0メートルの旅。
岡田悠さんが書いた旅の本『0メートルの旅』。
友人である今野さんが編集をしたんだけど、世界中が旅を自粛している現在、なぜ旅の本を出すのかと聞いてみた。最初は旅行記としての出発だったようだけど、この状況下ではただ旅行の本を出してもしょうがないだろうと思って方向転換をしたそうだ。
旅は0メートルの移動距離でも成立する。
まさに怪我の功名というのか、今でしかできあがらない特別なスタンスの本になった。旅の本質をとてもよく表しているとも感じる。
Twitterで「 #0メートルの旅 」というタグを作ると、たくさんの人が自分の旅の思い出をアップしだした。それを読んだ岡田さんは、あとでそこからヒントを得た文章をまとめた記事を書こうとしているという。
よく「バズる」とか販促とか言うが、結果を想定したものは貧しいものになりがちだ。面白くて意義があるトピックは勝手に広まる。俺はその基準をヒューマニズムだと思っていて、それはマーケティングとは一線を画す。
今野さんは「ひとりひとりの顔が見えるバズ」と言っていた。何もかも数字で判断するのではなく、そこに込められたヒューマニズムにこそ注目して欲しい。「中の人」という存在が共感を生んだのも、企業の宣伝だけではなく、同じ生きている人間としての息づかいが伝わったからだろう。
旅には正解がなく、必ず破綻がある。しかし計画通りに行かなかったこともあとで楽しめるのが不思議だ。それは人間の不可解な部分で、矛盾や破綻を愛する気持ちは科学では説明できない。
だから、ナッジだのハックだのばかり言って、他人の行動を正確に制御できると思っているパソコンオタクみたいな人の幼稚な話を聞くとウンザリする。プログラム屋さんとしてはそれで優秀なのかもしれないけど、人間はそんなに単純なコードじゃ動かない。
山田詠美さんっぽく言うと「だからあんたはモテないんだよ」ということになろう。