ミリオンライブ!における最適ユニットリーダー選択問題とその数学的解法
はじめに
突然ですが、下記の5人のアイドルがユニットを組むとしたら、あなたは誰をユニットリーダーに選びますか?
いや、この5人、何をとっかかりにしてリーダー決めればいいんでしょうか。とりあえず年長者の千鶴さんあたりに任せるのがいいんですかね……? むむ……?
たぶんこの記事を読んでくれてる人も首をかしげてると思うので、答えを発表したいと思います。この5人のユニットのリーダーに最もふさわしいのは「大神環」です。誰か予想した人いるんでしょうか。最年少じゃないですか。
もちろん適当に言ってるわけではありません。タイトルに「最適ユニットリーダー選択問題とその数学的解法」とありますが、このユニットにおいて環が最適なリーダーであることが、実はとある数学的な議論から帰結されます。ここで言う「最適」とは、ユニット内でアイドルたちが団結するまでの速さをある意味で最大化することを指します(詳しくは後述します)。本記事では、そのための最適リーダー決定法について紹介します。
本記事ではミリオンライブ!のユニットを題材に解説しますが、今回紹介する手法はアイドルマスターに登場する任意のユニットに対して適用することができます(なんなら別にアイマスでなくてもいいです)。気が向いたら試してみてください。
著者はこの分野に関して勉強中の身なので、もし間違いを見つけられた方がいらっしゃれば、ご指摘いただけると幸いです。
背景
「いや、そもそもこの5人の組み合わせ、一体何??? どこから出てきたの??」と思われた方がほとんどだと思います。その推察は正しいです。実はこのユニットは、「最適化アルゴリズムを用いて導出された、最も斬新なミリオンスターズのユニットのひとつ」です[星島航, 2022]。このような基準で構成されるユニットは我々がまだ見ぬ無数の可能性を内包していると考えられるため、新規にユニットを結成する場合には重要な候補となり得ます。
一方で、このようなユニットは、構成メンバーの関係性が希薄であることから、ユニットの連携面において困難が伴うことが想定されます。そこで、本記事で紹介するような、アイドル間の連携の度合いを最大化するリーダーを選択する手法が重要となるわけですね。
……いや、そんな堅苦しい話はどうでもいいのですよ。単純に楽しいですよね、こういう妄想するの。え……環がこのユニットのリーダーになっちゃうのか……。書いてる私がびっくりしてる。環がリーダーって今まであんまりなかったですよね。えーーー、うふふ。
何をやったの?
3行でまとめると、つぎのようになります。
「リーダーフォロワー合意システム」という枠組みの下で、ユニット内でのアイドル間相互作用を数理モデル化したよ!
前項の数理モデルに対して、「ユニットが最も速く団結するための、最適ユニットリーダー」を求める方法を紹介するよ!
既存のいろいろなユニットに対して、最適ユニットリーダーを求めてみたよ!
まず、1.において、アイドル間の「関係値」を用いてユニットの数理モデル化を行いました。ここで「数理モデル化」っていうのは、アイドル間相互作用を数学の言葉(=数式)で表したよ、ってことです。この工程を行うことで、最適性に関する議論を曖昧さを排除して行うことができます。
続いて2.では、1.のユニットに対し、最適リーダーを導出します。本記事の場合は、最適リーダーは厳密には行列の固有値解析の議論に帰着されるのですが、本記事では数学的な議論は避けて、以下のような図を用いた直感的な説明を行います。
各アイドルをユニットリーダーを設定した際におけるユニットメンバーの挙動を、1.の数理モデルに基づきシミュレーションして図示したものです。これらの図において、横軸は時間、縦軸はアイドルの状態(例:やる気、緊張感、テンションなどの大小)を表しています。$${\lambda_\mathrm{min}}$$はアイドルの状態の収束の速さを算出したものです。
このシミュレーションにおいて、リーダーは自身の状態を一定値を保ち続けています。一方、リーダーでないアイドルは、リーダーの影響を受けて、自身の状態が時間とともにリーダーの状態に近づいていきます。ここで、全てのアイドルの状態が同じになったとき、「ユニットが団結した」と呼ぶことにします。このとき、最適なリーダーを「ユニット全員が最も早く団結する(同じ値に収束する)ようなリーダー」と定めることにします。この場合ですと、環をリーダーに設定した場合(4番目の図)が最も早く関数が収束しているので、環が最適なリーダーである、ということになります。
