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魔女の宅急便@ほぼ全画面分析~その12
ストーリーやテーマ、キャラクターの心理には言及しない、新しいアニメの分析~『アニメてにをは』です。『アニメの表現』に特化した分析をします。
『魔女の宅急便』のほぼ全画面分析、今回はその12回目です。
前回分(その11)はこちら
【271】パン屋の店番。
ショーケースに映る通行人は『ダブラシ』効果(だけ?)
キキの表情もいいですね。
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【272】これもジブリ飯。このころはまだシンプル。
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『千と千尋の』のやりすぎ感あふれるジブリ飯と比較してみましょうか。
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【273】食事時を忘れて現れたジジに文句を言いつつ、食事をつづけるキキ。
ナイフとフォークの使い方を丁寧に見せていますね。
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もっと省略的にも見せられるはずなのに、大切にこういう仕草を描く。贅沢なアニメ。
【274】ジジがネコの反応・動作しかしないので、ようやくキキは、自分の魔法が効かなくなっているのではと気づき、飛ぼうしてみます。
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この次の箇所がぼくはとても好きなのです。
【275】この飛ぼうとする箇所、みなさんはどうご覧になっていましたか?
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飛べなくなってる?
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いや、少し飛んでいる。浮かんでいるんです。
【276】
ぼくも今回あらためて見直すまでは、『キキは飛べなくなっている』と思っていたんですね。
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でも、『少し』飛べているんです。
『飛べなくなっている』=『飛べない』、じゃないんですね。
【277】ほんとうは、いまも、『少し』飛べているんですよね。
この画面の床に映っているキキの影が、なにより『浮かんでいる』ことを示しています。
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でもキキにとっては『飛べてない』んですよね。
【278】キキを真正面からとらえる、珍しい画角(ショット)。
『飛べてない』自分へのショックが、この角度で絶妙に伝わってきますね。
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【279】あわてて飛べるか、確認するキキ。もう夜です。相当時間が経過しいることがわかりますね。
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でも、よく見ると『少し』飛べてるんですよね。『浮かんでいる』。
でもそれはキキにとっては『飛べてる』うちに入らないんですね。
【280】斜面に『沿って』ズルっとこけるキキ。
ここなどは、背景画の斜面と、その斜面に沿ってずっこけるキキとを表現するため、『作画さんと美術さんの連携』が必要なんですよね。
なにげなく大切な表現。
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【281】物語的には『飛べないショック』に関心が向きがちですが、この斜面をのぼる動作。
【3層構造】ですよね。
①手前=芝生
②中間=見えない斜面
③奥=住宅街
演出的に『飛べないショック』にだけ力点を置いているわけではない。
演出はいたって冷静。
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【282】キキの『飛べないショック』に対して演出が冷静に対応しているのは、ここ。
昇った斜面の先で、道路を車が通過していく。
こんな細部に演出的な注意が向いているってのは、ちょっとすごいことだと思うのですが。
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【283】『浮いている』んですよ。『飛べてる』。
でもキキにとっては『飛べてない』。
この「浮いている」という『飛べるかな?飛べないかな?』の『重力との作用・反作用の拮抗=浮かぶ』は見事な『飛行シーン』。
宮崎アニメでも出色の飛行シーンですね。
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【284】宮崎アニメでの『飛ぶ』って行為は、いつだって『飛べないかもしれない』という緊張感と背中合わせにあるんですよね。
だからこそ、宮崎アニメの飛行シーンは落下運動と共に語られる。
でもこのシーンは特別。
『飛べてるのに・飛べてない』そういう特異な印象を与えている。
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【285】飛べてるのに、飛べてないと見えてしまう。
宮崎アニメにでも稀有な『飛べてる?/飛べてない?』のシーン。
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【286】斜面で転んでホウキを折ってしまうキキ。
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『浮かんでいる』のに『飛べてない』と思ってしまう=『魔法』は決して『なくなっていない』、はずなのに、絶望的になってしまう。
【287】キキにとって絶望的な心境を、晴れ晴れとしたシチュエーション=物干しで語らせる。
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【288】ここの物語の展開は見事ですよね。
キキの絶望的状況を語らせている横へ、【新しい運動体】としてオソノさんの旦那さんが庭に現れて、この作品のクライマックスを体現する【飛行船の登場】を指さして、示す。
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【キキの絶望】と【飛行船の行方】という2つのドラマを【並行】させているんですよね。
【289】3層構造。
手前・中間・奥、の構図ですね。
ダイナミックな光景。
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【290】飛行船に乗ってるウキウキなトンボ。
それを見つめるキキ。ドラマの対照性。
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【291】ジジと恋人が仲を深めている。
そういう脇筋を見せるのはいいとして、それを見せるためのこの構図が出来過ぎですよね。
これも奥行きとして【3層構造】の構図を使用。
飛行船(奥)と屋根(手前)が重なることによって空間的に立体感が生まれ、中間にネコ二匹がちょこんと座ってる。
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【292】飛行船からの視点(トンボの視点?)。
背景画が全面にひろがって、その片隅で手を振る旦那さんとキキ、オソノさん、そしてひるがえる洗濯物。
セルの存在が背景のなかに浮いてないですよね。
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【293】飛行船での報告をしに電話するトンボ。
こういう、【矩形型に人物をはめこませる】の、宮崎さん好きですよね。
ラピュタにはあって、ナウシカにもあったと思ったんですが、あれはコミックの中だったかな?
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【294】トンボの電話に意気消沈して対応するキキ。
背後左に並んでいるビン類の数々は何でしょうか?
レモネードみたいなものでしょうか?
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【295】トンボからの電話をすげなく切ってしまうキキ。
①自分の部屋へ退散しようとするキキ。
②心配そうに見つめるオソノさん。
③快活にお客さんの対応をする旦那さん。
④キキの葛藤など知らずに注文するお客さん。
【複数の運動】がさりげなく、この画面に充溢していますね。
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【296】傷心のキキ。新しいホウキの棒をけずる。
この削る動作もなにげなく【力の入れ具合の、作用と反作用】が活きていますね。
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【297】キキの気持ちを転換させてくれるウルスラの登場。
『両側に壁が立ちはだかっている、【斜め奥から、手前】へ続く道』ですね
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【298】道案内を尋ねつつキキの住まいへ向かうウルスラ。
ちょっとした説明的なシーンですけれど、ロケーションの切り取り方が抜群ですよね。
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キキを見つけてトラック(という障害物)をよけつつ寄ってくる仕草とか、細かいところにまで配慮してますよね。
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【299】ウルスラがたずねてきて、もてなすキキ。そしてただのネコとして現れるジジ。
この3者の【芝居をつける】のが本当に巧みですよね。
3者の、どの存在も、いっときとして【存在として・死んでいる】ときがない。
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【300】魔法が消えかけた/弱くなって、気持ちが沈み込んでいたキキのもとへウルスラという救いの主が現れる。
ドラマの展開としては見事ですが、こう『都合よく、救いの手がさしのべられる』のはやはり、あくまで『ドラマとしての効率性』なのは仕方ない。
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【300~2】すみません、ひとつだけ補足。
いま宮崎さんと高畑さんの映画作家としての資質の違いって何かな?と考えていて、この『効率的に現れる・救いの手』は高畑さんはしないかな?と思いました。
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【300~3】高畑さんと宮崎さんのどっちが優れているかとか、そういう優劣の話ではなくて、単純に資質の違いとして思います。
でもあえて宮崎さんのこのシーンを悪く言うなら、ご都合主義っぽいな、とは思います。
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というところで「(ほぼ)全画面分析~その12」を終わりにします。
「その13」へ。