39歳前夜、風穴を開ける
割とかなりのTMIとして、私の右耳には一つ、左耳には三つピアスホールが開いている。若い頃はそれなりに凡庸に楽しんだけど、今となってはかなりどうでもいい穴で、左耳の上二つは近年もう10年くらい使っていなかった。
両耳にある正規穴は、高校を卒業した時に皮膚科で開けてもらった。田舎ではピアスはヤンキーの象徴であったため、父は一通り不機嫌になった。
左耳にある二つ目の穴は、いつ開けたか全く覚えていない。いつのまにか開いていた謎穴。
そして左耳三つ目の穴は、パリ時代、何もかもがうまくいかなくなりそうだったときに風穴として自分で開けた。
風穴はピアスホールだけではなく、闇雲に大量に読んだ書物や、旅に出て書き殴ったノートたちや、曇天の写真たちや、そんなものたちが作用して、結果的にしっかりと開いたのだった。
もうダメかもな、と思う時にも、必ず出口はどこかにあって、しかしまぁ驚くほど見つからない。打破して見つけていった穴ですら、カズオイシグロの忘れられた巨人の住居みたいなものだ。
穴はいつだってニセモノである。
日本に帰って、15年が経った。
四つの穴というのもなんとなく日本人的には縁起が悪いので(こういう時にナショナリティーを感じてしまう)右耳にもう一つ開けたいなぁと思い続けて15年だ。
これといってキッカケもなかった15年。
来たる12/29、ピアスホールを五つにしようと思う。
雨宮まみの最期のエッセイを買おうと思う。
『40歳がくる!』という本。彼女は結果的に、40で亡くなったのだけど。
風穴を開ける。穴はニセモノだと分かっている。
分からなくていい。クソ四十路の、このぐっちゃぐちゃが届くあなたへ。
連絡ください。飲もう。
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