思うと不安になる。
「お前の生存は俺が毎日確認するよ」
水川が妙に照れたように言った。
私は、それが『大切』なのだと確認した。私も静かに照れていた。
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★著者:あにぃ