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アニメーターの低賃金を解決する方法⑥: NFT

※この記事を読んでいる方は、クリエイターエコノミーについて一定の知見があると見てますので、NFTをゼロから解説するのは避けます。

以前、私が購読している中島聡(Windows95の開発リーダー)のメルマガで、こんなQ&Aがありました。

【質問】
22歳男性です。僕はアニメが好きなのですが、現在はアニメーターの給与はどのようにすれば上がるのかという課題について考えています。そこで、その一つの可能性としてNFTが挙げられると思います。

僕は技術に詳しくないのですが、例えばアニメの中の1カットのNFTを作成することは可能なように思えます。また、1カットに対するNFTのロイヤリティを一定の割合で複数人(監督・原画マンなど)に分配することを、ひとまず仕組みとして作ることは可能な気がします。中島さん目線で、アニメーションの1カットに対してNFTを自動生成する仕組みを構築することは可能だと思いますか。また、もし構築するとなった時に考えられる課題を教えていただけると助かります。

【回答】
とても良いアイデアだと思います。アニメーション1カットごとにNFTを発行するのはそれほど難しくなく、同時に、その売上を制作に関係した人たちに自動的に分配する仕組みを作るのも簡単です。

2時間のアニメを1秒あたり24コマで作ったとすると、約3,000枚なので、それを一枚あたり1万円で売ったとして高々3,000万円なので、それだけで作品を作るのは無理です。

しかし、「実質時給200円」とも言われる低賃金で働くアニメーターにとって、1コマ1万円はとても魅力的な金額なので、流通コストが不要なことを利用して、彼らへのインセンティブ・ボーナスとして渡すのは悪くないと思います。

つまり、アニメの制作費(アニメーターの人件費も含めて)、売上に関しては、これまで通りのビジネスモデルで行い、アニメーターに対するボーナスとして、全てのコマをNFT化してオークション形式で販売し、売上の大部分(例えば80%)を彼らに直接渡すのは悪くないアイデアだと思います。

NFTを魅力的にするために、NFTを持っている人だけが、フル解像度のセル画像やそのコマを含むシーンを閲覧できるなどの仕組みを提供すると良いと思います。

『週刊Life is beautiful 2023年2月21日号』より引用

つまり、原画マンや動画マンが作成した「画」をNFTにすることで、それをアニメーターの収入に繋げようというアイデアです。

このQ&Aにもある通り、NFTだけでアニメ制作の費用を賄うのは難しいです。 でも、アニメの収入を改善する分には、非常に有効な手段だと考えられます。

ここで具体的に要件を設定してみましょう。

まず、駆け出しの動画マンであれば、月に300枚の動画を作成できます。それを1枚1万円で販売することができれば、300万円の売り上げで、それからNFTの売買手数料がストック収入となります。
もちろん、この300万円の全てが動画マンに入るわけではありません。動画1枚を作成するには、まず原画があって、それから監督・演出・作画監督などの修正が入ります。シチュエーションや制作体制にもよりますが、動画1枚の分配率は「動画45%・原画25%・監督10%・演出5%・作画監督15%」というのはどうでしょう。これであれば、仮に動画300枚のうち、100枚しか売れなくても、動画マンには「1万円×100枚×45%」で45万円の収入です。

そしてNFTの仕組み上、そのNFTの品質とブランドが良いほど、価値が上がります。つまり、アニメーターとしての腕が上達し、知名度が上がれば上がるほど価値が上がるので、これがアニメーターのインセンティブに繋がります。そのうえ、役職が上がれば上がるほど、携わるNFTの数が増えていき、それが複利のように増えていくのです。

ただし、NFTには文化的な側面で懸念点がいくつかあります。このような記事を書いた以上、NFTの懸念点を解説しないわけにはいきません。

次回に続きます。


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