呼ばれていない同窓会に乱入する話がドストエフスキーリスペクトだった可能性
ドストエフスキー好きを自任しているが、実はまともに通して読んだ作品は『罪と罰』『死の家の記録』だけである。『罪と罰』は2〜3回、『死の家の記録』はおよそ100回は読んでいるので良しとする。『カラマーゾフの兄弟』は父殺しの容疑で長兄が糾弾されているあたりで一時ストップしている。他にも作品をいくつか所持してはいるのでちょっと読みかけてそのままになっているものが多数。そのままの状況もどうかと思い、腰を据えて『二重人格』を読むことにした。
『二重人格』は翻訳者によっては『分身』というタイトルで出版されているものもある。パッとしないけれども自己顕示欲はある小役人が世の中とうまく折り合いをつけられず発狂するというあらすじの話だ。とはいえ主人公が冒頭から既に狂気じみており、かかりつけ医にクドクドと語っているのだが何を言いたいのかさっぱり分からない。自分は人とは群れたくない、自分は特別な存在だと主張したい、それでいて周りの人に認められたい受け入れられたいという捩れた願望を持っていることは窺える。この男、ある有力者宅でひらかれる令嬢の誕生日パーティーに参加するつもりで出向くが取次役から「あなたは入れるなと言われている」と屈辱の門前払いをくらう。それに食い下がるさまも読んでいていたたまれないが、数時間裏口に張り込んだあげく隙を見て客間に乱入してしまうのだ。そら他の客や主催者は「は?なんで来たの?」という驚きや冷たい侮蔑に満ちた反応をする。なのに居座ろうとしてよく分からない繰り言を述べて周りを当惑させたりパーティーの主役である美しい令嬢をダンスに誘おうとする。特にダンスに長けているわけではない野暮天なので、令嬢の手を引っ張ったままぶざまにずっこけてしまい、あまりのことにフリーズしていた周りの紳士たちも我に返って主人公を戸外に叩き出してしまう。むかしこれとは別に『地下室の手記』という作品を少しだけ読んだことがあり、それにもうまく世に馴染めない男が出てきて招待されていないパーティーに強引にまざろうとして冷遇されるシーンがあった覚えがある。
ここでふと思い出したのは、昔2ちゃんねるという匿名ネット掲示板で「同窓会に呼ばれなかったので勝手に乱入したったwwww」というスレッドが立ってまとめサイトとかに載っていたことである。みんながタイトルを見て予想するそのままの内容なので詳しくは述べないが、このスレッドを立てた者は先述のドストエフスキー作品を参考に、舞台を現代日本の同窓会に移して釣りでウソのエピソードを書いた可能性がある。匿名掲示板に出入りする人って陰気でドストエフスキーとか好きそうだし(偏見)
このように、長く語り継がれる名作ってのは時代を超えた普遍性があるものなんですねー。ちなみに、『二重人格』はさっき述べたパーティーを叩き出されるシーンでいたたまれなさに頭が爆発したので小休止しています。
終わり