0322_一番の約束
風が冷たくて、陽が暖かかった。私はゆっくりと襟元を立てて整える。そして、足元にあるソレを見下ろした。
ずっと持っていたお守り。
欠けて破片がバラバラと散らばったソレ。
薄いプラスチックで出来ていて、陳腐なハート型の立体。よれよれになったキーホルダーの紐はちぎれかけていた。私はソレを思い切り地面に叩きつけたのだった。
ずっと一緒にいるって言ったのに。
幼い頃の約束は、年月によって段々と薄まり、ちぎれかけた紐のようにボロボロになっていた。持っているのはまぁるく膨らんだハート型なのに、その中身は全くの空だった。
ずっと一緒にいるって言ったのに。
私はあの子との約束を思い出す。
ずっとずっと、友達でいようね。
ずっとずっと、味方でいるよ。
ずっとずっと、大好きだよ。
ハート型を地面に叩きつけた時、多分私の心も一緒に欠片が散らばったのだろう。今、私はなんとも虚しさしか心にない。
あの子は私。
私は、私自身を裏切ったのだ。
たった1人の味方だと決めた小さな頃からの約束を私は忘れてしまった。忘れて、好きな人が出来ました。
私は私が一番好きだったはずなのに、もっと一番が出来ました。
私は、地面に広がる欠片を、砂利混じりで拾い集めてギュッと握った。欠片の先で指を切る。ぷつっと血が出て、擦ると消えた。
欠片をポッケにしまって私は来た道を戻る。新しい、一番に会いに。
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★著者:あにぃ