ネタばれ有り『aftersun/アフターサン』の感想

ネタばれ有りなのでこの映画を未視聴でこれから観るかもしれないという人が万が一この文を目にした場合は、これ以上スクロールしない方がいいかもしれないです。



この映画に興味を持ったのは梨という名前のホラー創作者が「じっと観ているとそれまで分からなかったもう一つの事実が浮き彫りになっていく感じが空恐ろしく切なく面白い」と褒めていたのと、Twitterでも面白かったという感想を複数見かけたから。プライムビデオでのあらすじ紹介は以下の通りです。

文だけのコピペができなかったのでスクショ貼っときます

このあらすじを踏まえていつ謎が明らかになるのかなと観ていたら父と娘が旅を終え空港で別れてエンディングに達したので、「えっ、これで終わり?どう楽しんだらよかったの?」というのが第一の感想でした。あまりにも呆気にとられたので即座にネット上の解説というかネタバレ感想をいくつか読んだところ「一見父と幼い娘が楽しく旅行して思い出づくりをして笑顔で別れている映像だが、実はこの時父は精神的にとても困難な状況であり自死を選びかねなかった。旅が終わった後のどこかの時点で父は亡くなっており、当時の父の心情を推しはかりながら31歳となった娘がそのホームビデオ(って今も呼ぶのかな?)を見返している」というのがポイントだそうです。私はてっきり過去の旅の模様とホームビデオの映像のあとに大人になった娘が改めてホームビデオを観るという流れが明確な構成になってると思い込んでたのですが、最初っからホームビデオ映像、過去と現在の視点、父側からの視点と娘側からの視点が交錯するつくりの作品だったということです。私が自分で観てた時に感じたのは、父と娘が空港で別れる時なんで父が去っていく扉の向こう側がダンスフロアなんだろうという疑問と、父はたまにバルコニーの手すりに立ったりいきなり泣き出したり知らぬうちに怪我をしてたりして変な振る舞いをすることがあるし、瞑想の方法という本や太極拳かなんかの本を旅先にまで持ってきて実際にその動きをしているので精神的に不安定なのかなということでした。父は実はこの時しんどくて死にたかったんですよと言われれば、まあそうでしょうね……という感じです。娘の母親とは離婚して普段は母娘と離れて暮らしている描写、取りかかろうとしている仕事の展望も不透明でお金もあまり無いらしいというシーンもあったので順風満帆とはいえない暮らしの中でそれでも娘と旅をして思い出を作りたいんだなというのはわかりました。

よーく画面を観て音にも耳を凝らしていたら、ホームビデオ再生時に大人になった娘の顔が反射して映り込んでいたり、ビデオ機器の巻き戻し再生っぽい音が要所要所で聞こえてきたり、ダンスフロアのフラッシュ点滅シーンで大人になった娘と旅行当時の父が一緒にいる様子が一瞬見えたりするらしいのですが、画面酔いしやすいので手ブレが激しいホームビデオ映像やフラッシュ点滅シーンはあまり画面を注視しないようにしてたし、画面越しに聞く電子機器の作動音が好きではなくたぶん無意識にスルーしてたのでそのへんの演出は全く気づきませんでした。
総合して自分には難しい内容だったなという感想です。マイペースで読める文章とは違いどんどん瞬間的に進んでいくストーリーに追い縋らないといけないので、多くをはっきり語らず構成や演出が複雑な映画はどうも苦手です。
生きるのは基本苦しいし、チャンスがあれば死にたいなと思いつつも生活をし時には旅行して笑い興じるみたいなことも人間にはありふれたことなので、実はこの時父は死にたがってるんですと言われてもあまり心に響かなかったというのはあるかもしれません。
こうは書いたけど、時間をおいてもう一度観たくなることがあるかもしれない作品でした。

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