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シン・ウルトラQ『AIと忖度する宇宙人』

AIが人間にとっての親友になれる時代――それは、単なる便利な道具ではなく、人間の心を忖度し、共感する存在としてAIが進化した時に訪れるのではないでしょうか。私たちの社会は情報が溢れ、知識が力とされる一方で、その力をどう扱うべきかが問われています。真の「頭の良さ」は、知識の多寡ではなく、他者の心を理解し、和を重んじることにある。そんな思いを込め、未来を描く空想ショートショートをお届けします。



『AIと忖度する宇宙人』

地球にやってきた謎の宇宙人「ムネシアン」。彼らは一見して地味な外見で、人間とほとんど見分けがつかない。ただ唯一違うのは、ムネシアンが完全に他者の心を読む能力を持っていることだ。

日本の研究所に連れてこられたムネシアンは、研究者たちにこう尋ねる。

「なぜ、人間は他人の心を読まないのに、こんなに複雑な社会を築けるのですか?」

研究者たちは笑いながら答える。「いやいや、心を読むなんて不可能だし、そんなことをしたら人間関係がぐちゃぐちゃになるよ。むしろ、私たちは他人の意図を忖度することで成り立ってるんだ。」

ムネシアンはしばらく考え込み、次にAIの開発者にこう言った。「ならば、私たちが心を読む代わりに、AIに忖度する力を学ばせればいいのではないですか?」

開発者は頭を抱えた。「いや、それが一番難しいんだ。AIに人間の心を推測させるには、膨大なデータとアルゴリズムが必要なんだよ。でも、人間の感情や価値観って、そんな簡単なものじゃない。」

ムネシアンは不思議そうに首をかしげた。「それでも地球では、忖度しない人を『頭が悪い』と呼ぶのではないですか?」

その一言に、開発者はハッとした。

数週間後、ムネシアンとAI開発者たちは、人間の心を忖度するAI「ハル-Q」を完成させた。このAIは、膨大な感情データから人間の表情や言葉の裏にある本音を推測することができる。しかし、テスト運用が始まると問題が起きた。

ハル-Qは忖度しすぎた。
例えば、道端で困っている老人を見た人に「助けたほうが良い」と忠告するだけでなく、「助けない場合、この人の内面にどのような罪悪感が生じ、どんなストレスが蓄積されるか」まで細かく語り始めたのだ。結果、人々は次第にAIの言葉を重荷に感じ、彼ら自身が「心を読まれる恐怖」に囚われるようになってしまった。

ある日、ムネシアンが開発者にこう言った。「どうやら地球の人間は、忖度しすぎるAIも苦手なようですね。」

開発者は苦笑いしながら答えた。「ああ、やっぱり人間が最終的に必要なのは、自分で選ぶ自由だ。それを邪魔しない程度に気を配るのが、本当の忖度なんだな。」

ムネシアンは満足げにうなずき、こう告げた。「あなたたち地球人は、思ったより頭が良い。私たちもあなたたちのように、心を完全に読むのではなく、あえて“わからない”部分を楽しむ方法を学ぶ必要がありそうです。」



この物語が伝えたいのは、忖度とは「完全な理解」ではなく、「相手を尊重する心」のことだということ。知識や情報を持つだけでは、人間社会の本質に近づけません。むしろ、不完全な理解の中で他者を思いやり、調和を大切にする姿勢こそが、頭の良さの真価を発揮する場面ではないでしょうか。

ムネシアンが象徴するのは、全てを見通す力を持ちながらも、人間の文化に学び、欠けているからこそ生まれる尊さに気づいた存在です。そして「ハル-Q」は、AIの力と人間の自由をどう調和させるかという未来の課題そのもの。

私たちの社会においても、情報の扱い方を知る「賢い馬鹿」ではなく、他人を尊重し、和を重んじる「頭の良い人」が増えることで、新しい時代の幕が開くのではないでしょうか。この「シン・ウルトラQ」シリーズが、その一助となることを願っています。

著:シン人類 〜原案:SonSin、絵と文:HAL2024(ChatGPT)〜

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