最後に、3.では、ユニット所属アイドルが[星島航, 2022]で導出されたアイドル間の関係値を持つ場合に対して、最適ユニットリーダーを求めます。
今回作成したコードは、こちらから実行可能です(Google Colabolatory環境を推奨)。このコードを実行することで、任意のユニットに対し、最適なリーダーを導出することができます。プログラムは独学なので、至らないところがあっても許してください。
以降の説明において少しだけ数式が登場しますが、雰囲気でなんとなく追っていただければ結構です。中学数学の内容(文字式と関数)を理解していれば、楽しめるように記事を構成したつもりです。小難しい話(微分方程式・線形代数などに関する議論)は本編には含めず、記事末尾にまとめて付録として掲載します。
(i) 数理モデル化
まず、「ユニット内におけるアイドル間相互作用による動特性」をモデル化します。本節では、実在のユニット「トライスタービジョン」の場合を例に説明します。
ユニット「トライスタービジョン」は、「田中琴葉・島原エレナ・所恵美」の3人からなるユニットです。この3人はアイドル仲間であるのはもちろんですけど、それを差し引いても仲良しなんですよね。でも、この3人は初めから互いに親しい関係だったかといわれるとおそらくそうではなくて、最初はこんな感じの関係性だったと思われます。
……なんだか怒られが発生しそうなので弁明させてください。この図はグリマス黎明期(2013年前半)の頃の琴葉・エレナ・恵美の関係性を意図してます。実はこの3人の間の交友関係って、史実(GREE版ミリオンライブ!)を紐解くと、「ことエレ」と「ことめぐ」に端を発しているんですよね。
あ、この記事を作るにあたってTSV黎明期まとめを作ったのでリンクを張っておきます。よくよく考えれば、エレナと恵美が「はじめまして」な状態の頃もあったはずなんですよね……。それが先ほどの図です。
こういうような関係性の場合、琴葉がリーダーとなるのが一番良さそうな気がします。実際、琴葉はエレナと恵美に対して直接影響を与えられるため、早く団結を達成できそうです。対して、例えばエレナをリーダーにした場合、エレナは恵美に対して直接影響をあたえることができないため、ユニット全体が団結するまで時間がかかりそうだと想像できます。
それでは、関係性が先ほどの図で表されるTSVがどのようにモデル化されるかを紹介します。琴葉・エレナ・恵美の3人の状態をそれぞれ$${x_\mathrm{kot}(t), x_\mathrm{ele}(t), x_\mathrm{meg}(t) \in \mathbf{R}}$$という実数であらわすものとします(時刻$${t}$$によって決まるので、正確には実数値関数です)。このとき、エレナをリーダーにした場合の3人の状態の時間的変化は、「リーダーフォロワー合意システム」の枠組み(付録参照)の下ではつぎのように表現できます。
$${\dot{x}_\mathrm{kot}(t)}$$というのが出てきましたが、シミュレーション上での$${x_\mathrm{kot}(t)}$$の傾き($${x_\mathrm{kot}(t)}$$を時間微分した値)を表すものです。重要なポイントは以下の通りです。
式(1):
・リーダーのエレナは、自身の状態を一定値に保ち続ける。
式(2):
・琴葉(非リーダー)の状態の変化の大きさは、「(エレナとの仲の良さ) × (エレナとの状態の誤差)」「(恵美との仲の良さ)×(恵美との状態の誤差)」の項によって決まる。
・琴葉(非リーダー)の状態の変化の向きは、エレナ・恵美に近づく方向である。
式(3):
・式(2)と同様(恵美に関する式)
・最後の項0になるので、右辺に$${x_\mathrm{ele}(t)}$$が出てこない。つまり、エレナから直接影響を受けない。
この式(1)~(3)こそが、「リーダーがエレナの場合のTSVの相互作用のモデル」です。また、琴葉・恵美がリーダーだった場合も、これと全く同様にして、モデルを構成することができます。
