“人と仕事するってことですよね。富とか名声と仕事をするわけじゃなくて”
27. 渡邉健太 / 藍師・染師
藍師であり、染師でもある渡邉健太さん。
10年前、藍染体験で衝撃を受けるほど感動した彼は、その後すぐに脱サラ。
従来は分業化されていた藍の植物を育て、天然染料を作る「藍師」の作業からものに染色をする「染師」の工程まで、藍染のすべての工程を一貫して行われています。
膨大な工程すべてに熱を持って挑まれ続ける彼の原動力や、大切にされていることを伺いました💡
■渡邉健太(ワタナベ ケンタ)
藍師、染師。
藍染体験での感動から脱サラし、阿波藍の産地として知られる徳島県上板町へ移住。
従来は分業されていた藍の栽培、染料となる蒅(すくも)造り、染色、製作を一貫して行う株式会社BUAISOU を設立。
より人々の生活に馴染んでいくものづくりを目指し、Watanabe’sを立ち上げる。
古き良き日本の伝統を残しつつ、新たな機軸で藍を伝えるべく、国内外で幅広く活動を行う。
Instagram
@watanabes_japan
Youtube
https://youtube.com/channel/UCizrZetkQZSUTtu0bN65D2Q
Website
https://www.watanabezu.com/
_今の仕事を始めたきっかけは?
最初は東京でサラリーマンをしてました。
やりたいことが何もなかったから、いろんな業種と関われる仕事をしたいっていうので物流に携わって。でもこれを一生やりたいかといえば、面白いけどそうじゃないなと。
そんなときに、藍染職人の話を雑誌でたまたま読んだんです。調べたら東京で藍染体験ができる場所があったんで、気になってすぐに行きましたね。
そこで衝撃を受けて。工房の匂いとか、手の感触とか、五感で藍染を味わった時に「これをやりたい」って思ったんです。
興奮で家に帰っても眠れませんでした。会社を辞めるかは迷いましたけど、やっぱり寝ても覚めても「やりたい」と思ったから3日後には辞表を出しましたね。
潔い方です。保険を全部切ったら、とにかく動くタイプなんで。25歳の時でしたね。
_今の仕事を始めるのに不安はありましたか?また、それはいつ乗り越えましたか?
今振り返ればゾッとしますけど、その時は頭、沸いてましたから(笑)
「やりたい」を超えて「あ、俺これやるために生まれてきたんだ」って思ったんですよ。ズバァンってなりました。
_発想やクリエイティビティの源泉は?
なんでしょうね…けど、もの作りは使う人ありきだと思ってます。
藍染って、使って洗わないと灰汁(あく)が落ちなくて、それが光に反応して色が焼けちゃうんですよ。だから使うものに色を落とさないと、せっかく1年かけて作った色なのに、何百年も残らない。
それってちょっとロマンないなと思って。
「俺はこれがいいと思う!」って誰も使わないものを独りよがりに作っても、スゲェかっこ悪いと思うし。だから丈夫な生地を選ぶし、いいデザインに落とし込みたい。
何より、その年の色は蒅(すくも)という藍の葉を発酵させた天然染料で決まるから、土いじりを含む藍の植物を育てる農作業から大事にしなきゃいけない。
いいものを届けたいなら、全行程に責任持っていたい。それじゃないですかね。
_ 働く中で、あるいは生きてる中で大切にしているキーワードを教えてください
「初心者」って言葉ですね。
人から教えてもらったんですけど、「初心忘れるべからずという心を持っている人が初心者で、素人って意味じゃないよ」と。
それはいつも胸にあります。
僕の初心は、色を見て「パッ」となる時。それは現場から離れてたらやっぱり感じられないことなんですよ。
あの「パッ」っていうのがなくなったら終わり。だから手を動かして、そうなる色を作り続けなきゃいけないなって思ってます。
_仕事をやり続ける原動力は?
やっぱ興味ですね。
だって染料作りって1年に1回なんですよ。70歳までバリバリ体を動かせたとして、これをあと何回できるか数えたら、35回しかやれない。たった35回。
理解しようとして毎年データをとっても、どこまで知れるかって、たいして知れないかもしれない。でもその限られた回数の中で、知れるだけ知りたいと思う。
_失敗から成功に結びついたことはありますか?
全部それです。失敗がなければ成功はない。トライアンドエラーが毎日なんで。
課題が見つからないのが1番退屈なんですよ。ずっと成功していたら「藍って簡単だな」って、すぐ飽きていたかもしれない。
でも「なんで?」っていうのが生まれると楽しいわけですよ。
そこに対して試行錯誤をして、「あぁそういうことか」って腑に落ちたときに、知れることがやっと増えるというか。
ようは失敗がないと前進できないんで。
現状維持が1番嫌いです。
サポートくださりありがとうございます!ご支援いただいたことを糧にこれから制作をがんばります。