嵐の夜、飼い犬に唸られたら
大学生の頃、一軒家に住んでいました。
そのころ親は仕事で帰ってくることが少なかったので番犬として柴犬を庭で飼っていました。
名前はヒメ。
本当は「シーバー」が良かったのですが、「柴田さん」という友達がそのあだ名だったので、こちらになりました。
さて、台風の夜も私とヒメでお留守番。
夜ごはんの後、居間でおかきをボリボリ食べながら外を見ると、大雨で風も木々を揺らすひどい天気です。
そこで今夜はヒメを特別に家のたたきで寝かせてあげようと思いつきました。
真っ暗でものすごい雨風の中、傘をさして庭へ。
ヒメは犬小屋の奥で丸く寝ていたのですが、鎖を外され私に連れられて家のたたきへ。
連れてきたはいいけど今度はヒメが寝られるように敷くものが必要だな、ということに気づき
「ちょっと待っててね」と何かないか探しに別の部屋に行きました。
なかなか見つからずにウロウロし、途中たたきに目をやると…
ヒメがいません。
「あれ?」
カサカサ音がする居間に入ると、
なんとヒメが私の食べかけのおかきをボリボリ食べています。
袋に顔を突っ込んで。
しかもかなり食べられています。
「こらっ!」
するとヒメは
くるりとこちらを向き、
食べかけのおかきを口からこぼしながら
「ヴ~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
と唸ってくるではありませんか。
見たことない位、鼻にしわが寄っています。
まるで「もののけ姫」に出てくる白い犬神モロの君、さながらの威嚇です。
やばい、今咬まれたら助けを求める親もいないし、夜だから病院閉まってる!
この事態をどうする!?
「おすわり!」
ヒメは
「あっ、アタシ飼い犬だった・・・」と思い出したのかサッとその場でおすわりしました。
何事もなかったかのように。
私はすぐに首輪を持ち、元の犬小屋に戻すことにしました。
もう二度と動物に唸られるのはゴメンです。
ヒメはさっき飼い主に唸ったことなど無かったかのようにシレッと私に連れられていきました。
もし、嵐の中飼い犬に唸られることがありましたら「おすわり!」で回避。
覚えておいてソンはありませんよ。
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