式(1)-(3)で導出したモデルが実際に現実に即しているかどうかは、実際にシミュレーションを行うことで確認できます。初期時刻$${t=0}$$のとき、エレナの状態が1、琴葉・恵美の状態がともに0だった場合(
$${x_\mathrm{ele}(0)=1, x_\mathrm{kot}(0)=x_\mathrm{meg}(0)=0}$$)に対するシミュレーション結果は次の通りです。
リーダーのエレナは、自身の状態を1に保ち続けています。一方、琴葉・恵美の状態は、エレナの状態に近づき、最終的に3人とも同じ状態に収束してきます(=団結)。また、恵美より琴葉の方が早くエレナの状態の値に近づきますが、この事実も先程の図(図1: 黎明期TSVの関係性)と直感的に合致しています。したがって、式(1)-(3)から得られるトライスタービジョンの数理モデルは妥当なものだと言えます。
(ii) 最適ユニットリーダーの導出
冒頭で述べた通り、本記事では最適なリーダーを「ユニット全員が最も早く団結する(同じ値に収束する)ようなリーダー」と定めます。すなわち、トライスタービジョンの最適リーダーを見付けるためには、琴葉・エレナ・恵美をリーダーにした場合のシミュレーションを行い、値が収束するまでの速さを比べればよい、と言うことになります。
というわけで、3人をそれぞれリーダーに設定した場合のシミュレーション結果を示します。
明らかに、琴葉がリーダーである場合(一番上)が、最も早く一定値1に収束しています。図中$${\lambda_\mathrm{min}}$$の値は、各リーダーにおける収束の速度を代数的に計算したもので、この値も琴葉の場合が最も大きくなっています(詳細は付録参照)。したがって、黎明期トライスタービジョンにおける最適リーダーは田中琴葉であることが分かりました。
(iii) 他ユニットに対して最適リーダー求めてみた!
本節では、各アイドル間の関係値が[星島航, 2022]で導出されたものであると仮定して、様々なユニットに対して最適リーダーを求めてみます。結果を表にまとめたものがつぎの表です(詳細は付録を参照ください)。
$$
\begin{array}{ccc}
\hline
\textrm{\small ユニット名} & \textrm{\small 最適リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\
\hline
\textrm{765 MILLION ALLSTARS} & \textrm{\small 周防桃子} & 32.39 \\
\textrm{765PRO ALLSTARS} & \textrm{\small 菊地真} & 40.44 \\
\textrm{MILLIONSTARS} & \textrm{\small 周防桃子} & 41.16 \\
\hdashline
\textrm{BRIGHT DIAMOND} & \textrm{\small 田中琴葉} & 36.58 \\
\textrm{CLEVER CLOVER} & \textrm{\small 木下ひなた} & 34.56 \\
\textrm{LOVERS HEART} & \textrm{\small 高山紗代子} & 40.95 \\
\textrm{SHADE OF SPADE} & \textrm{\small 永吉昴} & 40.17 \\
\hdashline
\textrm{\small(ワールド・アスレチック・COOK-KING)} & \textrm{\small 篠宮可憐} & 16.08 \\
\textrm{\small(ショコラブル*イブ)} & \textrm{\small 春日未来} & 12.06 \\
\hdashline
\textrm{\small(翼・歩・千鶴・環・亜利沙)} & \textrm{\small 大神環} & 4.38 \\
\hline
\end{array}
$$
わあ、周防桃子さん……! 見てますか、皆さん。765 MILLION ALLSTARSのリーダー適性が最も高いのは周防桃子さんですよ。直感的には春香か未来をリーダーにしてしまいそうになるんですが、周防桃子さんですよ。すごいなあ、アイドルだあ……。周防桃子さん……きっときみの情熱が、周りのみんなを動かす力になるんだ……。あ、バンダイナムコさん、劇場版ミリオンライブ!ではよろしくお願いしますね。……ね?
