エリック・ホッファー

E・ホッファー(中本義彦訳)、『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』、作品社、2021年。


 最近、この作品を読んだ。そして、端的に言って影響を受けた。どのように影響を受けたかというと、色々な分野の本を読もうと思わされた。彼は、興味→該当分野→読書(勉強)というプロセスを辿るのだが、ここに独学の魅力が詰まっているのである。その典型例はpp.83-89の「柑橘類研究所」という箇所で見られる。大学なんかに通うと、卒業までに取らなきゃいけない授業がある程度決められていて、そこから自分なりに選択するのであるが、私のような飽き性からすれば、興味が一学期間途切れることなく続くなんてことは絶対に無く、この制度に苦しめられている。4学期制がどういう目的で導入されているのかは存じ上げないが、4学期制は飽き性人間のために作られた制度なのかもしれない。話を独学に戻すと、現代の大学は出席がほぼ前提となっていて、昔のように、面白い授業だけ出るみたいなことはやりづらくなっているため、独学の時間も制限されてしまっている。しかし、大学の意義は自分がすごいと思えるような人に出会い、何かしらを受け取って(もしくは、見て真似て、盗んで)、自らの独学に刺激を与えることにあるように思える。そういう風に考える私にとっては、現在の大学の制度には不満を持たざるを得ないのであるが、「とき」の不思議とでも言えようか、いつの間にか独学をする気力も失いつつあったのである。(これは単に私の怠惰から来ているだけ、といえる。)そんな折に、「沖仲仕の哲学者」であるエリック・ホッファーは独学によってその域まで達したのだ、ということを幸いにも知ることができたのである。
 したがって、無理矢理にまとめるが、この本は「独学の楽しさを感じつつも、ときが経つにつれ、その気力を失いかけてしまった人」におすすめしたい。そして、さらに付言するならば、未来の私自身が、今の私によっておすすめされた側の人になるという予感がひれりとした。


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