脱出ロケットを回収しようとしまいと、マ・クベはソロモン戦には間に合わない。

「ドズルがゼナたちに会うために司令室にいなかったから、ソロモンはソーラーシステムを食らった」とか、「脱出ロケットを回収したせいでグラナダからの援軍は間に合わなかった」とかいう岡田斗司夫の解釈にはいちいち不満がある。いちいちと言っても、根っこは同じ。それは、岡田斗司夫が、人間がそういう行動を取ることの「意味・重さ」にピンと来ないせいで、それらの〔行動・場面〕を「戦争の趨勢を左右した出来事を描写したもの」としか理解できないことからくるもの。なので、不満の対象は、実は、たった一つということになる。

それはともかく。

本論の主題の説明をする(さっき便所掃除をしていて、嗚呼、書かなきゃと思ったので)。と、言っても別段込み入った話ではない。極アタリマエに考えて、マ・クベが何をしようと、グラナダからの援軍は間に合ないのだ。因みに、私の記憶が確かなら、分かりやすさをモットーにしている劇場版では、シャアも「間に合うとも思えんが」と呟いてくれるし(シャアがその時どこにいたのかは知らないけど、要請があったんだから、月の裏側よりも遠くはなかったのだろう)、永井一郎のナレーションも「明らかに遅すぎる援軍が出発しつつあった…」的なことを言ってくれる。が、そんな富野さんの親切などなくても、グラナダからの援軍がとうてい間に合わないことは、TV版のみで判断できること。何のことはない、ソロモン攻略戦を計画した連邦軍の側に立って考えてみればいいだけのこと。ほら、わかったでしょ?

【蛇足】
連邦軍は、当然、グラナダからの援軍がソロモンに到着する前に、決着をつけるつもりの攻略作戦を立てている。そのための「ソーラーシステム」という早期決戦用大規模破壊兵器。いくら「無能」な連邦軍でも、「ドズルは絶対に援軍など求めない」という前提で攻略作戦を立てやしない。こちらがソーラーシステムを使って、ソロモン側が「こりゃまずい」となり、「それ!グラナダに援軍を要請だ!」となってから、実際にグラナダからの援軍がソロモンに到着するまえに、勝負をつけることができると踏んだから、連邦軍はソロモン攻略作戦を実行したのだ。

と、今、言ったことは、、当然、ジオン軍側も「気づいている」(=ソロモンからの〔連邦軍の攻撃を受けたという一報〕から〔援軍要請〕までの時間の「短さ」や、〔連邦軍が「新兵器」を使用した〕という具体的な報告などから)。つまり、「こりゃあ、連邦軍は、〔グラナダからの援軍問題〕を解決・回避したソロモン攻略作戦をやったんだな」と。要するに、グラナダから援軍が発進した時点で、キシリアもマ・クベも、そして多分、バロムさえも、「間に合わない」のは分かっていたのだ。援軍の発進は、多分に、政治的な意味合いや、軍の士気を保つための「形式」に近いもの。だから、マ・クベとバロムの〔脱出ロケットを回収する・しない〕対立は、〔ソロモンに間に合う・間に合わない〕の場面ではなく、マ・クベの人間としての「鈍感さ=冷酷さ=冷淡さ」を描いた場面になる。

そもそも、あのときのマ・クベは、もう、全然やる気がない。彼は、キシリアから「名誉ある任務」を与えられて、ソロモンに向かっているのではないからだ。むしろ逆。―――という話は、後で書く「キシリアを絡めて考えるとマ・クベがよく分かる」説で。

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