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接続サポートのバイトをした話

 自営業が立ち行かなくなって引っ越した後、何か仕事を探さなくてはならなかった。
 ネットで検索すると、ISP(インターネットサービスプロバイダー)が接続サポート要員を募集しているのをみつけた。
 自分でもインターネット接続していたし、メールアカウントの設定もサポートに電話して聞かなくてもできたから、応募してみようと思った。

 私はMacユーザーでWindowsは使ったことがなかったが、どちらもすることは同じで、最初にやり方を説明してもらえばできると思っていた。

 仕事でワードやエクセルを使うことがあるかもしれないが、出始めの頃に講習用マニュアルを書くのに勉強した。
 それから15年ほどブランクがあったが、機能はアップしていても基本的な使い方は同じだから、仕事で必要になっても大丈夫だと思った。

 募集する方は、まさかWindowsを使ったことのない人間が応募してくるとは思わないから、面接時にWindowsは使えますかなどと聞いたりしない。
 聞かれないから私も何も言わなかった。

 後で聞いたら、応募者のうち私よりもっと若い男性にオファーしたのに、断られたから私に決まったそうだ。ラッキー!

 仕事は土日を含めて週4日。
 時給はファストフード店やコンビニの店員よりは良かったが、15年ほど前にパソコンのマニュアルライターやインストラクターをしていたときに比べると、半額程度だった。
 それでも、この仕事に就けたのはありがたかった。

 最初の日にサポート要員の先輩たちに紹介された。
 先輩は3人いて、いずれも20代後半から30代初めの男性社員だった。
 2人は親切に仕事の内容を教えてくれたが、もう1人は私がWindowsを使ったことがないというのを知って、私を面接・採用した部長に陰で文句を言っていた。

 問い合わせは圧倒的にWindowsユーザーが多かった。
 当時、WindowsはXPが主流だったが、ユーザー(顧客)によってはまだ98やMEを使っている人もいるとのことだった。
 私はWindowsにそんなに種類があることを知らなかった。

 Windowsのバージョンによって画面表示が違うし、ユーザーのカスタマイズによって、コントロールパネルのメニューが異なる(大きいアイコンと小さいアイコンがある)のも「へぇ」だった。

 問い合わせの電話がかかってきたら、まず、Windowsは何を使っているかを聞き、話しながらそれとなくどんなメニューが表示されているかをさぐり、自分のマシンで同じ画面を表示させて、設定の手順を説明していく。

 自分に与えられたマシンはXPなので、ユーザーが古いバージョンのマシンを使っている場合は、ネットで検索して同じ画面を表示させる。

 私はコントロールパネルを見るのも初めてだったが、初日に早速問い合わせの電話を受けると、この道10年の大ベテランのように落ち着き払って操作手順を案内した。
 この辺りは過去にインストラクターをしていた経験がものを言う。(これについてはいずれ書くつもりでいる)

「腱鞘炎(入院以前のこと 1)」にも書いたが、私は右肩が痛くてマウスを左手で使うようにしてからずっと、今でも左マウスにしている。
 慣れるとその方が何かと便利で、このときも右手で受話器を取って、左手でマウスを使っていた。

 初日に問い合わせの電話を何本か受けて、片手に受話器、片手にマウスで画面を開き、ときにはネットで検索しながら設定の説明をすることはできた。
 ところが、終了して帰ろうとしたときに、マシンをどうやって終了するのかがわからなかった。

 私は自分ではiMacを使っていて、マシンを終了させる場合は、上に表示されているメニューバーのりんごの形のメニューを押して、「システム終了」を選べば良かった。
 Windowsは上にメニューバーはなく、下のバーにも「終了」はない。

 どうしたら終了させることができるのか、困ってしまって、優しい先輩に聞いてみた。

 なんと、左下の「スタート」を押すと、電源をオフにするボタンが表示されるのだった!

 コントロールパネルを表示させるのに、教えられたショートカットを使っていて、スタートボタンを押したことがないから知らなかった。

 スタート(開始)を押したら終了できるなんて、思わないもんねー。


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