0405_大丈夫
ここにあったそれが、両の手の指の間をするするとこぼれ落ちている。同じようにしてほろほろと涙が落ちる。
私の中で確実に何かを失った。
多忙な日々に、不機嫌な彼らに、自分の無力さに、疲労に、悲しみに、私の中で何かが生まれて消えていった。
それは愛であり、希望であったはずで、私はそれらを、ほぅっと落として、失くした。
「大丈夫?」
声をかけてくれる彼女に、私は微笑む。
「大丈夫じゃないけど、大丈夫だよ!」
また、ほろほろとこぼれ落ちた。
何かが生まれてまた、何かを失った。
私は頑張っていて、頑張りたくもないのに頑張っていて、誰かそれを知ってと思うのに、そう思う自分が愚かしく思えてまた、肩を落とす。
「大丈夫だよ!」
また別の彼女が声をかけてくれた。
「良かった、ありがとう」
私は笑う。そして泣いた。
この時、失くしたものが見つかった。
問わないで、伝えて。
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