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魔女の宅急便@ほぼ全画面分析~その3

前回分はこちらです。


あらためまして。
「アニメてにをは」です。
「アニメてにをは」とは、アニメの基本的な技法や宮崎駿が得意とするアニメ表現をさぐっていく私の営みです。
今回は一度徹底させて、作品まるごと一本分析してみようという無茶な企画です。
最後までお付き合いくだされば。


【43】土砂降りの雨の宿りになった列車は、キキの眠っている間に運行を始めました。
外の街灯の明かりでしょうか、列車の進行に沿ってキキの額を光の帯がなでていきます。
明暗の色分け。細かい描写。こんなアニメの表現力、めったにない。


【44】夜が明けての、疾走する列車。「その2」で使ったカットですが、作品中の時間経過をはっきりさせておくため、再掲しますね。
「全セル」ですね。車体、車輪、線路、枕木、線路沿いの緑。全部セル。特有の躍動した感じがたまりませんね。


【45】朝になっていて、列車は新しい街へ向かって走っています。
ここのシーンはセルと背景がどう「噛み合って」立体性を表現しているか注目すると面白いかもしれません。
この画面は標準的なセルと背景の組み合わせ。


【46】さて、【45】の画面と比較して、どうですか?
キキ、列車、線路、まわりの緑。
全部がセル画で表現されています。
背景美術では難しい「奥方向へと移動する遠近感」をどうしても表現したくてこういう表現になったのでしょうね。


【47】同じく前景が動くセル画になっていて(木立ちや家)、背後の方に背景で描かれた風景がひろがります。
空間が「3層」で・立体的に構成されているのがわかります。
①列車が前方
②木々が中間
③海と町が奥。
空間を3層にわけて運動の立体性を出しています。
宮崎アニメの際立った特徴です。


【48】海の発見に小躍りしているキキに対しクールぶるジジ。
その瞬間、列車のそばを樹々が通過して、ジジや列車に葉叢の影と日向が交錯します。
すごいこだわりの表現だなあ。


【49】細かいですが、通過していく葉叢の連なりが3コマ打ちでなく2コマ?それともフルアニメ(1コマ)になっているのでしょうか?ざわざわと動きの質感が違うので目を引きます。


【50】さてここで序盤が終わり、住みつく街へ旅立つ「起承転結」の「承」が始まるところですね。
橋を支える柱がアクセントになって動きと立体感を演出しています。


【51】列車から飛び立ったキキとジジ。
錐もみに揉まれたかのように回転して飛び立ちます。
宮崎アニメの「飛ぶ」とは、単純な快感原則でなく、つねに「飛べない・かもしれない」という「不安感・緊張感」と境を接しているのです。


【52】回転して不安定に飛び立ったキキは、さっきまでいた貨車を見送っています。
視点は地べたから一気に高みから。
「視点の自在さ」も、視る愉悦になっていますね。


【53】さきほどの【52】の瞬間より、カメラ視点に寄ってきています。宮崎アニメが「奥行きの立体感」を出すのに長けているのは、この「斜め奥」という視点と遠近法の組み合わせによるところが大きいはずです。
それにしてもこの瞬間の絵、ちょっと造形が崩れている(作監さんが直しきれてない)のもご愛嬌。

横顔のプロポーションのくずれが分かりにくいとのご指摘いただきましたので、四枚の連続する動きを追って、くずれが直っていくのをご覧ください。

【54】キキと街との対面。
見事に安定感ある「3層構造」ですね。
手前~キキ
中間~海とカモメ
奥~街。
そして視点方向は定番の「斜め奥」。


【55】新天地へと向かうキキたちをカモメが迎えてくれる「3層構造」。
キキの「手前」と「奥」を、カモメたちが「はさんで」います。
カモメたちが飛び交うことで、これも立体表現になっています。



【56】今度の視点はキキの頭部を舐める形で「3層構造の立体性」。
手前~キキ
中間~カモメ
奥~船と海。



【57】この海上から、街の島へとわたるシークエンスは「複数の動き」が「3層を構成」して「立体性を形成する」という画面構成を多用していますね。
新天地を発見したキキの心のドキドキが、画面表現の躍動感で観客にも伝えようとしたのでしょうか?


ここらへんで、「その4」へと項をあらためさせていただきます。


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