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フジテレビ新社長・清水賢治とは何者なのか?フジテレビはどうなる?

2025年1月28日、フジテレビの経営陣による記者会見で港浩一氏に変わる形で清水賢治氏が代表取締役社長に就任することが発表されました。

一般的に、放送局の社長にはディレクターや経営企画出身、または外部登用で就任することが多いようです。一方で清水賢治氏はフジテレビでアニメプロデューサーとしてキャリアを築いてきた経緯があります。

アニメプロデューサーとは

アニメ制作におけるプロデューサーには、制作プロデューサーと製作プロデューサーの2種類があります。

制作プロデューサーは、アニメスタジオに所属するプロデューサーで、制作現場のスタッフや監督と連携して、作品の制作状況や品質の管理を行います。
一方の製作プロデューサーは、製作委員会に参加する企業から選ばれるプロデューサーのことで、制作そのものに直接関与する機会は少なく、基本的には脚本、設定、資金調達などのプリプロダクションの段階での業務が中心となります。

フジテレビは、自分たちでアニメを作ることがありませんので、清水賢治氏が務めてきたアニメプロデューサーは、基本的には製作プロデューサーのことです。

フジテレビ新社長・清水賢治氏の経歴

清水新社長は1983年に慶應義塾大学法学部を卒業したあと、フジテレビに入社し、主に編成部でキャリアを積み重ねていきます。

スカパー!向けのコンテンツ開発を行うスカパー・ウェルシンクでの取締役を経験し、2014年にフジテレビジョンの執行役員に、2019年より取締役となり、そして2025年にフジテレビジョンの社長に就任します。

清水新社長担当のアニメ作品

清水新社長が企画・プロデュース等を担当した作品としては、以下が挙げられます。

  • キテレツ大百科

  • ゲゲゲの鬼太郎

  • ちびまる子ちゃん

  • こち亀

  • 幽☆遊☆白書

  • HUNTER×HUNTER

  • すべてがFになる

  • ドラゴンボール(GTも!)

  • Dr.スランプ アラレちゃん

  • 心が叫びたがってるんだ。

  • 夜は短し歩けよ乙女

  • 夜明け告げるルーのうた

こうして見ると、超名作アニメをいくつも手掛けてきたことがよくわかります。

一般的に放送局におけるアニメプロデューサーは、ドラマやバラエティに比べて権限が少なく、特に1990年代終わり頃から普及した製作委員会方式では、複数の企業との交渉が必要なので、高度な調整能力が求められます。

その点で言えば清水新社長は『ドラゴンボール』や『HUNTER×HUNTER』のような人気作品だけでなく、『心が叫びたがってるんだ。』や『夜明け告げるルーのうた』などのアニメ映画まで経験があることから、敏腕アニメプロデューサーであることがわかります。

個人的には『夜は短し歩けよ乙女』や『すべてがFになる』などのノイタミナ作品を手掛けているのが印象的で、清水新社長になってから、アニメ事業が超強化されるのではないかと期待しています。

清水新社長の評判

ネット上の意見を見る限り、全体として悪い意見は少なく、「どちらかと言えば割と期待できる人事」というように思えます。

それよりも問題なのは、未だに日枝氏がフジサンケイグループの事実上のトップにいることだと思われます。フジテレビが本当の意味で復活するには、既に現代的な経営者とは言えない日枝氏を経営層から追い出すことが絶対条件で、この条件をクリアできない限り、どれだけ優秀な人材を経営層に置いても意味がないように思えます。

フジテレビはどうなる!?

さて、ここからはフジテレビの未来について私見多めに解説します。

以前、フジテレビについて以下の記事を執筆しました。

この記事で述べたフジテレビが復活するための施策は、主に以下の3つです。

経営層の解体:日枝久代表を含めた経営層の解体が絶対条件→今のところ、日枝氏以外はほぼ入れ替わっている
サンケイビルの売却:フジテレビの利益の3分の2を占めるサンケイビルを売却して、放送ビジネスに投資するためのキャッシュを作る
アニメ事業を強化:現在、波に乗っているアニメ事業にリソースを投下する。フジテレビはプロデュース能力が高く、特にノイタミナからは『PSYCHO-PASS』などの新作を製作することに成功している。フジテレビ発IPを作り出すことも難しくない

ネット上のいくつかの意見で「フジテレビは利益を稼げている不動産事業に注力すべきだ!」というものを見かけますが、これは数字を盲信し過ぎていると思います。やはりフジテレビの強みは、TV放送が持つリーチ力です。インターネットにお株を奪われているとは言え、テレビの影響力は非常に強く、他の企業が真似することもできません。だから確実にキャッシュが得られるサンケイビルを売却して、現在のテレビが持つリーチ力を活かしながら、新たな企業として生まれ変わる方が、大きなポテンシャルがあります。

この記事の中で私は、U-NEXTをロールモデルにするのがいいのではないかと考えていました。U-NEXTは、コンテンツ配信を中心にしながらも、通信や電力などのインフラ事業にも着手しています。インフラ事業は資金力さえあれば安定して稼げる事業なので、ここにフジテレビが参入するのも悪くないと思います。

そして清水賢治氏が新社長になったことで、より「アニメ事業」に期待できるようになりました。そうなってくると、私が思うに、アニメスタジオを買収しまくっている東宝をロールモデルにするのがいいと思います。現在、東宝はその資金力を活かして、各アニメスタジオ及び海外配給会社の買収を進めており、三大配給会社の中でも最もアニメ事業に力を入れています。
まだあまり注目されていませんが、2026年に『攻殻機動隊』が放送されます。そしてこれを制作するのは、現在『ダンダダン』で注目を集めているサイエンスSARUで、このスタジオは東宝の完全子会社です。

このように、資金力とリーチ力を活かして、アニメスタジオやIPを積極的に確保していけば、かなりいい企業になるのではないでしょうか。現時点で時価総額ではフジテレビより東宝の方が上にありますが、フジテレビにはテレビのリーチ力と150万人の会員を抱えるFODがあります。FODとテレビを中心媒体にしながら、コンテンツ確保に務めることで、長期的に大きな成長が見込める企業になるのではないでしょうか?

これには相当の調整能力が求められますが、数多くの名作アニメを”調整”してきた清水新社長なら、割と期待できるのではないかと思います。

さいごに

アニメ業界において放送局の存在は非常に大きく、フジテレビの動向も要注目です。個人的な意見で言えば、フジテレビはキー局の中でポテンシャルの高い企業だと思います。プロデュース能力が高いためです。

実際、独自のアニメ枠ブランドを成立することができているのも『ノイタミナ』を抱えているフジテレビだけだと思います。

もう既に、放送ビジネスで世界を狙うのは難しいと思いますが、アニメの波に乗ることができれば、海外展開も十分に可能性があります。清水新社長の経営手腕に要注目です。


Written by 星島てる
公式X:@anitabi_news

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