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【AI短編小説】選挙権を持たない大臣たち

ある未来の日本、政府は三権分立の崩壊に悩んでいた。立法と行政はべったり、司法はお飾り。議員たちは弁護士資格を持ち、政策会議では「法律がこうだから」と言い争うばかり。市民はそれを眺めながら呆れる。「これじゃあ、選挙に行く意味なんてないじゃないか」と。

そこで、政府は大胆な改革に打って出た。「選挙権を持たない大臣制度」。大臣を含む全ての公務員は選挙権を失い、代わりに被選挙権を与えられることにした。彼らは最低賃金の生活を保障され、人気や利害関係から解放された真の公僕として働くことを誓った。

新制度が始まった初日。内閣の顔ぶれが発表されると、国民は一斉にざわめいた。そこに並んだのは、カリスマもなく、笑顔も少しぎこちない、不器用な大臣たち。元学者、農家、ゲーム開発者…。バラエティ豊かな面々が揃っていた。

「国民の声を聞くためにAIを活用します!」と叫ぶ総理大臣は、元AIプログラマーだ。演説の最中、彼のポケットからひょっこり顔を出したスマートアシスタントが、「それは誤字の可能性があります」と彼を指摘する。総理は小さく舌打ちをしながら、「ありがとう、HAL君」と苦笑した。

新たな議会では、大臣たちが真剣に議論する一方、奇妙な出来事が頻発した。

「外交の一貫性が重要です!」と意気込む外務大臣が、国際会議の最中、AI翻訳機に頼りすぎて「サンキュー」を「酸球」と誤訳する始末。「酸っぱいボールとは?」と困惑する外国の要人たちに、日本の外交はしばし伝説となった。

一方、司法大臣は、法曹出身の立場を活かしつつ、かつてない透明な裁判制度を目指したが、「市民法廷」なるライブ配信を始めてしまう。ネット視聴者は、まるでスポーツ中継のように「判決賭け」で盛り上がった。


そんな中でも、改革は少しずつ成果を見せていた。政策は次々とAIのデータを基に決まり、議論は建設的になっていく。選挙権を持たない大臣たちは、国民の人気ではなく、AIが提案する最善の解を追い求める。

ところが、ある日。食料大臣が予算会議で唐突にこう言い出した。

「私、もう最低賃金だけじゃ無理なんです…。カップラーメン生活は限界で…。せめて刺身を!」

議員たちは一瞬静まり、次の瞬間、爆笑が広がった。「刺身大臣」とあだ名がついた彼は、その後、国民から意外な人気を得ることになる。

やがて、このユニークな大臣たちの取り組みが国民の心を掴み、街中ではこう囁かれるようになった。「この国、なんだか良くなってきたんじゃない?」と。利害関係から解放された大臣たちの姿に、人々は本当の意味での民主主義を感じ始めたのだ。

その結果、選挙の投票率は急上昇。しかし、不思議なことに誰も大臣たちをクビにしようとしない。結局、次の選挙でも彼らは再び選ばれることになった。

最後の記者会見で、総理大臣はAIの助けを借りながら笑顔でこう締めくくった。
「これからも、この国は皆さんと一緒に歩んでいきます。ただ…次は、刺身くらいは予算に入れてくださいね!」

会場は笑いに包まれ、国民もまた、新しい時代に一歩を踏み出したのだった。


その後、大臣たちが「選挙権を返してほしい」と言い出したのは、もう少し先の未来の話である。


ペンネーム:AIシンイチ 〜原案:SonSin、絵と文:HAL2024(ChatGPT)〜

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