「しばらく実家に帰ってれば?」
どうしても書かせてもらいたいと思い、まだ自己紹介的な記事が色々書きかけですが最近の出来事を書きたいと思います。
ここ数ヶ月、私の心身の調子が悪くずっと彼が優しく支えてくれていました。仕事から帰ってきて疲れているだろうに、めまいや頭痛で寝込んでる私に優しく明るく話しかけてくれます。
「晩御飯どうしようね?何か買ってこようか?食べに行こうか?何が食べたい?」
「メニューはどれにする?決まらない?じゃあ両方頼んで半分こしようか」
「ついでにドラックストアで買い出ししてきた」
そんな風に私の顔色を伺いながら、色々話しかけてくれます。私もなるべく笑顔でいようと頑張っているつもりでしたが、ふと彼が私の顔を覗き込んでる時があります。おそらく私自身気付かない間にふと暗い顔をしてしまっていたのだと思います。
私が晩御飯を作った日には食器を片付けて食洗機にかけ、入りきらない分や大きなお皿やフライパンを手洗いしてくれます。(使ってる食洗機が備え付けではなく小さすぎて全部入らないんですよね……)その後日によって洗濯機をまわし、乾燥にかけるものとないものを分けて干し、お風呂洗いをして「(気がまぎれるから)(スッキリするから)(元気になるから)、お風呂にゆっくり入っておいで」と私を抱き上げて連れて行ってくれます。お風呂は絶対に一緒には入りません。私が彼を気遣わないようにという、それも多分彼なりの気遣いだと思います。
その後各々好きな時間を過ごしたり一緒にダラダラとしたりしてベッドに行きます。ここでも色々な話をしていて、ある日ふとした会話で私が泣き出しました。私が何かあって泣いていると彼はいつも腕枕をして抱きしめて慰めてくれます。ずっと頭や肩や背中を撫でながら静かに私の話を聞いてくれる日もあれば、「大丈夫だよ」「心配しなくていいからね」「ずっと一緒だよ」と声をかけてくれる日もあります。
ここまで書いておいて、なんて優しくてできた人間なんだろうか彼氏。自分も仕事で疲れて帰ってきてるのに文句ひとつ言わずに「そのために生まれてきてから」ってお皿洗いしてくれるんですよ最高すぎて涙出る愛してる。来世も結婚してくれ。その前に今世で嫁にもらってください。(ちなみに母に嫁にもらってもらう、というと「お嫁に行ってあげてる」って言いなさいと叱られます)
そんな感じで、彼の素晴らしさに感動して、大切なことを見落としていました。彼は笑顔でそれらをこなして私を優先し私の面倒を見て私を慰めてくれていましたが、それでも確かに疲れているのです。彼も人間です。しんどくても私のためにとそれらを必死に一生懸命こなしてくれていました。なんで素晴らしい人なんだろうと感謝こそすれ、私は自分のことでいっぱいいっぱいになってしまっていて、つらいだろう疲れているだろうしんどいだろう、ということをすっかり失念してしまっていました。
彼がお休みの土日も体調の悪い私に「また来週行こうね」と慰めてくれ大好きなお寿司を買ってきてくれました。ですが次の週も私は動けず、その次の週である先週も早朝から酷い眩暈と頭痛に襲われとにかく薬を飲んでベッドに潜りました。「体調悪いの?」と聞く彼に「うん薬飲んだからすぐ効いてくると思う」と返しました。
「ご飯どうしようね?最近ハンバーガー食べてないから行こっか」
「うん準備しなきゃね」
起き上がって服を着替えなきゃと思いますがしばらく経っても起き上がれません。目すら開けられず腕もあげられません。
「ごめん彼くん買ってきて」
そういうと、いつもの返事ではなくふうというため息が聞こえました。それが彼の限界のため息であることに私は気付きませんでした。腕枕をしていた私の頭から腕を引き抜き、くるりと向きを変えて携帯を触り始めました。
「何食べるの?」
どことなく冷たい反応に不安が募りました。突然怒らせてしまって私一体何をしてしまったんだろう。何か怒らせることを言ってしまったんだろうか。どきどきと動悸がします。けれど服薬の副作用で眠気も襲っていきます。彼が何も言わずに出ていき、ハンバーガーを買って帰ってきたようですが寝室までは来ません。まだ動けない私はしばらくぼーっとしていました。ようやく起き上がってリビングへ行くと彼が指定した通りのものとフライドポテト、安くなるようにわざわざドラッグストアに行って飲み物を買って来てくれていました。
「ありがとう」
「お茶と水どっちのむ?」
「お水にする」
どことなく冷たい雰囲気に我慢できずに聞きました。
「何か怒ってる?」
「怒ってないよ」
そう言いつつもその口調は冷たいです。どうしたらいいか分からず彼に抱きつきました。いつものように抱きしめ返してくれません。明らかにおかしい様子に不安になったのと、今日も約束していたお出かけができなかったことに怒ってるのではないかと勝手に涙がボロボロこぼれました。
「また泣いてるの?」
そう言いながらいつものようには慰めてくれません。それどころか「重い」と突っぱねられてしまいました。ああやっぱり嫌われたのかもしれない。私の体調不良にうんざりしてるのかもしれない。
「最近お出かけできてなくてごめんね」
「いいよしょうがないじゃん。元気な時に行けばいいよ」
そう言いながらもどことなく冷たいのです。再び重いと言いながらも背中をポンポンしてくれたので離れてハンバーガーを食べました。彼が差し出してくれたポテトも食べます。多分生まれてはじめてハンバーガーを残しました。優しさと冷たさが混同していてわからない。