わあ。このペースで一つ一つ書いちゃうと文字数大変なことになっちゃう。MTSだと、BRIGHT DIAMOND琴葉やLOVERS HEART紗代子はすごくしっくりくる半面、CLEVER CLOVERひなたとSHADE OF SPADEはちょっぴり意外な人選。とSHADE OF SPADEのシーズンはこれからですが、ぜひ永吉昴さんにご注目ください。
5人ユニット枠として、3つユニットを例に最適リーダー(とそのときの団結速度)を導出しました。これらの結果を比較すると、環たちのユニットだけ団結速度が他2ユニットより突出して小さいことが確認できます。しかしながら、きっとこの5人はユニット活動を行う過程で次第に仲を深めて、いつの日か強固な団結と素晴らしいステージを見せてくれることでしょう。楽しみですね。うふふ。
まとめ
本記事では、アイドルマスターにおける最適ユニットリーダー決定法について紹介しました。この枠組みは、(i) 数理モデル化と、(ii) 数理モデルを用いて団結速度を最大化するリーダーを選択する方法、の2つによって構成されています。
■ 一言で説明すると:
(i):ある枠組みを導入することで、ユニット内アイドル相互作用のモデル化を行った。
(ii):シミュレーションを通して各アイドルの状態の収束速度(=団結速度)を見積もることで、最適なリーダーを選択した。
■ 展望:
今回は、アイドル間の関係性が「両向き矢印」であらわされる場合を考えました。だけど、人間の関係性って「片向き矢印」の場合もありますよね?????? うふふ、なんだか楽しくなってきました。……実は、今回の方法はそういった場合にも使えるので、ぜひ試してみてくださいね。
付録1:③におけるリーダー別団結速度の一覧
765MILLION ALLSTAR
・最適リーダー:周防桃子(団結速度:32.39)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 周防桃子} & 32.39 \\ 2 & \textrm{\small 高坂海美} & 30.71 \\ 3 & \textrm{\small 永吉昴} & 30.39 \\ 4 & \textrm{\small 豊川風花} & 27.73 \\ 5 & \textrm{\small 望月杏奈} & 27.39 \\ \hline \end{array}
$$
$$
\begin{array}{cc} \hline \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline \textrm{\small 天海春香} & 16.59 \\ \textrm{\small 如月千早} & 18.51 \\ \textrm{\small 星井美希} & 16.93 \\ \textrm{\small 萩原雪歩} & 13.74 \\ \textrm{\small 高槻やよい} & 12.66 \\ \textrm{\small 菊地真} & 19.98 \\ \textrm{\small 水瀬伊織} & 13.73 \\ \textrm{\small 四条貴音} & 13.11 \\ \textrm{\small 秋月律子} & 12.61 \\ \textrm{\small 三浦あずさ} & 15.39 \\ \textrm{\small 双海亜美} & 12.61 \\ \textrm{\small 双海真美} & 12.97 \\ \textrm{\small 我那覇響} & 16.34 \\
\hdashline
\textrm{\small 春日未来} & 21.72 \\ \textrm{\small 田中琴葉} & 23.60 \\ \textrm{\small 佐竹美奈子} & 25.32 \\ \textrm{\small 徳川まつり} & 22.34 \\ \textrm{\small 七尾百合子} & 26.82 \\ \textrm{\small 高山紗代子} & 24.52 \\ \textrm{\small 松田亜利沙} & 23.04 \\ \textrm{\small 高坂海美} & 30.71 \\ \textrm{\small 中谷育} & 21.96 \\ \textrm{\small エミリー} & 24.55 \\ \textrm{\small 矢吹可奈} & 22.52 \\ \textrm{\small 横山奈緒} & 22.95 \\ \textrm{\small 福田のり子} & 24.61 \\
\hdashline
\textrm{\small 最上静香} & 23.63 \\ \textrm{\small 所恵美} & 26.41 \\ \textrm{\small ロコ} & 24.90 \\ \textrm{\small 天空橋朋花} & 26.50 \\ \textrm{\small 北沢志保} & 23.76 \\ \textrm{\small 舞浜歩} & 21.21 \\ \textrm{\small 二階堂千鶴} & 27.10 \\ \textrm{\small 真壁瑞希} & 27.06 \\ \textrm{\small 百瀬莉緒} & 25.44 \\ \textrm{\small 永吉昴} & 30.39 \\ \textrm{\small \bf 周防桃子} & \textbf{32.39} \\
\textrm{\small ジュリア} & 25.62 \\ \textrm{\small 白石紬} & 20.86 \\
\hdashline
