正しい画を求めて⑬ カラー”マネジメント”とキャリブレーション。え、同じじゃない?

Twitterを見ると、X-riteやDataColorのソフトでICC作って当てているのにモニタの色が合わない、なんか変わってるけど色がいっちょん合わん、と途方に暮れている様をたま見る。
なぜその様になるのであろうか。
結論だけ言えばやり方が間違っているし使うシステムも違うし機材の補正も十分に出来ていない、ということになる。
が、それだけでは解決につなげるのは難しいだろうと思うので、もう少し詳しく話をしてみよう。

そもそもカラーマネジメントしてる、とキャリブレーションは似て非なるものである。だがしかし得られる結果、目標とする結果は同じようなものと認識されることが多い。
一体何が違うのだろう?

キャリブレーションは今までの記事で散々見てきたので今更語るまでもない。
”目標”に対してズレが有る状態から、ズレを解消することだ。
ではカラーマネジメントとはなんぞや?
よく見てみるとその疑問は解消できる。
カラー”マネジメント”、すなわち色の管理がカラーマネジメントの正体だ。
もちろん、それだけでは「難しいことはわからなソス」となる。
愉悦卿じゃないのだから無理もない。

先述の通りカラーマネジメントは色の管理をすることである。
普段意識しないまでも、機能としてはWindowsやiOSにも組み込まれている。
ICCと呼んでいるものがまさにそれだ。
そして一般にキャリブレーションとして誤って認識されているもの、でもある。
これに関しては世界最高のプロフェッショナルが解説した記事があるので紹介しておこう。


この記事にもある通り、ICCを作成する、とは校正にあらずである。
最新規格のICCは3D LUTを模擬した機能も有しており、3D LUTキャリブレーションを真似することもしようとしているようである。
しかしICCが本来有するの機能は、DaVinci ResolveでいえばRCMやACESが担う、色を正しく扱うためにはこの大きさをちゃんと認識しよう、というものだ。
身近なところで言えば、車を買ったが輸入したままなのでスピードメーターがマイルになってるようなものといえよう。
この場合、”メーターがマイル表示と認識して”走らないと周りと速度差が著しくついてしまう。
この”マイルと認識して頭の中で必要な速度へと変換するマネジメント”が、いわゆるCMSと呼ばれる機能の本質だ。

以前の記事にも記載したが、これだけでは正確性を保証しない。
なぜなら”マイルで表示している”といえど、その「マイル表示がマイルとして正確に表示しているか」はこの場合誰も担保していないからだ。
マイルとして正確な表示をしているか、確認し、必要なら補正すること。これが校正である。
ICCの機能としてはVCGT(1D LUT)を内包することも可能であるので、一応はID LUTを用いた校正も可能、ではあるが、これについては上記Lightillusionが全否定しているのでそちらを見てほしい。
4K HDR anime channelとしてもLightillusionの考えを支持し、1Dだけでは限界があると言わざるを得ない。
EOTFと白色点のみであれば確かに可能であるが、彩度補正が不可能だからである。

話を戻して、X-riteやDataColorの校正ソフトがなにをしているのだろうか。
i1Displayリテール品のライセンスで使用できるi1Profilerを所有しているのでそちらを例に取ってみよう。
i1Profilerは非常に限られた機能しかないなど不満も多いが、モニタのプロファイリングとICCの出力、程度のことは出来る。
つまり出来ることは(モニタに関して言えば)、プロファイリングとICCの出力だ。

これらのソフトが行うプロファイリングは、”モニタがどのような性能をもっているかの確認”として白色点、最大輝度と最低輝度、プライマリカラー(RGB)の色度とガンマカーブの確認といったところである。
これらの情報をもとにICCを作成し、ICCにVCGT情報としてガンマカーブと白色点を補正する1D LUTを組み込むことで、ICCを当てることで多少なりともモニタの表示が影響を受けるのである。

しかしながらこれは必ずしも、いや、当然だが十分ではない。
モニタが表示するのは白黒ではなく、色もだからである。
ICCを参照して対応アプリが補正情報をのせた出力をしたとしても、この方法では色度の補正情報が不足してしまい、結果として彩度不一致の問題が出る。
このような状態では校正を取ったとは到底言えないであろう。
また、i1ProfilerやDataColorではColorimeter Correctionが十分に行えない問題もある。
この問題についてはこれまでの記事ですでに言及したものでもあり、解説だけで一本記事が書ける内容なので割愛するが、そもそも論として正しい計測ができていない、という話である。
校正を十分するというのに最低限数色取った程度で作業が終わるわけがないという、考えれば当然のことに気づくべきであろう。

4K HDR anime channelではモニタの校正、カラーマネジメントの適用としてはHDR(BT.2100/st2084)を推奨している。
色度再現性を優先するならばP3の仕様も検討されるべきだ。

理想を言えばモニタネイティブの状態で純粋なガンマ2.2、とするのが良いのであろうが、これは校正をするための基準としては機能するがマネジメントで言えば論外だからである。
※実際に業務機のHDR校正ではモニタネイティブの状態からHDR表示用の3D LUTを設計する。
最高輝度/最低輝度とプライマリの定義も無いのにどうやってマネジメントを行うのだろうか。
HDRとしての校正は従来の手法と異なる難しさもあるのは事実であるが、実のところ既にワークフローとしては成立しており、同時にHDR(BT.2100/st2084)であれば制作色空間として不足することはほぼ無い。
勿論AP0/linear floatでもAP1/cct、scRGB/floatでも良いのだが、AP0やscRGBのfloatはデータが大きくなりすぎ、AP1/cctはほぼBT.2100/st2084相当でありあえて選ぶ必要があるのか疑問である。

なお、実際のところ、HDR(BT.2100/st2084)を用いずとも同じ結果を得ること自体は可能である。モニタごとにワンオフのカスタム表示モードを設定するだけである。出来るものなら是非やってみろ、というところであるが。
それが基準がないということの意味である。

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