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現実は想像より嬉なり

誕生日に際し相方が「〇〇でも行く?」と最近行ってなかったお気に入りレストランを提案してくれる。もちろん「嬉しい」と思うと同時に、ふと思い浮かんだことがあった。

「〇〇もいいけど、相方くんが全部用意してくれるのもいいな〜」

「え?」

「別に買ってきたものでもインスタントでも何でもいいんだけど、私は何もしないで、ただいるだけで全部料理が出てきて、皿洗いまでやってくれて、とか」

想像したら、ちょっと楽しい気持ちになった。


うちの相方は、料理にまつわることは、一切しない人である。

本人の名誉のためにお伝えしておくと、我が家の掃除担当である彼は家のことなど私よりよっぽどマメなので、決して「家事を一切協力しない人」ではない。

でも料理に関しては一切、手を出して来ないというか。食べること自体に私ほど興味も関心もなく、もうここは私担当、お任せという感じ。私にも何ら異論はない。

だから別に手料理を頑張ってして欲しい、とかでもなく、でも、もし相方が「料理を用意する」としたら、どんな感じなんだろう?という。ちょっとした興味、好奇心からの提案だった。断られるかな、とも思っていた。しかし、意外にも相方くんの反応がまんざらでもない。

結局、当日の夕食を準備してくれることになった。

そしてそれは、私の想像を超えたものだった。

事前の、内容についてのいくつかのやり取りから私が予想したのは、「お寿司どーん」とか「お刺身どーん」とかそんな感じで、他に多少おつまみ程度のものはあるかもしれないけど、買ってきた大物をどんと並べて終わり、というイメージだった。

でも、当日。まずは買い物に出た時点で「メモ忘れてきた!」の言葉。「えっ、メモ書きするほど、色々用意するのか?」と、ここでちょっと予想外のことが起こる。そして買い物中、私は他店で時間を潰し、1人で行ってもらった。帰宅して「何が出てくるか楽しみだな〜」の私の言葉に「盛ったり温めたりするだけだよ」と相方。

そして出てきたものは、なんと、一応コースの体を成していた。

【スープ】トマトポタージュ
【前菜】ピリ辛揚げごぼう、グリルチキン、ブルーチーズ
【プチメイン】牛タンシチュー、バゲット
【メイン】上生寿司(!)
【デザート】りんご

(ケーキは先に、別に用意してくれていた)

インスタントやらレトルトやら惣菜を活用してのコースだけど、私は相方がメニュー構成まで考えてくれていたことに、感動してしまった。ちゃんと小さな花も、買ってくれた。メモを忘れて買い忘れがひとつあった!って悔しがってたけど、食後に「何だったの?」と聞いたら「寿司を食べる時のお吸い物」だって。私よりよっぽど、気が効いてるじゃないか!

料理というか、食事を準備することなんて興味ないだろう、できないだろう、やってくれないだろうって思っていた。

言ってみるもんだ。

ああ。
楽しい誕生日だった。

相方ともなかなか長い付き合いになるけど、こんなの初めてだった。この後に及んでまだ、こんな初めての、そこはかとない面白さに、遭遇できるとは。

まだまだ人生、未知だなぁ。

現実は想像より嬉なり。

かなり、嬉なり。



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