安寿

ソフトバンクホークスとわんこと美味しいものが大好きな、心霊体質なひとです。小説(実話と…

安寿

ソフトバンクホークスとわんこと美味しいものが大好きな、心霊体質なひとです。小説(実話と思っています)を書いているので、お盆にいとこ達と怪談話を聞いているノリで楽しく読んで頂けると嬉しいです。

最近の記事

「あったること物語」 8   不動明王

不動明王 うちの母が、こんな話もしてくれました。 亡くなった育ての母、おとら婆ぁさは 不動明王様を信仰していたそうです。 『お不動さん』の愛称でも親しまれているのですが、背中に燃えさかる炎を背負った、怖い顔をした神さまです。 お願い事を聞いてくれる神様だけれど、真っ当な心根で修行を続けないと、罰をお与えになることもあるという 強い神さまなのだと、母はおとら婆ぁさに教わったといいます。 日本各地の修行場や、滝の水を浴びて行をする滝壺などに、不動明王の尊像が祀られているの

    • 「あったること物語」 7   おとら婆ぁさ

      おとら婆ぁさ 母の話では、彼女の伯母であり、育ての母でもあった人の名は とら。 おとら婆ぁさ と呼ばれていたそうです。 私の産まれる数ヶ月前に亡くなったそうで、会ったことはありません。 おとら婆ぁさは、がたいの大きな人でした。 女性にしては骨太く、背も高くて、いつもそれを気にしていたそうです。身を縮めるように 腰低く人に接する、穏やかな方だったそうです。 けれど、芯は強く とても霊感の強い人であったと聞いています。 「今日は、頬に 切り傷のある人が来るよ。」 彼

      • 「あったること物語」 6   うまれかわり

        うまれかわり 幼稚園へ通い出して、一年が過ぎようとするころです。 その頃から、母が 妙なことを口走るようになりました。 「安寿は、あたしのお母さんの生まれ変わり。」 目を細めてこちらを見るけれど、彼女は私を見ていません。誰かほかの人を探しているようです。 母は編み物や 裁縫が得意でした。 狭い茶の間に春の花畑のような彩りの縫い糸が散らばる。そんな、私と二人だけになる静かな時間に始まる、秘密のはなしなのでした。 「あたしが子供の頃、あんまり上手に浴衣を縫ったから、着

        • 「あったること物語」 5  ひとだま

          ひとだま おしょうろうさんをみんなで見送った日の夜でした。 明日は、私たち家族も 家に戻らなくてはなりません。 次に いとこ達と会えるのはお正月。心の端っこを、少し つねられるような寂しさがあります。 夕食をすませると、土間の台所で 女の人たちがお椀やお皿の洗い物をしていました。水の匂いと、お客さん用の、薄く上等な磁器のお茶碗のかちゃかちゃ言う音が心地よいです。 私も母の側にいて、古いかまどや、タイル張りの大きな流し場。古くさいにおいのする漬け物樽など、珍しいものがた

        「あったること物語」 8   不動明王

          「あったること物語」 4 おむかえび、おくりび

          おむかえび、おくりび お盆にまつわるお話を もうひとつふたつ、お話ししましょう。 母の実家は、ご先祖のお墓を集落の中心に置くという村にありました。 普通は 人家から離れた山の中や、お寺さんに あるものですが、母の土地は、村の真ん中にお墓が集まっていて、お墓周りの手入れや掃除、お参りが すぐに出来るようになっていました。 そんな集落の 家々の庭先には、季節の花が咲きほころび、お墓や仏壇にいつでも備えられるようになっていたのです。 ぴーーーーーーー、ぶぅ、ぴぃ、ぷぅ。

          「あったること物語」 4 おむかえび、おくりび

          「あったること物語」 3 おしょうろさん

          おしょうろさん 夏がぎらぎら暑くなっていくと、毎年 母の実家へ行くことになっていました。 この日のためにデパートで買った よそ行きの服を着せられ、田舎から田舎へ。一時間の車の旅です。 お祖母ちゃんや叔母さんがこしらえてくれる ご馳走や、いとこ達と遊べるのを いつも楽しみにしていました。けれど、本当の目的は お墓や お仏壇にお参りすることだったそうです。 お盆と言う行事です。 お祖母ちゃんちの お仏壇は、我が家の金色のと違って、光沢のある茶色一色の仏壇でした。 「お祖

          「あったること物語」 3 おしょうろさん

          「あったること物語」 2 森のともだち

           森のともだち なんとか我慢して毎日 幼稚園に通いつめると、季節が変わるころ、私にも友達ができました。 理論的な男の子のソウちゃんと、活発で優しい女の子のキヨカちゃんです。 家の近かった私たちは、道草をしながら よく一緒に帰りました。 三人でおしゃべりしたり、花を摘んだりして帰ると、離れるのがさみしくなって、ソウちゃんは自分の家を通り過ぎてもついてきたし、私も、一番遠くに住んでいるキヨカちゃんの家の近くまでついていったものです。 「幼稚園バッグ置いたらさ、今日は 誰の

          「あったること物語」 2 森のともだち

          「あったること物語」 1 ドレスを着た人

           おかえり  よう来んさったね  さぁ みんな  ここにおいで  お話をしてあげる  本当に あったることと思って  聞いてちょうだいね ドレスを着た人 ドレス姿と言ったら、どんな様子を思い浮かべますか? きらめく宝石、羽衣のような軽いヴェール。 華奢なフリルに、金糸銀糸に彩られた裾まで長く引く絹のローブ。 童話や映像世界で、お姫様が身にまとっているものです。 けれど、幼い頃、私が生まれて初めて見たドレス姿とはそんなものではありませんでした。 こんにちは、初めまし

          「あったること物語」 1 ドレスを着た人

          自分が見てしまったモノ、体験したコト。

          こんにちは、初めまして。安寿(あんじゅ)と申します。 幽霊や、物の怪などの 小品形式の 怪異譚をご紹介したいと 思います。 私が子供の頃に見たり、 人から聞いたり、 あるいは 本当に体験したこと。 それらをまとめた物語です。 大きくて古い 茅葺き屋根の 祖母の家。 毎夏、お盆に そこに親戚たちが集まると 「ねぇ、怖いお話ししてよ!」 と、誰かが必ず おねだりをしたものです。 すると話し上手な者が、目を 爛々と光らせながら、 「これは、本当にあったお話だよ……。」

          自分が見てしまったモノ、体験したコト。