「集団自殺」という「感染症」
BBCの「Crowd Science」の「brainwash」を取り上げた回を聞いていて少し考えた。
確かに、数年に一度とか、数十年に一度とかの割合で、所謂「カルト教団」絡みの「集団自殺」が世界の何処かで起きてきた。多分これからも起きるだろう。
思うにあれは一種の「感染症」が「発症」し「重症化」したものなのだ。感染症と言えば、記憶も生々しいcovid-19だが、「カルトの集団自殺」とcovid-19の違いは、感染する対象。covid-19は身体(細胞)に感染し、「カルトの集団自殺」は精神に感染する。我々の用語で言い換えれば、covid-19は生命現象に感染し、「集団自殺」は知性現象に「感染」する。
忘れてしまいがちだが、ほぼすべての人間は「カルト」に「感染」する。というのも、思春期は誰もが「愚かで浅はかな偶像崇拝者」だからだ。ここでいう「偶像」が文字通りの教祖であることは少ない。むしろ、テレビタレントやミュージシャンや漫画家や映画監督や大物芸人などの「有名人」「あこがれの対象」がそれに当たる。
肝心な点は、「カルト」に「感染」したからと言って、必ずしも「発症」するわけではないこと。大抵の人間は「発症」しないまま「自然治癒」してしまうし、たとえ「発症」しても、「中高生にありがちな馬鹿な振る舞い」程度の「症状」で治まってしまう。もう少しこじらせた場合でも、結婚や、出産や、昇進や、整形や、カミングアウトで、「完治」もしくは「寛解」する。
しかし、中には、「カルト」に「感染」し、ものの見事に「発症」し、事によると「重篤化」しやすい人たちがいる。ちょうど、covid-19が重篤化しやすい〔生命現象としての条件〕(身体的特徴)を持っている人が存在するように、「カルト」が「重篤化」しやすい「知性現象としての条件」を持っている人が存在するのだ。
それは「或る種のバカ」なのだろう(隠すのはやめよう。カルト教団による集団自殺のニュースを目にした我々が、まず最初に思うことは「なんというバカなことを…」のはずだ)。しかし、この「或る種のバカ」は必ずしも「知能の低さ」ではない気もする。つまり、〔カルト絡みの集団自殺をするのは、知能指数テストの正規分布の向かって左端の人たちばかり〕というわけではない気がする。知能指数とは別の知的要素が「カルトの布教活動」や「集団見合い」や「集団自殺」の「発症」と関わっているような気がする。
「カルト」の「最も重篤な症状」である「集団自殺」には、〔「カルト」が「重篤化」しやすい条件を持った知性現象〕を淘汰する働きがあるので、その結果、〔おそらく決して「集団自殺」に取り込まれることのない人間たち〕が、現在の地球上で大多数を占めている。「集団自殺」が「珍しい事件」なのは、「集団自殺」自体の「手柄」。
因みに、自然淘汰は、特定の個体の繁殖を阻止することで、その機能を発揮するものなので、本来、〔繁殖を済ませた後で自殺する個体〕の遺伝情報を淘汰することはできないのだが、集団自殺する個体は自身の子供を道連れにする場合が多いので、たとえ、繁殖後の自殺であっても、彼らの遺伝情報はそこで途切れる。
…とまあ、そんなことをつらつら考えた。
2024年3月14日 穴藤