『となりのトトロ』と水の表現を考える~アニメてにをはの基礎講座
今晩は金曜ロードショーで宮崎駿作品『となりのトトロ』が放映ですね。 独自な着眼点でアニメを見る【アニメてにをは】な視点で、ちょっとだけ予習しましょう。
今回はすごいトリビアル。
宮崎アニメと『水の表現』についてです。
とりあげるのは序盤の引っ越しの夜。家族そろってお風呂に入っています。 注目すべきは人物の水に浸かっている部分。
波打って、腕やからだがゆらゆらしてますね。
拡大してみましょう。メイちゃんの腕がぐにゃぐにゃ~ってなってますね。 これ、宮崎アニメでは珍しい『メタモルフォーゼ』型アニメです。
メタモルフォーゼ型のアニメとはもっとわかりやすいのは『ぽんぽこ』。
狸たちが化けて、お地蔵さんに変化するのですね。
図解すると、こういう感じ。
Aという形からBという形へ変化する。
これがメタモルフォーゼ型アニメ。
専門家によると『原形質性』のアニメとか呼んでいます。
簡単に言えばぐにゃぐにゃと形が変わるアニメを指します。
宮崎さんのアニメでは、意外とメタモルフォーゼしないんですよね。
唯一例外が【水の表現】。
下図は『カリオストロの城』。
水路から城へ潜入して顔を出すルパン。水に揺れでぐにゃぐにゃしてますね。
そこへ勘のいい銭形警部が。
緊迫したシーンのはずなのに、【水の表現】がとてもユーモラスなアクセントを加えてますね。
だから水の表現がふんだんに使われた『ポニョ』って、基本的に『メタモルフォーゼ型アニメ』なんですね。
下図は秘密の黄金の水に吸い込まれるポニョ。
そして黄金の間=【水の空間】で『たゆたう・ぐにゃぐにゃする・メタモルフォーゼする』ポニョ。
これまであんまりやってこなかったメタモルフォーゼ型アニメを、『ポニョ』の場合、宮崎駿さんはぐにゃぐにゃを解禁しちゃったんでしょうね。
下図でポニョが宗助に再会したとき、こんな【変身=メタモルフォーゼ】までしちゃうんです。
宮崎アニメを見慣れていたファンには、実のところ、ちょっとびっくりな表現なのですね。
でも基本的には形がぐにゃぐにゃする表現は【水の表現】に特化していますね。
宮崎さんとしては、メタモルフォーゼを乱発したくないんでしょうね。
そういう意味では、宮崎さんは意外と『抑制した表現の作家』でもあるんですね。
上は『ポニョ』後半の水に浸かった家のシーン。
水面に映るふたりの姿がぐにゃぐにゃと・メタモルフォーゼしていますね。
最後に、再度『トトロ』の入浴場面をみてみましょう。
水面下のからだがぐにゃぐにゃ~としてますね。
これが宮崎さんが『ここぞ』というときに出す【水の表現】なのだと思うと、ちょこっと見え方が変わりませんか?
今回は時間がありませんでしたが、いつか『となりのトトロ』をこんな感じで全カット分析・紹介してみたいですね。
終わりです。
気に入っていただけたら、「スキ」や「フォロー」待ってます!
ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?