推理小説がさほど好きではないが推理小説を読む
好きでない理由としては、頭が悪くて謎解きができないということと、作者におちょくられている気がしてだんだんムカついてくるからという二点である。鬱状態の人は推理小説を読めとライフハックのように言われているのを見たことがあるが、私はホラーとかたくさんの人が死んだり不幸になったりする話のほうが好きだ。とはいえ、人は好きなものだけに触れていては生きていけない。先日、図説・世界の名推理小説一覧みたいな本を借りた。親切なことに、有名どころの推理小説についてネタバレを伏せたあらすじが簡潔に羅列されている。この中から興味を惹かれたものをピックアップして読んでいくことにした。手始めにウィリアム・アイリッシュ『幻の女』を図書館で借りた。まず、昔のニューヨークの文化風俗(本来の意味の風俗ですよ)に関する描写が楽しめるのがよかった。デートする筈だった妻と喧嘩をし一人で街へ飛び出した男が、ショウのチケットとレストランの予約席を有効活用するために行きずりの謎めいた女に声をかけ「お互いの名を明かさずその他の個人情報も伏せる」という約束でショウを観て食事をして最初に出会ったバーで別れるという導入が非常に趣がある。ところが、帰宅すると何者かにネクタイで絞殺された妻を発見する。彼が犯人だと疑われ逮捕されるが、はっきりと彼のアリバイを証明し得る人物は一晩行動を共にした謎の女だけ。おかしなことに、その晩二人を見ていたはずのバーテンダー、タクシー運転手、レストランの給仕たちは口を揃えて「この男性はずっと一人でした」という。絶体絶命の主人公は無罪を証明して死刑を免れることができるのか、謎の女は見つかるのか、真犯人は誰なのか?というストーリー。終盤にさしかかるまで全く話がつかめなくて、謎明かしのパートでは素直にすごいなーと思った。昔読んだ本に推理小説の鉄則◯条みたいなのが紹介されていて、(よく知らないけど昔の偉くて有名な小説家が考案したルールで広く支持されているようだ)そのなかにあった
・犯人は物語の序盤から登場していなければならない
・超自然的な現象や能力をトリックに使ってはいけない
という2項目だけはっきり覚えているのだが、バカな私は「え?これ本当に鉄則守って書かれてます?まさかの容疑者が精神錯乱者だったオチですか!?(これも推理小説の禁じ手に指定されていた気がする)」とキレながら読んでいた。結論から言うと意外すぎる展開でおもしろかった。不朽の名作と言われているだけのことはある。でも、やはり頭のいい人におちょくられ小突き回されたような読後感だけはしっかり残りモヤモヤしたのだった。私特有の問題だと思うんだけど、読んでる最中は生活に張り合いが出て快適なのに読み終えた後なんだかうんざりするんですよね……。好きになりたいな、推理小説。次は『犬神家の一族』かアガサ・クリスティーの長編をなにか読んでみます。
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