アニメ業界が生成AIを反対する理由
アニメーターの未来について解説する上で、絶対に避けられないのが「生成AI」との向き合い方です。
一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)による「アニメ業界とAI(人工知能技術)に関する意識調査」によると、アニメ業界従事者の約7割が生成AIを規制すべきと回答しています。
具体的な事例を見ると「有名人か一般人かを問わず、特定の個人の声になれるボイスチェンジャー技術」については約81%が「規制すべき」と回答。
また「『AI利用禁止』と明記しているデータでも機械学習に利用する行為」については約87%が「規制すべき」と回答しました。
その理由について聞いてみると「著作権」や「使用許諾」に関するコメントが多かったとのこと。
一般的に生成AIでは大量のデータを読み込む必要があり、現状として、その学習データの大半が「使用許諾を取っていない」とのことで、多くのクリエイターが生成AIの「権利侵害」を批判しているのです。
おそらく、これが「アニメ業界が生成AIを反対する理由」として、もっとも大きい理由だと考えられます。
一方で、実態を見ていくと、私はやはり「雇用を守ること」が理由として大きいように見えてしまうのです。
アニメ業界関連者の多くの方々が言うように、現状の生成AIは、アニメ制作においてほとんど役に立ちません。たしかに、個人やインディーズでアニメを制作する分には十分ですが、商業アニメーションではまだまだ課題があります。百歩譲っても「背景のAI加工」ぐらいが関の山ではないでしょうか。
であれば、別に規制する必要はないはずです。「権利侵害」や「使用許諾」に関しては、既にYouTubeの切り抜きやSNS上の無断転載は日常茶飯事です。それでもアニメ業界がスルーしていたのは、切り抜きや無断転載が自社事業に直接的な悪影響を及ぼすことがなかったからでしょう。
では、なぜ「生成AI」に関しては、これほどまで声が大きくなっているのでしょうか。それは「雇用が失われる可能性」が現実的になってきたからだと、私は考えます。
新しい技術や媒体が登場するたびに、多くのアーティストやクリエイターは当初は反対してきました。例えば、レコードが登場したときは演奏者が、違法データが出回ったときはレコード会社やアーティストが反対運動を起こしたものです。しかし結局、レコードは普及して多くの人は演奏会やライブに行かなくなり、ストリーミングによって格安で音楽を聴くように、時代は変化していきました。
そしてそのとき、いつも必ず先駆者がいて、自分たちの作品をフリーに公開することで、新しいビジネスモデルを確立してきた歴史があります。
私が思うに「生成AI」も、レコードやストリーミングと同じような歴史を歩みます。つまり、ほぼ必ず「生成AI」を駆使し、自分の作品をフリーに公開することに躊躇いを持たないクリエイターが登場するのではないでしょうか。そしてNFT、物販、広告、サブスクモデルなどのビジネスを自分の手で作るのではないでしょうか。
結局のところ、デジタル媒体の動画やイラストは所詮「データ」で、原価はほぼゼロなのです。であれば、自分のイラストデータやオーディオデータを無料でばら撒き、生成AIにも喜んでデータを提供するクリエイターが登場しても全くおかしくないでしょう。
今回のクラウドファンディングプロジェクトでは、生成AIとの向き合い方についても取材していきます。ぜひご支援のほど、よろしくお願いします。
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