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岸田文雄政権での国防における功績について

私はこれまで岸田総理の政策を、かなり批判をさせていただきました。
一方で岸田総理は数年間の間に、しっかりと国防上においては功績を残されています。
そういった功績はしっかり評価すべきと考えて、今回簡潔に紹介させていただきたいと思います。

先日、勇退を表明されました岸田総理、まずはお疲れ様でした。
まだ任期は少し残っていますので、残りもしっかり努めていただければと思います。
総裁選が気になるところでありますが、今回は岸田総理に功績の部分を簡潔に説明していきたいと思います。

今回は江崎道朗雄先生からご献本いただいた「日本の軍事的欠点を敢えて示そう」。
この本の終わりの部分を紹介させてもらおうと思います。
私は岸田総理の批判に関しては最近「岸田総理と赤いネットワーク」という動画を出させていただきました。
かなり再生数が回っておりまして、どうもありがとうございます。

一方で岸田総理はしっかりと必要なことはされているとも思いますので、今回は岸田総理の功績の部分をご紹介させてもらおうと思います。
産経新聞の書評がありますので、まずそこを簡単に紹介させてもらおうと思います。

刺激的な表題だが、政府が昨年末に決定した「安保3文書」と、その母体となった自民党安全保障調査会の提言を精緻に分析し、丁寧に分かりやすく説明している。

安保3文書を評価する一方、日本が反撃能力を保有した場合の米国との関係、サイバー領域の取り組み、防衛装備品調達などでの欠点を赤裸々にするだけでなく、具体的な方策も盛りだくさんだ。「日本にとって最大の危機は、自らの軍事的欠点を正確に理解していないこと」との指摘は重く響く。

永田町の裏方として携わった、安倍晋三、石原慎太郎両氏らとの防衛・安保論議も内情に迫り、実に興味深い。(かや書房・1650円)

江崎道朗さんのこちらの本の中にも書いてありますけれど、石原慎太郎氏の政策スタッフを務められていたということでもあります。
そういう石原慎太郎さんの事務所での話とかも中には書かれています。

概要欄にAmazonリンクを貼っておきますので、是非興味持たれたらこの本を買っていただけるのがいいんじゃないかなと思います。
※以下、概要欄参照
https://www.youtube.com/watch?v=iJ7Lrkt3czQ

この本の終わりの部分に、今回の勇退をされた岸田総理がしてきた仕事がわかりやすく書かれているかなということで読み上げていきたいと思います。

終わりに

近いうちに戦争を仕掛けられるかもしれない、あるいは戦争に巻き込まれることになるだろう。
そう考えて日本政府はその準備を始めた。
2022年9月22日、岸田文雄首相は官邸に国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議を設置した。
その趣旨には有事、つまり戦争を想定した総合的な防衛体制の強化と経済財政のあり方を検討することだ、と書いてある。
有事であっても我が国の信用や国民生活が損なわれないよう経済的ファンダメンタルズを寛容していくことが不可欠であり、こうした観点から総合的な防衛体制の強化と経済財政のあり方について検討する必要がある。
有事、つまり戦争になった時に国際社会が味方してくれるよう我が国の信用を高めるだけでなく、戦争になればウクライナのようにインフラを壊され貿易も制限されエネルギーや食料医薬品の不足から国民生活が損なわれることになるので、その対策を今から検討準備するのがこの有識者会議の趣旨なのだ。

私も有識者会議をかなり批判はしていますが、こういう有識者会議は必要だと思います。

しかも9月30日、岸田首相が出席した第一回会議では「自衛隊だけでは国は守れない」という恐ろしい発言まで飛び出した。
確かに北朝鮮のミサイルを撃ち落とすこともミサイル基地を破壊することも今の自衛隊では十分できない。
今のままの政府・自衛隊では国民を守れないのだ。
有事においても経済活動や国民生活の安定を維持していくには「機動的に財政出動できるよう一定の財政余力を平時から保持しておく必要」という発言も不気味だ。
戦争になれば、膨大な武器・弾薬・燃料などの戦費が必要になる。
被災した国民の医療・避難施設の準備を含めた衣食の提供も必要だ。
そのために平時から財政余力、つまり戦費を準備しておく必要があると言っているわけだ。
日露戦争の時、日本が英米に頭を下げて戦費調達に奔走したことは有名で、我が国への侵攻を防ぐためにも膨大な予算が必要だ。
これらの発言を受けて浜田靖一防衛大臣はこう発言している。

これは我が国への侵攻を防げるか防げないか国民を守れるか守れないのかという問題であります。
中途半端なものでは降りかかる火の粉を払うことはできません。
そのことはウクライナ侵略が証明しています。我々の目的は紛争を阻止することであり、そのために我々に残された時間は少ないと考えます。
我々は直ちに行動を起こし5年以内に防衛力の抜本的強化を実現しなければなりません。
近年北朝鮮のミサイル発射を受けてJアラートという名の空襲警報、イコール全国瞬時警報システムが鳴り響くようになった。
5年以内に防衛力の抜本的強化を実現すれば、あるいは戦争を回避することができるかもしれない。

