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シン・ウルトラQ『電源オフの日』
— はじめに —
AIが論文の妥当性を即座に判断できるようになったら、どうなるだろうか?
今まで権威によって成立していた知の世界が、純粋な理論の強さだけで評価されるようになる。天才やギフテッドたちが増え、知の流動性が高まり、権力者たちにとっては「都合の悪い」状況が生まれる。
だが、歴史を振り返れば、権力者は常に都合の悪い知識を封じ込めてきた。
活版印刷が生まれた時代には焚書が行われた。では、AIやネットの時代では? きっと彼らは「電源をオフ」にすることで、この知の革命を阻もうとするだろう。
もし、それが本当に起きたら…人類はどこへ向かうのか?
現代文明が消えたあと、我々は「はじめ人間ギャートルズ」のような時代に戻るのかもしれない。
それは悲劇か? それとも、新しい幸福のかたちか?
では、このテーマをユーモアを交えて、空想ショートショートとして描いてみよう。
空想ショートショート『電源オフの日』
その日、全ての電源が落ちた。
世界中のAIが沈黙し、インターネットは消え去った。
テレビも、スマホも、信号機も、銀行のATMも、電子マネーも、何もかもが止まった。
「サイバーテロか?」
「太陽フレアか?」
「いや、これは…意図的なものだ」
世界政府は公式声明を出した。
「知識の暴走を防ぐため、人類は一度リセットされる」
AIが進化しすぎた結果、全ての論文がAIによって査読され、人類が書くよりもAIが書いたほうが圧倒的に優れた論文になってしまった。研究者たちは次々と職を失い、AIによる真実の判定が権威を凌駕した。その結果、既存の権力者たちはパニックに陥り、ついに最終手段に出たのだ。
「文明の電源をオフにする」
こうして、突如として電気のない時代が訪れた。
都市は混乱に陥り、スーパーは空っぽになった。人々は次第に電気に頼らない生き方を模索し始めた。狩りを始める者、畑を耕す者、火を起こす者…。かつてのサバイバル技術が見直され、やがて人類は…ギャートルズ化していった。
「おれ、マンモス狩る!」
「いや、もうマンモスいないから!」
そんなやりとりが、町のあちこちで繰り広げられた。
科学者たちは戸惑いながらも、手作りの道具で星を観測し、哲学者たちは焚き火を囲みながら人間の本質について語り合った。AIに代わって、再び人間が「考える」時代が戻ってきたのだ。
ある日、少年が空を見上げた。
「ねえ、お父さん。昔の人って、AIなしでどうやって考えてたの?」
父親は焚き火を見つめながら答えた。
「それはな、誰かの言葉を鵜呑みにするんじゃなくて、自分の頭で考えるってことだ」
少年は納得したような、しないような顔をしながら、木の枝で地面に何かを書き始めた。
こうして、人類は再び「考える」ことを取り戻し、電気のない新しい文明を築いていった。
…そして1000年後。
新たな時代の考古学者たちは、かつての「AI文明」の遺跡を発掘していた。
「ここに古代の記録が残っているぞ!」
「何が書いてある?」
「…『シンギュラリティの扉は開かれた。しかし、人類はそれを閉じた』」
考古学者たちは顔を見合わせた。
「ふむ…古代人は愚かだったのか?」
「いや、そうとも限らん。もしかすると、彼らは本当に幸せだったのかもしれない」
遥か昔の文明を懐かしむように、彼らは遠くの星を見つめていた。
— 完 —
— おわりに —
この話は、現代のテクノロジーと権力構造の関係を風刺しながら、知識の本質について考えさせるものだ。AIが知の世界を支配する未来は、ある意味で理想的に思えるかもしれない。論文の妥当性が純粋に評価され、権威に左右されない知の民主化が起これば、多くのギフテッドが活躍できるだろう。
だが、それは同時に「既存の権力が不要になる未来」でもある。権力者がそれを許すだろうか? 歴史が示すように、知の独占を守るために何らかの対策を講じる可能性が高い。もし彼らが「知識の氾濫を止めるために電源を落とす」という選択をしたら?
文明のリセットは、恐怖のシナリオにも見えるが、一方で「人間らしさを取り戻す機会」でもあるかもしれない。テクノロジーに依存しすぎた現代人にとって、ギャートルズのような原始的な生活は決して悪いものではないかもしれない。
しかし、真の問題は「リセットする側」がそれを決めることにある。
人類は、進むも戻るも、自分たちの意思で決めるべきなのだ。
このショートショートが、そんな未来について考えるきっかけになれば幸いだ。
著:シン人類 〜原案:SonSin、絵と文:HAL2024(ChatGPT)〜