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ご挨拶『アニメてにをは』が出来るまで。

『アニメてにをは』のページへようこそ。

この『アニメてにをは」のnoteは、
①アニメの画面分析
②ジブリ時代の回想録(ジブリ私記←いまこの作業が進行中)

の文章を主に発表していく趣旨でやっています。


★1.アニメの画面分析とは?

アニメを、具体的な画面にしたがって分析していきます。
たとえば、こんな感じです。

何か不思議な分析だなあ?と思うかも知れません。

わたしの分析の特徴は

①ストーリーやテーマは論じない
②音声を消して画面を見たときに初めて「視えて」くること

そういう特徴があると思います。

ひと言で言えば、

『アニメの《表現》だけを見る』

そう言えるかと思います。

★2.なぜこんな見方が生まれたか?

ひとつはわたしがジブリで働いた経験を活かしているからです。

わたしは『もののけ姫』と『ホーホケキョ となりの山田くん』で演出助手として働いていました。

演出助手とは、ざっくり言ってアニメ映画での《助監督》のようなものです。
作画・美術・仕上げなどから上がってくる素材の基本的チェックを行い、最終的にすべての素材をまとめて撮影にまわす役割を果たしていました。

ですから、演出助手とは、総合的にアニメーションのことを覚えることが出来る部署であり、演出・監督志望のスタッフがとおる部署でもあったりもします。

そういうわけでわたしも先の2作品を通じてアニメの基本を比較的短時間に把握できるようになりました。

★3.ふたつの大きな仕事

演出助手のなかでも、現在のアニメ画面分析~『アニメの・てにをは』を駆使できるようになった仕事として、2つあります。

①セル検

セル画検査のことです。一枚、一枚のセル画の塗り間違いがないか確認する作業です。
2~3秒の1カットに百数十枚のセル画が平気であります。
それらを一枚、一枚検査しました。

仕上げ(セル画をつくる部門)ですでにチェックした素材を、ダブルチェックしました。

制作期間の半分以上をこの作業に費やしていましたので、合計7~8万枚はチェックしました。
仕上げでほぼ全てのミスはクリアしていましたが、数枚のミスを発見しました。

このセル検の膨大な仕事を通じて、一枚一枚の絵に集中して、くまなく・細部にわたって『視る』訓練ができました。

②ラッシュ

ラッシュとは、撮影し終わったフィルムを(ストーリーの順序に関係なく、出来上がった順番に)上映して、各部署スタッフが最終的なチェックをするものです。

ここでミスを見逃すと一般上映でもそのミスのまま上映することになりかねません。
真剣勝負です。
実際、セルの色塗りが見逃され、ゼロ号試写の段階で初めてミスが発覚し、そのまま封切り。ビデオ化されたときにミスの修正がされたケースもあります。

ラッシュで確認するのは、おのおの担当部分です。
作画なら作画、美術なら背景、仕上げならセル画、撮影部なら撮影の出来具合。

わたし=演出助手に特化した部門がありません。
総合的に視なければいけません。
ほかのスタッフの数倍の集中力で、しかも一瞬ですべてを見透かすつもりでラッシュに臨んでいました。

もちろんわたしに出来ることは限られています。
しかし、《音抜きで・ストーリーと関係なく》画面に集中するという特異な経験に習熟することが出来ました。

★4.大学院という道

わたしはジブリを辞めたとき、まだ若かったので、もう一度勉強し直そうと、大学院に進学しました。

進学したのは文学部・日本文学科の大学院でした。
比較的受験としてハードルが低く(外国語や専門知識の面で)、かつ文学や映画、漫画などの《物語メディア》を勉強したいと思い、選びました。

そこでわたしは、様々な分析理論(主に文学的な)を習得していきました。

★5.転機~視えてしまったとき

わたしがアニメの特異な見方~『アニメてにをは』に目覚めたのは、大学院に進学してから数年が経ったときでした。

新しく入学してきた後輩院生が、アニメ研究志望者だったのです。
後輩に頼まれて、彼のはじめてのゼミ発表に参加しました。
後輩の発表内容がどんなものだったか、もう覚えていません。

覚えているのは、後輩が発表の趣旨を説明するために、プロジェクターでアニメ動画を上映した瞬間でした。

ジブリの作品があれこれ上映されました。
わたしはジブリを辞めて以来、特に必要がなかったので、ジブリアニメを観ていませんでした。
だからジブリで働いて以来、ひさしぶりに観るジブリ動画でした。

驚きました。
見え方が全然違う。
ジブリに入社する前と、ジブリで働いて以来では、まるで画面の見え方が違うのでした。

そこからでした。
すべてが始まったのは。

★おわりに

感覚的に・なんとなく見えている『アニメの・視え方』と、大学院で習得していた分析的方法論とを、《接合》させるには、それから十年以上の時間がかかることになります。

長い時間かけて、ようやく五、六種類の『アニメの・てにをは』を発見しました。
これからも、こつこつと数を増やしていきたいと思います。

ちょっと長くなりましたが、こうして『アニメてにをは』が日の目を見た次第です。

これからも少しずつ、その『アニメてにをは』をご紹介していきますので、ご愛読のほど、よろしくお願いします。

てっとりばやく『アニメのてにをは』の全貌を知りたいひとは、ジブリが発行しているフリーペーパー『熱風』の、2021年4月号~2022年3月号に連載してありますので、古書市場で入手してください。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


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