12月16日十六茶の日
私はリリィ、16歳の女子高生。何を隠そう、私は現在魔女見習いである。我が家の母家系が代々魔女であり、その母から産まれた女の子は魔女になる定め。
『オリジナルの魔法薬を作る』
1人前と認められるための課題はこれだ。与えられているのは魔法書のみで、その魔法書にも載っていないオリジナルの魔法薬を作らなくてはならない。
魔法書には、例えば透明人間になる薬、背が高くなる薬もあれば、体が膨張する薬なんかの作り方も載っていて、一体これらはいつ使うのだろうと考えてしまう。どうせ作るのならば人の役に立つ薬がいいなんて思っているが、それもオリジナルとなるとなかなか難しい。
「いてっ!」
部屋の入口で声が聞こえてハッとする。父が私の黒いほうきに躓いたようだ。
「ごめんね、部屋に置いておこうと思って移動したの。いつの間にか倒れちゃったのね」
私がそう言ってほうきを動かすと、父はぶつけた足の指をさすりながらポツリと言う。
「言っておいてくれたらぶつけなかったのに」
私は父のその言葉を聞いて思い立つ。
分かっていたらぶつけなかった?
でも、と続けて考える。確かに分かっていれば避けられるかも知れないけれど、避けるためには分かっていなければならない。例えば今回であれば、私がちゃんと伝えておく必要があった。
そうしなくてもぶつけない方法、最初から怪我や病気にならない方法。将来そうなることが分かっていてもいなくても避けられる魔法。
私は父をその場に、魔法書をめくる。なってしまった病気を治す魔法はいくつかあるが、まだなっていないものを治す魔法は載っていない。そりゃそうだ。ないものは治せない。でも欲しいのは、病気や怪我をして苦しんでから治す魔法ではなく、そもそもそうならないための魔法。例えば未来を見る魔法で将来の傷や病を知り、それに新しい魔法薬を加えれば、もしかしたら未然に治す、と言うか失くすような薬が作れるかもしれない。
「リリィ、ちょっとお茶にしよう」
「あとで!」
私がバタバタと急に忙しくし始めたのを見て、父は諦めて机に私の分のお茶を置いて部屋を出た。ごめんねと思いながらも、頭に浮かぶ材料を消えないうちに書き留めて行く。
病になる前に病を防ぐ。そのためには未来を見る魔法薬に、ハブの葉にたんぽぽの芽、カワラケツメイ、それとびわの葉……。カリカリと鉛筆で書き連ねていくと、コツン、と鉛筆が何かに触れた。父の置いていってくれたペットボトルのお茶だ。何の気なしに目をやると、丁度今私が書いた文字と同じ文字が並んでいるではないか。
「ハトムギ、大麦、ハブ茶、とうもろこし、玄米……ん?」
続く原材料を見ると私の書いた材料に加えて頭の中にある材料も全て含まれていた。
「な、なにこれ。これでいいんじゃない!?」
私はすぐに『十六茶』を調べる。どうやら『未病』に着目しているようで私は思わずニヤけてしまった。
「これだ!」
私は勢い、十六茶を飲み干した。
病気になる前の体を整える。魔法を使わなくても随分手軽に未来の健康が得られるのかと、私は感心し、持ってきてくれた父に感謝してみる。
健康の味は、香ばしくて美味しい。
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【今日の記念日】
12月16日 十六茶の日
いくつもの人気ブランド飲料を製造・販売するアサヒ飲料株式会社が制定。同社が手がける健康16素材をブレンドして作られた「十六茶」を飲んで、自分の身体や大切な人を思いやる日にとの願いが込められている。日付は1年を通じて飲んでもらいたいとの思いと「十六茶」の名前から毎月16日に。健康16素材とは、たんぽぽの根、エゴマの葉、発芽大麦、ナツメ、玄米、大麦、昆布、ハブ茶、桑の葉、びわの葉、きび、カワラケツメイ、ハトムギ、とうもろこし、黒豆(大豆)、あわ。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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