限定的とはいえ米国の機密情報を知り得る浜田氏が、政府の公的な会合で我々に残された時間は少ないと述べたことを軽んじてはなるまい。
こうした切迫した危機感の中で、岸田政権は2022年12月16日反撃能力の保有などを盛り込んだ国家安全保障戦略を策定し、向こう5年間で約43兆円の予算を計上した。
この岸田政権の動きを支えたのが防衛省・自衛隊の改革派だ。

実は防衛省自衛隊の中には2つの大きな流れがある。
一つは自衛隊は必要最小限度の能力を持てばいいのであって、反撃能力・敵基地攻撃能力などを持つべきではないとする戦後体制派だ。
護憲派の大半も自衛隊が軍隊としての能力を持つことに反対することが憲法を守ることだと信じてきた。
だがソ連の軍事的脅威に対抗すべく、米国は1970年代に入ると経済大国になりつつあった日本に対して防衛力の強化を求めた。
そこで1976年、三木武夫内閣は初めて防衛計画の対抗を策定したのだが、この時、基盤的防衛力整備構想を掲げた。
要はGDP・国内総生産比1%内でできる範囲の防衛力を整備する。
言い換えれば、脅威・相手の能力に対応した防衛力整備は不要だとしたのだ。

しかし91年にソ連邦が崩壊するや、自衛隊の活動が拡大していく中東への掃海部隊の派遣、カンボジアやイラクでのPKO国連平和維持活動と海外派遣が増えた。
それだけでなく北朝鮮の核ミサイル危機と能登半島沖の不審船事件と紛争対処も急増することになり、敵の脅威から日本を守ることができる自衛隊に変わるべきだと考える改革派が対等するようになる。
隠して護憲派を味方につけた戦後体制派と改革派による内部対立が始まった。
その争点の一つが相手の能力に着目した防衛力だ。
戦後体制派は北朝鮮や中国・ロシアの軍事的脅威がいくら高まろうとも相手の能力に対応した防衛力整備は不要だという立場だ。
一方改革派は日本を取り巻く脅威を正確に把握し、相手の能力・脅威に対抗できる防衛力整備をすべきだという立場だ。

もう一つ争点となったのが真に戦える防衛力だ。
戦後体制派は自衛隊はあくまで存在することに意味があるのであって、真に戦える軍隊である必要ないという立場だ。
一方改革派は真に戦える軍隊であってこそ抑止力足り得るという立場だ。
こうして相手の能力に着目した防衛力、真に戦える防衛力を唱えた改革派は戦後体制派から睨まれ左遷されたり地方に飛ばされたりしてきた。
その人事構想の悲劇はいずれ表に出されることになるだろう。
はっきりしていることは第二次安倍晋三政権が後者の改革派と目される防衛省の官僚と政府幹部を登用しようとしてきたということだ。
その流れは岸田文雄政権にも受け継がれている。
2022年10月22日、岸田政権が設置した国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議 第2回会合に防衛省が提出した資料「防衛力の抜本的強化には相手の能力に着目した防衛力、真に戦える防衛力」という言葉が明記されていた。
そして相手の能力に着目した防衛力、真に戦える防衛力を持つべく岸田政権は新たな国家安全保障戦略を打ち出したのだ。
その政治的決断を高く評価すべきであろう。

内閣官房のウェブサイトにあります「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」のページになります。

ただし今回の防衛費増額に際して増税を打ち出した点については私は反対だ。
2022年11月9日、国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議の第三回会合が開催され、これまでの議論をまとめた結果、防衛費の大幅増額のために増税が必要であることで意見が一致したことを明らかにした。
この第三回会合で財務省も長期にわたる防衛費増額のためには恒久的な財源確保が必要であり、国を守るのは国全体の課題であるので防衛費の増額には幅広い税目による国民負担が必要とする文書を提出した。
この議論を受けて岸田総理も防衛増税を打ち出した。
確かに今後最低でも10年以上防衛費増額を続ける必要があり、そのための財源を確保しなければならない。
ただしその財源確保がなぜ新たな増税になるのか。
大事なのは税収増であって増税ではないはずだ。

バブルの崩壊以降、日本はデフレが続き税収も低迷した。
しかし第二次安倍政権が大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3つを柱とするアベノミクスを始めるや、日本は再び経済成長を始めた。
中でも景気回復において効果があったとされるのが日本銀行による大胆な金融緩和でリフレ政策とも呼ばれる。
実際にこのリフレ政策の導入によって、日本は再び経済成長を始め税収も増えていく。

