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ミッコの入院備忘録①

母が入院してからのことを備忘録として綴っておく。

母のミッコは72歳。
自身が経営するティールームで週4日働いている。娘の私はフリーランスのガーデナーで、お店との関わりは裏方作業中心。お店には月5日ほど立っている。
ミッコは20年ほど前に離婚していて、今は娘の私と会社員の私の夫の3人と保護猫3匹と暮らしている。車で2時間程のところに息子(私の弟)がいる。

救急車を呼ぶまで

2025年1月30日
その日はお店が定休日で自宅で過ごしていた。
15:00頃、私は配達のため外出。
17:00私が帰宅すると椅子に座ったミッコが
「お米研いでいたら急に具合が悪くなった…背中がすごく痛くて動悸が激しい…」と呻いていた。
「え。大丈夫?(ギックリ背中かな…?)」
最初はそんな風に呑気に応えていたものの、
みるみる内に額にはびっしりとあぶら汗が浮かんできた。

なんか普通じゃないのかもしれない…

「救急車呼ぼうか?」と聞くと
「呼んだほうがいいのかなぁ〜?う〜ん…でも、相当辛い…」という。
「昔、ばーちゃんが大動脈解離をした時に症状が似てる気がする…」とか物騒なことを言い出した。

気軽に救急車は呼んじゃいけないんだっけ…
意識もあるし会話も出来てるこの状況はどうなのだろう?
でも自分には判断がつかない。
私が病院まで運ぶ?動かして大丈夫なのか?
補助しながらとはいえ、外は雪。今自力で車まで移動させるのは危険な気がする。
救急相談にかけてみよう。
以前何かで読んだ#7119にかけてみたが繋がらない。(後でわかったが対応していない地域があるとのこと)
行政のホームページを見てもわからない。
ダメだ!もう119しよう。

当時の携帯電話の履歴。途中199とかかけ間違えして慌てているのがわかる。札幌の電話番号は旭川市のHPに載っていた北海道救急医療情報案内センターの番号。当番医療機関を教えてくれるらしい。


コールするとすぐに繋がる。
こちらの状況を伝え、意識があり、会話も出来ているが、親が大動脈解離した時に症状が似ている気がすると言っていることを伝えて、救急車を呼んでいいのか訊ねると、
「目の前にいるあなたが必要だと感じたなら呼んで大丈夫ですよ。どうしますか?」と、
落ち着いた声で言ってもらい、少し冷静になってくる。
思っていたより気が動転していたことに気づいた。
「で、では、お願いします」

救急車が来るまで

電話を切ってから
健康保険証、お薬手帳を持ち、玄関から障害になりそうなものがないか確認、動線を確保した。
知らない人が来てパニックになる猫が2匹いることを思い出し、慌てて個室に閉じ込める。肝が据わって微動だにしない残り1匹はそのまま放置。

そうこうしている内に救急車到着。
玄関を開け放した状態で迎える。

直ぐに
酸素飽和度、左右の腕で血圧を測られる。
いつも110/60くらいの血圧が上が160くらいになっていた。
体温も測られるが36度。

同時に色々質問されるミッコ。
いつから痛いのか、どんな風に痛いのか、痛みは移動するか、体を動かしたら痛みは変わるのか、過去に大きな病気はしたか、かかりつけはあるのか、MAX痛いのが10とすると今はどれくらい?などなど。
辛い中、同じような質問を何度も繰り返されるのでだんだんイライラしてくるミッコ。

救急隊員さん達の様子はあまり切羽詰まった感じはせず、私もなんか呼んじゃいけなかったかな…なんて焦る。

突然インターホンが鳴り、開けっ放しの玄関に行くと
トドックの配達員さんが不安そうに立っていた。
タイミングよ。と思いながら商品を受け取る。

ややあって
うーん。とりあえず運ぶかー。となり、
担架に寝るよう促されるが仰向けは辛すぎて寝られず横向きで運ばれる。

ミッコが救急車に乗せられ、私は閉じ込めていた猫を解放してから乗り込んだ。
放置していた猫の銀子さんは隊員が来ても微動だにせず、まるで置物のようだった。

受け入れ先が決まり発車。

仕事中の夫にミッコが倒れたことと搬送先をLINEする。
ここまでで救急車呼んでから20分くらい。

救急車を呼んで良かったと思えるまで

18:00頃、病院に到着。
CTを撮るための同意書やら何やら検査の説明や造影剤の副作用など説明を受け何枚か書類を書かされる。

待っている間、救急車で運ばれてきたお爺さんが処置室ではなく待合室に座らされ、看護師さんと話しているのが聞こえてきた。
「今回の感じですと、救急車ではなくて、タクシーできてねー」とやんわり怒られている。