「上に行って寝てれば?」
その言葉に頷いて大人しく寝室に篭りました。ふと目覚めた時に彼が家からいなくなっていました。玄関の鍵が開いていたので外を覗くと彼は洗車道具を片付けているところでした。
「車洗ってくれたの?」
「自分の分だけ」
いつもは一緒に洗車して二人の車を洗車しています。たまに彼が私がいない時に一人で全部の車を洗車してくれている時もありました。やはりここでも違和感です。
「晩御飯どうする?蕎麦茹でようか?」
私から聞いてみました。
「なんでもいいよ」
投げやりな言葉でした。
「カップラーメン食べよっと」
突然彼が立ち上がり言いだしました。ドラックストアで買っておいたようです。
「私の分もある?」
「あるよ。どっちがいい?」
カップ麺を差し出して好きな方を選ばせてくれてお湯を沸かして入れてくれました。
「時々無性に食べたくなるよね」
「うん」
相変わらず優しいと冷たいが混同していて私は不安でした。晩御飯を食べ終わると大抵二人でソファでくっついてくつろぎます。それがいつものルーティンになってます。ですがたった数分ほどで彼が
「お風呂に入ろっと」
と私をすり抜けて行ってしまいました。不安と疑問符がずっと頭でぐるぐるしてます。優しさと冷たさが両方押し寄せて来て混乱しています。彼と入れ違いでお風呂に入り出ると彼はもう寝室で眠っていました。私も彼に少しだけ引っ付いて眠りに入りました。
よく朝、被っていたはずの布団がかかっておらず寒さで目が覚めました。お腹が痛くなり二回トイレに駆け込みました。冷え切った体をあたためたくて寝ている彼に布団に潜り込んで引っ付きました。ふぅと彼がひとつため息をついて布団から出て行ってリビングへ行ってしまいました。
避けられた!私が何かしたんだ!ずっと体調の悪い私にうんざりして嫌われたかもしれない!
そう思って慌てて彼を追いかけました。彼はソファで携帯を触っていました。ちらりと私を見上げましたがすぐに携帯に視線を戻します。「どうしたの」とつめたい一言だけでした。ちなみに彼は怒ってる時と疲れてる時の顔が似ていてどちらか分からない時があります。
「本当に怒ってないの?」
「怒ってないよ」
「疲れてるだけ?」
「うん」
その言葉でもうこれ以上何を聞いたらいいのかが分からなくなりました。最近仕事がかなり忙しく何度も今日遅くなるかもという連絡を珍しく続けてしてくれていました。(いつもは一切連絡なし)いつものように彼の膝に頭を乗せますが撫でてくれません。それどころか避けるように腕を変な方向へとひねっています。拒否されているのを感じて涙がまた出て来てしまいました。
「また泣いてるの」
「最近なんか変。すぐ泣けて来ちゃう」
ようやく彼が携帯を見るのをやめて私を膝に乗せて抱きしめてくれました。少し安堵していると彼がポツリとつぶやきました。
「これじゃ俺何もできないじゃん。しばらく実家帰ってれば?」
彼の短所は声音がいつも落ち着いているせいで言葉が冷たく感じてしまい気遣われてるのかうざがられてるのか分からない時があります。この時は完全に態度が冷たかったので、私といることに対してうんざりしているその言葉がショックでした。私がいるせいで彼が何もできない。私の存在がもう嫌で負担になっているので家を出て行って欲しいと言っているのだと受け止めてしまい、私は更に泣きじゃくりました。
「うん」
実家に帰るには着替えと化粧品と常備薬を持って行かなければと泣きながらとぼとぼと準備をします。適当に数着服を詰めて薬箱から薬をいくつか取ってカバンに放り込みます。化粧ポーチとヘアオイルと保湿剤と、あと何がいるんだっけ。うまく思考が回らないままダラダラ泣きながら準備をしているとトイレに入っていた彼が出て来て言いました。
「送って行こうか?」
「ううん」
パジャマとだる着を忘れていたなと寝室に戻り準備して行こうとすると、彼はそのまま同じ場所に立って待っていました。
「どれぐらいで帰って来ていい?」
「治ったら」
病気が治ったらって?一昔前まで難病指定されていて、原因も確かな治療法もいつ安定するかも医者すら分からない病気が?
「もう帰って来れないかもしれない」
耐えきれず声をあげて泣き出したらようやく彼が抱きしめて肩や背中を撫でてくれました。その必死な姿にやはり冷たいのか優しいのか分からないなと思ってしまいました。今まであれだけ優しかったのに分からない。私にうんざりしてしまったんだとは思うけれども。
「とりあえず、落ち着いたら帰ってくるね」
「うん」
彼から離れて母に「暫くの間実家に帰らせてくださいと」LINEを送ると間髪入れず「OK」のスタンプが届きました。全部の準備が終わってカバンを抱えて歩き出すと彼は玄関まで付いて来て見送ってくれました。いつもそうしてるようにドアが完全に閉まるまで手を振ってくれています。疲れ切って泣きじゃくりながら何度も瞬きしないと視界が歪んで運転できず、あえて下道でゆっくりゆっくり帰りました。
「今度は何があったの?」
「わかんない。」
実家の玄関の扉を開けた瞬間駆け寄って来てくれた猫を撫でながら、ゆったり出迎えてくれた母にかいつまんで事情を説明しました。
「うーんとりあえずゆっくり休みなさい。なんで送ってもらわなかったの危ないじゃない気を付けてよ?」
母からそんな小言をもらいながら、とりあえずその日はゆっくりネコと遊んで過ごしました。
続きます。
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