落ちる子ども[実話怪談②]
これは私が大学生の時に、小学校に学習支援ボランティアに行った時の話です。
この時期、私は友人の死に直面し、気持ちがとても落ちていた頃でした。
葬儀の後の数ヶ月間、いつにも増して不思議な体験をすることが多くなり、
外出することもできなくなっていました。
そんな中、大学の授業の単位の為に、
どうしても行かないといけなかったのが
小学校での学習支援ボランティアでした。
私はその学校が苦手でした。
学校全体がなんだかジメジメとしていて、廊下は薄暗く、
突き当たりの空き教室なんて、子ども達ですら怖がるほどでした。
その日は、しとしとと雨が降っていました。
ただでさえ暗い校舎は、更に雲がかったように暗くなっていました。
2校時の授業だったと思います。
私は3階の教室で、担任の先生に頼まれてプリントの丸つけをしていました。
担任の先生が黒板の前で授業をし、30名近い児童が授業を受け、
その1番後ろの席、全員を見渡せる場所で私は丸つけをしました。
元気に授業を受ける児童たちとは裏腹に、
睡眠不足の私の頭の中は「眠い」「帰りたい」でいっぱいでした。
子どもたち以上に時計を確認する大学生。
社会人になった今、当時の私をぶん殴ってやりたいです(笑)
時計を何度確認した時でしょうか。
少し窓の方が明るくなりました。外を見ると雨が上がったようでした。
やっと晴れたか…と思ったのも束の間
目をやった窓のベランダの手すりに腰掛けている子どもがいました
3階のベランダの手すりの外側に座っており、
危険なのは明らかでしたが、教室の子どもたちや担任が騒がない様子から
お化けだろうとすぐにわかりました。
ベランダ手すりに頬杖をつき、教室にいるみんなをにこやかに見守る
小学校低学年くらいの男の子。
イメージはこんな感じです。(絵が下手ですみません)
にこにこしていて、害はなさそうだし、晴れ間に現れたのも相まって
なんだか少しほっこりした気持ちになったのを覚えています。
しかし、「お化けを見た時は付いてくるから無視をしなさい」という
母の忠告を思い出し、
あまり見ないようにし、意識を逸らすように丸つけに戻りました。
10分くらい経ったころでしょうか。
丸つけもあと数人といったところで、一旦ペンを置き時計を見ました。
もう少しで授業終わるなあ…と頭の中で呟き、
ふと外に目をやると、男の子はまだ頬杖を付いて笑顔で教室を眺めていました。
すると突然男の子は、両手をあげ、後ろの方へ倒れていきました。
イメージとしては、ダイビングの時に後ろに回転して入水していくような感じでした。
倒れていった先は、運動場。
教室は3階だったので人間であるのなら助からないことは確実です。
手をあげ、落ちていく体が斜めになった時、笑顔でこちらを見ていました。
私は、思わず「ひっ…」と口をおさえました。
教室には多くの児童や担任もいたので、変な人と思われたくないという一心で
自分でも驚くほど最小限の反応だったと思います。
私の「ひっ…」と当時に聞こえた音がありました。
ギギー!!!ガッシャーン!!!!!
教室の真ん中に座っていた児童の一人が
すごい勢いで立ち上がり、椅子を倒した音でした。
その子は、私と同じ窓を見ていました。
同じものを見ていたのだと思います。
担任の先生が明らかに困惑した様子で
「〇〇さん、どうしたの?大丈夫?」
と声をかけると
「あ、すいません。なんでもないです。」と言って
椅子を戻し、着席しました。
その子の声には、諦めに近い感情が詰まっていました。
言っても信じてもらえない。
こんなに怖い思いをしているのに、共有できない苦しみを
小さな子どもの頃から背負っているのがあまりにも可哀想だと思いました。
私もその後教員になり、霊感が強い児童に会うことも多々あります。
その時に言うことは、幼い時から母に言われた
「絶対に無視しなさい。」だけです。
無力だなと感じますが、巻き込まれにくい確実な方法だと思います。
幸い私は、デビューが遅かったのであまり気にせず過ごせていますが、
幼少期から見えている子は成長に大きな影響がありそうだなと個人的には思っています。
何も見えない、感じないのが1番です。
今日も最後まで読んでくれてありがとうございました。
いくつか書いたら、長編の怖いのも書きたいと思います!
ではまた!