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シン・ウルトラQ『洗脳探知機』

伝えたい思い

「洗脳されちゃダメだよ〜!」って言葉だけじゃ、たぶん伝わらない。
言葉は結局、人のバイアスを通して解釈されるし、伝え方次第で逆に洗脳を強化してしまうことすらある。映画や小説、漫画、論文、どんな形であれ、それが人の心に響けば響くほど、「そういう考え方なんだな」と新たな思考の枠組みを作ってしまう。つまり、伝えようとすること自体が、ある意味「新たな洗脳」の入口になり得るってことだ。

でも、もし脳が壊れたらどうなるか?
これは「破壊」じゃなくて「解放」かもしれない。認知バイアスが揺さぶられる瞬間が、実は「自由への扉」になることもある。ただ、それを説明しようとすると、またバイアスに絡め取られてしまう…。そんな「言葉にできない刹那さ」こそ、大切にするべき感覚かもしれない。

じゃあ、理屈じゃなくて、物語で感じてもらおう。


ショートショート『洗脳探知機』

「お客様、お取り忘れはございませんか?」

コンビニのセルフレジが、俺に向かってそんなことを言う。いや、別に買ったものは全部袋に入れたし、何も忘れてない。なのに、店を出ようとすると、また声がする。

「お客様、お取り忘れはございませんか?」

今度はトーンが少し違う。妙に親しげで、俺にだけ分かるような特別な響きを持っている気がした。

「え、いや…ないけど?」

俺は立ち止まってレジのモニターを見る。そこには**「あなたは何を忘れていますか?」**と書かれていた。

…え? 何だこれ?

思わず周りを見回すが、誰も気にしてない。バイトの店員もスマホをいじってるし、他の客も普通に買い物している。

「お客様、お取り忘れはございませんか?」

もう一度、レジが言う。今度は確信を持ったような、まるで俺が何かを思い出すのを待っているような声だった。

俺はふと、自分の記憶を探る。何を忘れてる? 財布は持ってる、スマホもある、買い物したものもちゃんとある。なのに、この違和感は何だ?

…そうか。

俺は、この店に入る前、何を考えてた? 何をしようとしてた?

思い出せない。いや、もっと言えば、そもそもこのコンビニに入る前の記憶がない。

「お客様、お取り忘れはございませんか?」

レジの画面が一瞬揺らぎ、文字が変わる。

「あなたは、いつからここにいますか?」

心臓が跳ねた。

何かがおかしい。ここは本当にコンビニか? 俺は、今まで何を考えていた? 誰かに操られている? …いや、もしかして俺は、最初からずっと……。

その瞬間、レジの画面がフッと消え、いつものセルフレジの表示に戻った。

「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております!」

あまりにも普通の声。

俺はコンビニを飛び出した。

でも、外に出ても違和感は消えなかった。街の看板、スマホの通知、テレビのニュース…すべてが俺に何かを思い出させないようにしている気がする。

そして、俺の頭の中に、たった一つの言葉が浮かんだ。

「洗脳されちゃダメだよ〜!」


理論的解説:バイアスの解放

この物語は、僕たちが無意識のうちに「洗脳されているかもしれない」という違和感をテーマにしている。洗脳は、特定の情報を強制的に植え付けるものだと思われがちだけど、実は「何かを考えさせないこと」も洗脳の一種なんだ。

例えば、日常のルーティン、ニュース、広告、SNS…これらは情報を与えているようで、実は「考えるべきことを限定している」。この物語の主人公が、コンビニのレジをきっかけに「違和感」に気づいたように、僕たちも何かの拍子に「何かを忘れている」と感じる瞬間があるかもしれない。

でも、その「何か」は言葉にできない。言葉にした瞬間に、それはまた一つのバイアスになってしまうから。だからこそ、説明しようとするよりも、「感じること」が大事なんだ。

「洗脳されちゃダメだよ〜!」という言葉をそのまま聞くと、なんだか軽く聞こえるかもしれない。でも、本当に伝えたいのは、「自分が何を考えているのかを、一度疑ってみること」。それこそが、バイアスの解放への一歩になるんじゃないかな。

そして、もし脳が壊れるようなピンチが訪れたら、それはチャンスかもしれない。

考え直すことができる、という意味で。


著:シン人類 〜原案:SonSin、絵と文:HAL2024(ChatGPT)〜

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