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タスク管理の限界と閃輝暗点:ラカンの欲望のズレから考える

私はITコンサルタント兼PLの仕事をしています。
日々、大量のタスクに向き合いながら、「タスクをコントロールし、完璧に期限内で結果を出すPLでありたい」と理想を抱いていました。

どんなにタスクが降ってきても、最終的には全部をさばいて納期に間に合わせるのが自分の役割だと信じていました。

でも、ある日突然その限界がやってきたのです。



閃輝暗点が教えてくれた「脳の限界」

その日は土曜日。視界に突然チカチカと光が現れました。閃輝暗点です。これは偏頭痛の前兆で、数時間後にはひどい頭痛が私を襲いました。

「ああ、ついに脳のキャパシティが限界を迎えたんだな…」と思いました。

それまでは理想のPL像を追い求めていましたが、「もう無理だな」と認めざるを得ない瞬間でした。


正直に「無理だ」と言ってみたら変わった

月曜日、私はチームメンバーにこう言いました。
今のタスク量ではちょっと限界です。やり方を変えたいと思うんですが、一緒に考えてもらえませんか?

その瞬間、不思議なほど頭がクリアになり、解決策が次々と浮かんできました。
一緒に考えたメンバーはこう返してくれました。
そうですよね。私もその方がいいと思います。じゃあこういう方法はどうでしょう?

この言葉を聞いて、初めて「すべてを自分で抱え込まなくてもいいんだ」と思えました。小さな気づきでしたが、私の欲望の軌道はここで変わり始めました。


欲望の軌道が変わった瞬間 – 象徴界から現実界、そして新しい象徴界へ

私が仕事で大量のタスクを抱えて「すべてをコントロールしなければ」と思い続けていたとき、欲望の軌道がずれ始める体験をしました。

ラカンの理論で考えてみると、私の体験は 象徴界(Symbolic)→現実界(Real)→想像界(Imaginary)→新しい象徴界 という形で移動しました。
ここでは、私がどう 新しい象徴界へ 欲望を移動させたのか、その過程をシンプルに振り返ってみます。


① 象徴界(Symbolic) – すべてをコントロールしようとする自分

象徴界とは 「社会のルール・役割・言語が支配する世界」 です。
私はプロジェクトリーダー(PL)として 「すべてを把握し、完璧にこなすべきだ」 という象徴界のルールに従い、「優秀なPL」という理想像を追い求めていました。

  • 欲望の軌道①:完璧なPLでありたい → すべてを自分でコントロールする

この段階では、大文字の他者(The Big Other)が作る社会的なルールに従うことで自分の価値を証明しようとしていました。
しかし、そのプレッシャーが限界に達し、私は次の段階に移ります。


② 現実界(Real) – 限界の体感が現れる瞬間

現実界とは、言語化できない感覚や突発的な出来事が発生する領域です。
ある土曜日、視界にチカチカと光が現れ、閃輝暗点から激しい偏頭痛が起きました。これが現実界からのサインです。

象徴界のルールでは「なんとかなる」と信じていましたが、体感として「もう無理だ」という現実が突きつけられた瞬間でした。

  • 欲望の軌道②:現実界のサインが象徴界を揺るがす → 限界を体感する

ここでは象徴界のルールが通用せず、私は次の 想像界に移ります。


③ 想像界(Imaginary) – 崩壊するイメージが浮かぶ

想像界とは、イメージや自己像、他者の視線を通じて現実を捉える世界です。
偏頭痛という現実界の体感がきっかけとなり、私は想像界で「このままだと倒れてしまうかもしれない」というイメージを浮かべました。

  • 欲望の軌道③:「限界のイメージ」が浮かぶ → 自分の理想像(優秀なPL)が崩れそうになる恐れ

ここで初めて「やり方を変えなきゃ」と思いましたが、重要なのはそのイメージを象徴界に持ち帰り、言語化することです。


④ 新しい象徴界 – 言語化して欲望が変わる

月曜日、私はチームメンバーにこう言いました。
今のタスク量ではちょっと限界です。やり方を変えたいと思うんですが、一緒に考えてもらえませんか?

これによって私は新しい象徴界に移動し、「チームでタスクを共有し、柔軟に対応する」という新しいルールが生まれました。

  • 欲望の軌道④:「一人で抱え込む」から「チームで協力する」へ

大文字の他者に従う欲望から、小文字の他者(具体的な同僚たち)と協働する欲望へと軌道がずれたのです。


欲望のズレを意識することで変わる働き方

今回、私の欲望は 象徴界→現実界→想像界→新しい象徴界 へと移動しました。
この過程を意識することで、働き方は軽くなり、健康に働き続ける新しい視点が生まれました。

  • 象徴界(最初の欲望):「すべてを自分でコントロールする」欲望

  • 現実界:「閃輝暗点と偏頭痛」という限界の体感

  • 想像界:「このままだと倒れるかも」というイメージの浮上

  • 新しい象徴界:「チームで協力し、柔軟にやり方を変える」欲望


専門用語のまとめ

  • 象徴界(Symbolic)
    言語・社会的ルール・役割の世界。ここで「自分の価値を証明する欲望」が生まれる。
    例:「すべてをコントロールするPLでありたい」

  • 現実界(Real)
    言語化できない体感や突発的な出来事の領域。象徴界のルールを揺るがすサインが現れる。
    例:「閃輝暗点や偏頭痛」

  • 想像界(Imaginary)
    イメージや自己像の世界。限界をイメージ化し、自己の崩壊を恐れる感覚が生まれる。
    例:「このままだと倒れるかも」というイメージ

  • 大文字の他者(The Big Other)
    社会の規範やルールを象徴する存在。「優秀でなければならない」という期待を与える。

  • 小文字の他者(the other)
    具体的な他者との対話や関わり。ここで新しい視点が得られ、欲望の軌道が変わるきっかけになる。


最後に – 柔軟に欲望をずらしながら健康に働く

今回の体験を通して、私は 「界を移動すること」「欲望をずらすこと」が柔軟な働き方を生むと感じました。
象徴界・現実界・想像界を意識することで、新しい選択肢が見つかることがあります。

これからも 界を自由に行き来しながら、健康に働き続けていきたいと思います。

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