最終回がめっちゃよかった話
「あなたがしてくれなくても」の最終回を見終わったので感想を残しておきます。
まず一言、めっっっちゃよかった!です。
終わりかたには賛否両論あるようですが、個人的には、これ以上ないハッピーエンドだったと思います。
ミチの夫の陽一に肩入れしながら観ていた身としては、9話(全11話)くらいから胸が苦しかったのですが、二人がよりを戻してくれて、最後の最後に救われたような気持ちになりました。
世間では別の終わりかたを期待してる人も多かったようです。分からんことはないけど、陽一が嫌われてて悲しい。
確かに陽一はちょっと変です。ミチが着席するのを待たないで夕飯のオムライスを食べてしまうし、ミチに聞かれるまで子どもがほしくないことを黙っていたし、子どもがほしいと言われて「作ってもいいよ」と答えてしまう無神経で自己中心的なところがあります。
でも陽一は、ミチを傷つけたいわけではありません。最終回でもそのことは、はっきりと言っていました。
傷つけたくないと思っているのに傷つくような言動をしてしまうということは、悪い見方をすれば「自分の言動がミチを傷つける可能性を想像しない」「相手を傷つけないために想像力を働せるだけの愛情がない」という風に見ることもできるかもしれません。
でも僕はこのドラマを観て、陽一がミチの気持ちを軽んじていたり、ミチの気持ちを想像することを諦めているようには思えませんでした。陽一はただ、想像力を発揮する場面や、その方向性がめちゃくちゃズレているんだと思います。作中でも例えば、新しいキーホルダーをプレゼントしたり、ミチの好きそうなうどんを買って帰ったりなどしています。他にもミチが気づいていないだけで、彼なりに想像力を働かせている場面がたくさんありました。でも陽一が想像することは相手が想像してほしいこととはズレていて、独りよがりなので、結果的に相手を喜ばせることはできません。自分が何を考えているかを伝えるのも下手なので、想像したことが実現しないと、何も考えてない人のようにも見えてしまいます。そうして陽一の言動はちぐはぐになり、思いやるつもりが裏目に出て、知らず知らずのうちに相手を傷つけていくことになります。
ミチは何度も自分を傷つける陽一に対して「私のことを真剣に考えてくれてないんだ」と思い込んだ結果、ピンポイントで欲しい言葉をくれて、かつ自分を必要としてくれる新名さんに救いを求めていきます。
ミチの行動は、誰が見てもある程度は理解ができるくらい筋が通ってるように思えますが、陽一の行動だって、本人からすれば筋が通っているはずです。
陽一に比べて、ミチは常識的な考え方をする(共感できるというよりは、何を考えているか想像できる)ので、ミチの悲しみや怒りはもっともらしく聞こえるけれど、一対一の関係においてどちらかの考えが正しくてもう一方の考えが間違っているということはないと思います。
「子ども作ってもいいよ」という言葉がミチにとって想像できないくらい非常識なものであったように、ミチが言ってほしかった「ミチの子どもがほしい」という言葉は陽一にとって想像できないくらい非常識な場所にあるものなのだと思います。常識や世論にあぐらをかいて、陽一の言葉を一方的に批判するのは危険なことです。相手が何を想像しているのかは、どれだけ想像しても絶対に分かりません。
陽一のような相手とコミュニケーションをとるのはすごく難しいと思います。一方で、陽一自身はその難しさを全人類に対して感じていることでしょう。
自分の欲している言葉を受け身で待つのでもなく、自分の想像力だけで相手のことを把握した気になるのでもない、言葉での交流みたいなものが他人との関係を深めていくどこかの時点で必要になるのかもしれないと考えたりしました。
ドラマのテーマである「セックスレス」には身体の意味だけじゃなく、楓の言った「心のセックス」の意味があったんだと、今書いていて思いました。
感想が長くなってしまいましたが、改めて、すごく素敵な最終回でした。
面白いドラマを作っていただいたキャストのみなさんやスタッフの方々に感謝したいです。本当にありがとうございました。
ps.↓レインボーさんのYouTubeチャンネルです。ジャンボさんの再現と語りがめちゃくちゃ笑えるのでぜひ観てほしいです