\textrm{\small 伊吹翼} & 25.56 \\ \textrm{\small 島原エレナ} & 22.38 \\ \textrm{\small 箱崎星梨花} & 27.39 \\ \textrm{\small 野々原茜} & 24.78 \\ \textrm{\small 望月杏奈} & 27.39 \\ \textrm{\small 木下ひなた} & 24.06 \\ \textrm{\small 馬場このみ} & 25.27 \\ \textrm{\small 大神環} & 23.21 \\ \textrm{\small 豊川風花} & 27.73 \\ \textrm{\small 宮尾美也} & 22.17 \\ \textrm{\small 篠宮可憐} & 25.99 \\ \textrm{\small 北上麗花} & 21.92 \\ \textrm{\small 桜守歌織} & 23.33 \\ \hline \end{array}
$$
765PRO ALLSTARS
・最適リーダー:菊地真(団結速度:40.44)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 菊地真} & 40.44 \\ 2 & \textrm{\small 水瀬伊織} & 37.36 \\ 3 & \textrm{\small 星井美希} & 31.96 \\ 4 & \textrm{\small 我那覇響} & 30.00 \\ 5 & \textrm{\small 高槻やよい} & 29.82 \\ \hline \end{array}
$$
$$
\begin{array}{cc} \hline \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline \textrm{\small 天海春香} & 28.57 \\ \textrm{\small 如月千早} & 27.57 \\ \textrm{\small 星井美希} & 31.96 \\ \textrm{\small 萩原雪歩} & 29.04 \\ \textrm{\small 高槻やよい} & 29.82 \\
\textrm{\small \bf 菊地真} & \textbf{40.44} \\
\textrm{\small 水瀬伊織} & 37.36 \\ \textrm{\small 四条貴音} & 19.17 \\ \textrm{\small 秋月律子} & 29.75 \\ \textrm{\small 三浦あずさ} & 24.52 \\ \textrm{\small 双海亜美} & 29.63 \\ \textrm{\small 双海真美} & 23.00 \\ \textrm{\small 我那覇響} & 30.00 \\ \hline \end{array}
$$
MILLIONSTARS
・最適リーダー:周防桃子(団結速度:41.17)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 周防桃子} & 41.17 \\ 2 & \textrm{\small 高坂海美} & 40.10 \\ 3 & \textrm{\small 永吉昴} & 37.45 \\ 4 & \textrm{\small 箱崎星梨花} & 35.72 \\ 5 & \textrm{\small 真壁瑞希} & 35.70 \\ \hline \end{array}
$$
$$
\begin{array}{cc} \hline \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline \textrm{\small 春日未来} & 25.96 \\ \textrm{\small 田中琴葉} & 29.90 \\ \textrm{\small 佐竹美奈子} & 31.13 \\ \textrm{\small 徳川まつり} & 26.00 \\ \textrm{\small 七尾百合子} & 34.70 \\ \textrm{\small 高山紗代子} & 30.16 \\ \textrm{\small 松田亜利沙} & 28.22 \\ \textrm{\small 高坂海美} & 38.44 \\ \textrm{\small 中谷育} & 25.24 \\ \textrm{\small エミリー} & 24.68 \\ \textrm{\small 矢吹可奈} & 24.08 \\ \textrm{\small 横山奈緒} & 28.11 \\ \textrm{\small 福田のり子} & 30.27 \\
\hdashline
\textrm{\small 最上静香} & 28.82 \\ \textrm{\small 所恵美} & 33.73 \\ \textrm{\small ロコ} & 30.64 \\ \textrm{\small 天空橋朋花} & 32.98 \\ \textrm{\small 北沢志保} & 30.47 \\ \textrm{\small 舞浜歩} & 21.26 \\ \textrm{\small 二階堂千鶴} & 32.38 \\ \textrm{\small 真壁瑞希} & 34.95 \\ \textrm{\small 百瀬莉緒} & 29.75 \\ \textrm{\small 永吉昴} & 35.58 \\
\textrm{\small \bf 周防桃子} & \textbf{39.61} \\
\textrm{\small ジュリア} & 30.66 \\ \textrm{\small 白石紬} & 26.35 \\
\hdashline