どうしよう。うちも同じようなパターンなら申し訳なさすぎる。と、少し怖くなる。

19:00頃、夫が合流。
二人でぼーっと待合室で待つ。
おにぎりを買ってきてくれてたが、その時は食べる気が起きなかった。

19:30頃、ようやく呼ばれる。
「大動脈解離です。すぐに〇〇病院に搬送します。
詳しくは〇〇病院の先生に聞いてください。
娘さんも直ぐに向かってください。」
「え??!」
「とりあえず、お母さんと話しますか?どうぞ」と、唐突に面会が許される。

「大事になってしまったね…」
何と声をかけたらいいか分からず、そんなようなことを言ったと思う。
「もう、私はここまでだね。もうダメでしょ。色んなことまだ整理できてないのに。」と、ミッコは物凄く弱気なことをつらつらと口走っていた。

「いやいや、大丈夫でしょ!何言ってんの!」
ギョッとして私も夫もとにかく明るく振る舞った。何というか、普通に話せてるし、きっと大丈夫だろうとその時本心で思ったので、簡単に言葉になった。

入院先の病院へ

〇〇病院に移動しながら、遠方に住んでいる弟に連絡するも電話に出ず。

明日からのお店のことをスタッフに連絡して、とりあえず1週間休業することに決める。その間に入っている予約は翌日スタッフのMさんが出勤してキャンセルの電話をしてくれることになった。気にしなきゃいけないことを1つでも手放せるのは本当に助かる。

もう一度弟に電話するもまた出ず。

20:00少し前、
搬送先の病院に到着する頃、折り返し弟から着信あり、
手短に状況を伝えて電話を切る。

初めて来たデカい病院の敷地内で迷子になる。(雪景色で夜だと視認しづらいのだ)
ようやく待合室に座ってしばらくぼーっとすると、だんだんと空腹を思い出す。
夫が買ってきてくれてたおにぎりを食べた。

21:30頃ようやく先生に呼ばれる。
B型急性大動脈解離と告げられる。
長い待ち時間で色々調べてたからそうかなとは思っていた。

病状の詳細、治療方針などをテキパキと説明を受ける。
若くてシゴデキっぽい先生だったが、
実の娘は私なのに、先生はずっと夫の方を見て話し続けていたことにイラつきつつ堪える。

何枚か同意書にサインをする。
再びミッコとの面会を許される。

とりあえず、血圧が上がるようなことは考えず、店のことも忘れて無になってゆっくり休むように伝える。
ミッコもさっき会った時よりは気持ちが落ち着いているようだった。

その夜はICUで
病状の落ち着き具合でHCUに移動になるという。

「それじゃあ、明日またくるからね」と言って処置室を出る。
看護師さんから入院に際した説明があるからと、ICUの待合室に通される。

弟に状況をLINEする。

22:00頃
ようやく説明を受け、帰宅することになった。

1日目が終わる

帰宅し、猫達にご飯をあげ、
キッチンの流し台の中を覗くと
研ぎかけのお米が糠水を吸った状態のままだった。
そういえばそうでした。と、
水を吸って柔く崩れそうなそれをそっと洗い、炊飯器にセットした。

とにかく頭も身体もクタクタだったので、
色々な考えはまとまりそうになかったが、
とりあえずSNSに店の休業のお知らせをアップした。

自分の動きも読めない感じだったので、
正直にミッコが入院したことを記載すると、
ミッコのお友達数名から連絡がきた。
メッセージや電話で状況をお知らせする。
愛されミッコである。

長かったような、あっという間だったような1日目が終わった。

その後は気絶するように眠ってしまった。

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