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表現者が表現って言ったら終わりな気がする

私の本職はスポーツ関係だったりする。

スポーツの実績自体は微々たるものながら、高校時代に鬼のような練習を3年間耐え抜いて大学では一歩引いた目線で競技と上手い距離感で付き合っていたら、それが仕事になった。というか、自分では上手い距離感と思っていた距離感が想定外にバグった距離設定だった事もありそれを仕事にするしか無かったという方が正しいかもしれない。

スポーツは時に芸術と形容される事がある。アイススケートやダンスのような「美」を競い合う競技はもちろん、それ以外のスポーツでも「芸術的」と評されるプレーや、あるいはその日々の鍛錬や結果にドラマを見出し、芸術として昇華される事も多々ある。

私自身は専門的にプレーしていたのはその競技と、大学時代に格闘技をかじってたくらいだが、テレビで日本シリーズがやっていれば何となく見ているし、サッカーもワールドカップもなんとなくネット中継を見てるし、オリンピックの期間中はルールもわからないのに夏ならアーチェリー、冬ならボブスレーなんかをぼーっと眺めている。
根本的にスポーツを見るのが好きなんだろうし、お酒を飲みながらYouTubeをいじっていてスポーツのハイライト動画が目に付いたらとりあえず再生してみて、意味もわからず号泣する事もある。

私はスポーツが芸術であることは否定しないし、どちらかというと肯定的な意見の方が比重が乗っている気がする。
ただ、「私がやっている事は芸術だ」と言ってしまうのには薄寒い感覚を覚えるのも確かだ。

同じような理由で、表現者が「表現」というワードを使うのも個人的にちょっと苦手だ。

去年地元に帰省した時に、中学時代の友人と飲みに出かけた。友人は大学時代はカメラを片手にバックパックを背負い、ヨーロッパを周遊しながら写真を撮りに出かけるような人で、大学卒業後は地元の写真館に就職した。現在は他の仕事に就いているが、サブカルチャーが好きで私とは気が合う数少ない友人の一人だった。

「東京の◯◯っていうアトリエがあるんだけど、そこのオーナーと仲良くなって今度個展を開こうと思ってるんだ」と友人は言った。私は写真にはあまり興味がないので個展を開くことの難易度やどのくらいの準備が必要なのかは分からなかったが、そりゃめでたいと思った。友人の写真は私も好きだったし、てっきり転職して写真を撮るのはもう辞めたのかと思ったが、個展を開けるくらいには続けている事も、昔から変わっていない気がして嬉しかった。

「あんこ(仮称)も面白い人だからさ、今度紹介してあげるよ。で、なんか表現してみれば?」

友人は多分私の事を買ってくれて言ってくれているんだろうが、何となく引っかかってしまった。

「私が個展を開くとか、トークショーをするとか、なんなら実践スポーツ教室をやるとか、別にそれ自体はいいんだけど、私は「表現」ってワードを使いたくない。いや確かにそれで何かを表現してるんだろうけども、表現を表現って言っちゃうのってお笑い芸人が自分のギャグを『この部分は普通の人だったらやらないから面白いんですよ』って解説したり、小説家がメタファーの部分の隣に『これは××のメタファーで…』って注釈入れたり、アーティストが『この部分は△△の◇◇って曲を半音上げてサンプリングしてて…』って答えちゃったりするくらいダサく感じるし、私が私を人様に見てもらうなら分かりやすく何かをするか、全く誰も分からなくても『私はこれをこういう風に表現しました』って自分の口からは言わないよ。『表現』って作り手が言うことじゃなくて受け手が解釈するものだと思うから、最終的に何かしらの場面で答え合わせができるとしても、私は私の表現を表現って言いたくないし、そんなダサいことしたくないから一昨日来やがれ」

とは言えなかったし、そこまで過激に主張したいほど目くじらを立てているわけでもないので「あー、時間あって誰かが企画してくれたら考えるねー」でその話題は終わってしまった。

まあ、でも表現者は表現ってワード使わない方が格好いいなとは思う。
あと「表現者」っていう肩書きもなんとなくダサい気はするけど怒られそうだから何も言わないでおく。


追記
私は格闘技オタクでプロレスオタクだから、事象の背景をすぐに求めないように洗脳されていて、この間もNOAHの選手が契約解除になったっていうニュースが流れた時に公式Twitterのリプ欄は「事情が知りたい」「なんで理由を公表しないの」なんていう意見がちらほらと。

いやいや、こういうのは10年20年経ってから別の選手のインタビューやら対談やらで「そういえば◯◯が辞めた理由は××が△△で…」っていう風に伏せ字で出てきてそれを想像するのがファンの作法だと思ってたけど、分かりやすく答えを知りたい人もいるんだなぁと勝手に思った。もちろん推測憶測をSNSに上げるのはダメだけど、そういうのも楽しみたいから私は表現、メタファー、アンチテーゼは解説しない人の作品を見ていたい。

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