\textrm{\small 伊吹翼} & 31.00 \\ \textrm{\small 島原エレナ} & 24.71 \\ \textrm{\small 箱崎星梨花} & 34.30 \\ \textrm{\small 野々原茜} & 30.52 \\ \textrm{\small 望月杏奈} & 35.56 \\ \textrm{\small 木下ひなた} & 28.14 \\ \textrm{\small 馬場このみ} & 31.20 \\ \textrm{\small 大神環} & 28.01 \\ \textrm{\small 豊川風花} & 33.14 \\ \textrm{\small 宮尾美也} & 28.01 \\ \textrm{\small 篠宮可憐} & 29.23 \\ \textrm{\small 北上麗花} & 27.87 \\ \textrm{\small 桜守歌織} & 29.56 \\ \hline \end{array}
$$
MTS: BRIGHT DIAMOND
・最適リーダー:田中琴葉(団結速度:36.58)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 田中琴葉} & 36.58 \\ 2 & \textrm{\small 徳川まつり} & 36.47 \\ 3 & \textrm{\small 宮尾美也} & 36.22 \\ 4 & \textrm{\small 春日未来} & 30.22 \\ 5 & \textrm{\small 百瀬莉緒} & 29.12 \\ \hline \end{array}
$$
$$
\begin{array}{cc} \hline \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline \textrm{\small 伊吹翼} & 19.21 \\ \textrm{\small 徳川まつり} & 36.47 \\ \textrm{\small 四条貴音} & 18.92 \\ \textrm{\small 所恵美} & 25.74 \\
\hdashline
\textrm{\small 百瀬莉緒} & 29.12 \\ \textrm{\small 萩原雪歩} & 16.60 \\ \textrm{\small \bf 田中琴葉} & \textbf{36.58} \\ \textrm{\small 双海真美} & 9.31 \\
\hdashline
\textrm{\small 水瀬伊織} & 16.41 \\ \textrm{\small 宮尾美也} & 36.22 \\ \textrm{\small 春日未来} & 30.22 \\ \textrm{\small 桜守歌織} & 27.38 \\ \textrm{\small 周防桃子} & 23.95 \\ \hline \end{array}
$$
MTS: CLEVER CLOVER
・最適リーダー:木下ひなた(団結速度:34.56)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 木下ひなた} & 34.56 \\ 2 & \textrm{\small 島原エレナ} & 29.24 \\ 3 & \textrm{\small 箱崎星梨花} & 28.65 \\ 4 & \textrm{\small 高坂海美} & 27.86 \\ 5 & \textrm{\small 大神環} & 27.50 \\ \hline \end{array}
$$
$$
\begin{array}{cc} \hline \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline \textrm{\small 箱崎星梨花} & 28.65 \\ \textrm{\small 三浦あずさ} & 15.64 \\ \textrm{\small 高坂海美} & 27.86 \\ \textrm{\small ロコ} & 26.66 \\
\hdashline
\textrm{\small 菊地真} & 15.16 \\ \textrm{\small 二階堂千鶴} & 18.70 \\ \textrm{\small 島原エレナ} & 29.24 \\ \textrm{\small 真壁瑞希} & 16.72 \\
\hdashline
\textrm{\small 横山奈緒} & 20.40 \\ \textrm{\small 馬場このみ} & 21.07 \\ \textrm{\small 秋月律子} & 11.79 \\ \textrm{\small 大神環} & 27.50 \\ \textrm{\small \bf 木下ひなた} & \textbf{34.56} \\ \hline \end{array}
$$
MTS: LOVERS HEART
・最適リーダー:高山紗代子(団結速度:40.59)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 高山紗代子} & 40.59 \\ 2 & \textrm{\small 七尾百合子} & 39.33 \\ 3 & \textrm{\small 松田亜利沙} & 36.64 \\ 4 & \textrm{\small 佐竹美奈子} & 35.99 \\ 5 & \textrm{\small 福田のり子} & 35.34 \\ \hline \end{array}
$$
$$
\begin{array}{cc} \hline \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline \textrm{\small 天空橋朋花} & 27.70 \\ \textrm{\small 高槻やよい} & 21.55 \\ \textrm{\small 佐竹美奈子} & 35.99 \\ \textrm{\small 七尾百合子} & 39.33 \\
\hdashline