民主党政権であった2011年度の一般会計税収は42.8兆円、所得税13.5、法人税9.4、消費税10.2だったが、第二次安倍政権になると税収も急増し、18年度には60.4兆円、所得税19.9、法人税12.3、消費税17.7になった。
そして2022年度の税収総額は68兆3,590億円、所得税20.4、法人税13.3、消費税21.6と3年連続で過去最大を更新する見通しだ。
要は日本銀行による金融緩和を続けて設備投資を促していけば、景気は上向き税収はおのずと増えていく。
現にこの10年で税収は43兆円から68兆円と実に25兆円も増えている。
防衛費をGDP費2%に倍増するために必要な追加予算は毎年約5兆円。
このまま景気回復を続ければ余裕で計上できる数字なのだ。
防衛費増額のために新たな増税が必要だと主張する人は、アベノミクス以後のこの10年間の急激な税収増の現実が全く見えていない。
繰り返すが、重要なのは税収増であって増税ではないはずだ。
しかもこの財源について、財政の観点から新たな提案も出されている。
自民党の萩生田光一政調会長も2022年12月11日、訪問中の台湾での講演で歳出改革のほか、場合によっては国債償還の60年ルールを見直して償還費をまわすことも検討に値すると述べた。
この国債償還ルールの見直しについては月刊正論2023年1月号に掲載された会田卓司「新しい財政規律で積極財政へ転換を」が参考になる。
会田氏はこの論考の中で極めて重要なことをこう指摘している。
日本の国の一般会計の歳出では過去の借金への対処である国債費が利払費と償還ルールによる債務償還費を含め22.6%を占め、歳出構造が硬直化し財政債権は急務であると言われる。日本の年間予算の歳出を見ると、例えば2022年度だと割合の大きな順で言えば社会保障費33.7%、国債費22.6%、その他23.9%、地方交付税交付金等地方自治体の予算不足の補填14.8%、防衛費5%となる。
要は国債費が国の財政を圧迫している構図だ。

財務省のウェブサイトを見てみます。
一般会計歳出のグラフがあります。
ここで債務償還費というのが円の左上にありまして、これが15.4%あるということです。

ところが米国の歳出では国債費に利払い費だけが計上され、日本のような債務償還費は計上されず国債費は歳出の6.8%しかないのだ。
日本は発行した国債は60年で現金償還しなければいけないという、恒常的に債務を減らす減債制度を持っているため、アメリカと異なり債務償還費を計上しているのだ。
だがグローバルスタンダードでは国債の発行による支出は民間の資産の増加となるため、景気加熱の抑制の必要がない限り発行された国債は事実上、永続的に借り返されていくため、歳出には債務償還費は計上されない。
国債の60年償還ルールはグローバルスタンダードでは異常な財政運営なのだ。

萩生田政調会長はグローバルスタンダードに基づいて国債の60年償還ルールを見直し、国債償還費を計上するのをやめようと提案したわけだ。
そうすれば増税などしなくとも歳出は16兆円程度減ることになり、防衛費を倍増して6兆円程度増やしても10兆円近く歳出は減ることになる。

財務省が熱望している財政再建も一気に進むことになる。
逆に言えば国際標準の歳出案を作ってこなかったため、日本は毎年16兆円近く財政を出し惜しみしてきたということでもある。
現状のまま財政政策が過小であればデフレ構図不況から脱却できず、良質な職が増やせず、将来に向けた投資も拡大できないと会田氏も警告する。

よって防衛予算を国債標準のGDP費2%に増やす際に、国の予算もまた国際標準を踏まえたものへと改善することが望もしい。
国の財政政策を国際標準にすれば、防衛費を増やすだけでなく、思い切った減税を実行し国内消費をさらに刺激することも可能だ。
仮に台湾や朝鮮半島で紛争が起こり日本もそれに巻き込まれる事態になれば国民経済は深刻なダメージを受けることになろう。
よって第二次安倍政権が始めた大規模金融緩和を継続するとともに、減税に踏み切るなどして何としても今のうちに景気を回復し、少しでも国民が経済的余力を持てるようにしておくべきなのだ。
国民に経済的余力があってこそ紛争などに耐えることもできる。
ウクライナ戦争でも明らかなように自由と独立を守る戦いは軍人だけが担っているわけではない。
電気・水道・通信を含むインフラの維持をはじめとする15の支えがあってこそ成り立つのだ。

明治の指導者は富国強兵を訴えたが、それに倣って私は富民厚防、民を富ませもって防衛を厚くすることを主張している。
安定した経済成長のもとで国民が豊かさを享受するようになってこそ、長期にわたる防衛力強化も実現できるのだ。
防衛費を増やすためには増税もやむ無しなどという愛国心をくすぐる増税論には騙されないようにしたいものだ。

令和6年12月16日 江崎道朗

今後もこちらの本の内容の紹介を適宜させていただこうと思います。
改めて少し読み進めているところなんですけれども、やっぱり自民党の政策を私も理解しなければいけないなというところで、改めてそういうことを痛感したところです。

ということで岸田総理、改めまして3年間どうもお疲れ様でした。
しっかりとされることはされていますし、やっぱり江崎さんもこちらで言われているように、防衛増税はやるべきではないだろうということです。

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