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アニメーターの個人戦略⑤:アートアニメーションの世界に入る

アニメーターの個人戦略として、アートアニメーションの世界に入ることが挙げられます。

そもそもアートアニメーションとは一体なんなのでしょうか。アートアニメーションは、簡単に言えば「芸術性の高いアニメーション作品」なのですが、芸術の「未来や社会を人間が知覚できる形にする」という機能性を考えると、アートアニメーションは、アニメーションの未来を表していると私は考えます。

そのため、アートアニメーションでは実に様々な技法を用いて映像を表現するのですが、その技法そのものが作品であり芸術です。例えば、東映アニメーションを中心にセルルック3DCGが進化している現代の日本アニメで、あえて手描きアニメでしかできない映像表現を狙いにいくのは、大きなメッセージ性を感じます。

アートアニメーションでは、より先進的な表現にチャレンジし、その表現が5年後なのか10年後なのかわかりませんが、一般的なアニメ作品にも持ち込まれるようになります。

つまり、アニメーターがアートアニメーションの世界に入ることで、アニメ制作の未来に迫ることができるようになります。

アニメ制作会社の中でも様々な技法にチャレンジするサイエンスSARUという制作会社では、実際にFlashを中心としたアニメ映画『夜明け告げるルーの歌』を制作し、それがアートアニメーションの最高峰の映画祭であるアヌシー国際アニメーションのクリスタル賞を受賞しました。サイエンスSARUは、現代のアニメ業界の理不尽さに対して真っ向から向き合っており、その答えの1つとして、全体として工数を削減できるFlashアニメを採用し、手描きアニメと同等以上の作品を作ることに成功したのです。

日本のアニメファンは、謎の3DCG批判やFlashに対する偏見がありますが、そんな批判がとんでくることもないマニアックな世界がアートアニメーションです。

グッズビジネスのためにキャラクターデザインを安定させることを第一にする一般的なアニメ業界か、映像表現の可能性を追求するアートアニメーションか。どちらに身を置くかで、キャリアが大きく左右されるのではないかと感じます。

次回に続きます。


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