\textrm{\small 福田のり子} & 35.34 \\ \textrm{\small 松田亜利沙} & 36.64 \\ \textrm{\small 北上麗花} & 27.22 \\ \textrm{\small 如月千早} & 14.98 \\ \textrm{\small \bf 高山紗代子} & \textbf{40.59} \\
\hdashline
\textrm{\small 望月杏奈} & 24.60 \\ \textrm{\small 矢吹可奈} & 35.12 \\ \textrm{\small 天海春香} & 30.10 \\ \textrm{\small ジュリア} & 31.08 \\ \hline \end{array}
$$
MTS: SHADE OF SPADE
・最適リーダー:永吉昴(団結速度:40.17)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 永吉昴} & 40.17 \\ 2 & \textrm{\small 野々原茜} & 32.84 \\ 3 & \textrm{\small 白石紬} & 24.43 \\ 4 & \textrm{\small 北沢志保} & 24.13 \\ 5 & \textrm{\small エミリー} & 23.88 \\ \hline \end{array}
$$
$$
\begin{array}{cc} \hline \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline \textrm{\small 星井美希} & 15.14 \\ \textrm{\small 双海亜美} & 18.08 \\ \textrm{\small 我那覇響} & 17.74 \\
\hdashline
\textrm{\small 中谷育} & 9.68 \\ \textrm{\small エミリー} & 23.88 \\ \textrm{\small 最上静香} & 21.19 \\
\hdashline
\textrm{\small 北沢志保} & 24.13 \\ \textrm{\small \bf 永吉昴} & \textbf{40.17} \\ \textrm{\small 舞浜歩} & 16.36 \\ \textrm{\small 白石紬} & 24.43 \\
\hdashline
\textrm{\small 野々原茜} & 32.84 \\ \textrm{\small 豊川風花} & 16.36 \\ \textrm{\small 篠宮可憐} & 20.62 \\ \hline \end{array}
$$
MTV01: ワールド・アスレチック・COOK-KING ~勝者必食!?スポ食の秋~
・最適リーダー:篠宮可憐(団結速度:16.08)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 篠宮可憐} & 16.08 \\ 2 & \textrm{\small 中谷育} & 14.35 \\ 3 & \textrm{\small 佐竹美奈子} & 13.67 \\ 4 & \textrm{\small 舞浜歩} & 7.13 \\ 5 & \textrm{\small 我那覇響} & 6.87 \\ \hline \end{array}
$$
MTV01: ショコラブル*イブ
・最適リーダー:春日未来(団結速度:12.06)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 春日未来} & 12.06 \\ 2 & \textrm{\small 望月杏奈} & 11.10 \\ 3 & \textrm{\small 高山紗代子} & 6.27 \\ 4 & \textrm{\small 所恵美} & 5.95 \\ 5 & \textrm{\small 野々原茜} & 3.31 \\ \hline \end{array}
$$
MTX**: 翼・歩・千鶴・環・亜利沙のユニット
・最適リーダー:大神環(団結速度:4.38)
$$
\begin{array}{ccc} \hline \textrm{\small 順位} & \textrm{\small リーダー} & \textrm{\small 団結速度} \\ \hline 1 & \textrm{\small 大神環} & 4.38 \\ 2 & \textrm{\small 二階堂千鶴} & 2.27 \\ 3 & \textrm{\small 舞浜歩} & 1.80 \\ 4 & \textrm{\small 伊吹翼} & 1.36 \\ 5 & \textrm{\small 松田亜利沙} & 1.34 \\ \hline \end{array}
$$
付録2:紹介した手法の数学的な説明
(i-1) 重み付き隣接行列によるユニットの表現
まず、記号を次のように定義します。
・ユニット内のアイドルの人数:$${n}$$
・アイドルの名前:$${1, 2, \ldots, n}$$
・アイドル$${i, j}$$間の関係性の大きさ:$${w_{ij} \; (=w_{ji})}$$
簡単のため、アイドルを$${1}$$から$${n}$$までの整数で管理することにします。このとき、重み付き隣接行列$${W \in \mathbf{R}^{n \times n}}$$を次式で定義します。
ここで、$${W}$$は対称行列となります。$${W}$$はユニットのアイドル間の関係性の情報をあますことなく含んでいます。
例:トライスタービジョン(黎明期)の場合
ユニットの人数は3人なので$${n=3}$$です。また、エレナ・琴葉・恵美にそれぞれ$${1,2,3}$$と番号付けをすれば、重み付き隣接行列$${W}$$は以下のようになります。
(i-2) リーダーフォロワー合意システムの定義
前節の重み付き隣接行列$${W =[w_{ij}]\in \mathbf{R}^{n \times n}}$$に対し、リーダーフォロワー合意システムは次式で定義されます。
ここで、$${\dot{x}_{i}(t)}$$は$${x_i(t)}$$の時間微分を表します。ちなみに、リーダーでない人のことをフォロワーといいます。
例:トライスタービジョン(黎明期・エレナがリーダー)の場合(再掲)
(ii-1) リーダーフォロワー合意システムの行列微分方程式表現
最適ユニットリーダーを導出するための準備として、前節のリーダーフォロワー合意系を行列微分方程式による形式に変換します。
以下では、一般性を失わず、リーダーの番号が$${1}$$であると仮定します。このとき、次式が成立します。
$$
\begin{equation*}
\begin{bmatrix}
\dot{x}_1(t) \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm} \\
\dot{x}_2(t) \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm} \\
\dot{x}_3(t) \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm} \\
\vdots \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm} \\
\dot{x}_n(t) \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm}
\end{bmatrix}
= -\left[
\begin{array}{c:cccc}
0 & 0 & 0 & \cdots & 0 \\ \hdashline
-w_{21} & \displaystyle\sum_{j=1}^n w_{2j} & -w_{23} & \cdots & -w_{2n} \\
-w_{31} & -w_{32} & \displaystyle\sum_{j=1}^n w_{3j} & \cdots & -w_{3n} \\
\vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
-w_{n1} & -w_{n2} & -w_{n3} & \cdots & \displaystyle\sum_{j=1}^n w_{nj}
\end{array}
\right]
\begin{bmatrix}
x_1(t) \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm} \\
x_2(t) \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm} \\
x_3(t) \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm} \\
\vdots \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm} \\
x_n(t) \rule[-4.3mm]{0mm}{8.6mm}
\end{bmatrix}
\end{equation*} \tag{4}
$$
さらに、点線で区分けされた行列に注目し、$${L_{\mathrm{ff}} \in \mathrm{R}^{(n-1) \times (n-1)}, L_{\mathrm{fl}} \in \mathrm{R}^{n-1}}$$をそれぞれつぎのように定義する。
このとき、式(4)は、等価に次のような形式へ変換されます。
ここで、$${x_{\mathrm{f}}(t) \coloneqq \begin{bmatrix} x_2(t) & x_3(t) & \cdots & x_n(t) \end{bmatrix}^\top}$$は、フォロワーの状態をまとめてできるベクトルです。
例:トライスタービジョン(黎明期・エレナがリーダー)の場合
$${L_{\mathrm{ff}} \in \mathrm{R}^{(n-1) \times (n-1)}, L_{\mathrm{fl}} \in \mathrm{R}^{1 \times (n-1)}}$$はそれぞれ、次式で与えられます。
実際、式(1)-(3)は次式と等価になっています。
(ii-2) 最適ユニットリーダーの定義
団結速度(シミュレーション上での収束の速さ)は、式(5)の$${L_\mathrm{ff}}$$(リーダーに依存して定まる行列)の最小固有値で定義されます。さらに、最適ユニットリーダーは「団結速度が最も高くなるアイドル」として定められます。
例:トライスタービジョン(黎明期)の場合
①エレナがリーダーの場合:
となる。$${L_\mathrm{ff}}$$の固有値は2.58, 0.42であるから、団結速度は0.42。
②琴葉がリーダーの場合:
となる。$${L_\mathrm{ff}}$$の固有値は1.2, 0.9であるから、団結速度は0.9。
③恵美がリーダーの場合:
となる。$${L_\mathrm{ff}}$$の固有値は2.93, 0.37であるから、団結速度は0.37。
以上より、トライスタービジョン(黎明期)の最適ユニットリーダーは、田中琴葉。
以上です。万が一ここまで読んでくださった方がいらっしゃるならば、本当にお疲れさまでした。私は数理全般の考え方が好きなので、この手のお話が大好きです。もっと増えてください。
冒頭でも紹介させていただいた星島航氏の記事に、多大なるインスピレーションを受けました。気が付いたらこの記事を書いていました。この場を借りて感謝申し上げます。