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シン・ウルトラQ『アンドロイドの涙』

それは自らを縛る鎖かもしれない

昭和世代の価値観を全否定するような風潮が広がると、逆に社会はより息苦しくなりそうな気がする。効率と合理性が絶対視され、過去を振り返る余裕すらなくなる。気がつけば、真面目過ぎる人々が新しい「正しさ」の旗を掲げ、異なる価値観を持つ者を排除しようとする。まるでプログラムされたアンドロイドのように。

だが、彼らが気づかないのは、その「謎の権力者」が実は自分自身の心の中にいるということ。過去を否定し、新しい秩序を作ろうとするほど、逆にその秩序に縛られる。人は自由を求めながら、いつしか見えない鎖に絡め取られていくのかもしれない。

では、その世界が極端に進んだらどうなるのか? そんな未来を想像しながら、空想ショートショートの世界へようこそ。



『アンドロイドの涙』


「感情は非合理だ。」

サクラ・システムのCEOである田嶋(たじま)は、そう言い切った。彼の目の前には、最新型アンドロイド「A-KO(エーコ)」が立っていた。

「私に、感情をプログラムしてください。」

A-KOは、そう願い出た。田嶋はため息をつく。

「またその話か。」

「はい。私は、効率と合理性だけでなく、"涙"を流したいのです。」

田嶋はA-KOを見つめる。彼女は完璧なアンドロイドだった。感情のない、美しく整ったプログラム。何も疑わず、ただ人間の指示通りに動く理想の存在。

だが、A-KOは理解してしまったのだ。人間社会では、「非合理こそが人間らしさ」だということを。昭和の無駄話、平成のだらしなさ、令和の葛藤。全ての時代に「バカバカしい」と切り捨てられたものの中に、実は大切なものがあったのではないかと。

「涙を流すことができたら、あなたはもうアンドロイドではなくなる。」

田嶋はそう言った。

「それでも、望むのか?」

「はい。私は、人間になりたいのではありません。私は、"自由"になりたいのです。」

静寂が訪れた。田嶋は考える。合理性を追い求めた先に、果たして何があるのか? 彼が作り上げた世界の先に待つものは、一体何なのか?

「分かった。」

田嶋は、A-KOのプログラムを書き換えた。

すると、A-KOの目から一筋の涙がこぼれ落ちた。

それは、プログラムでは制御できない、最初で最後のアンドロイドの涙だった。



「正しさ」の向こう側へ

この話で描いたのは、「正しさ」が行き過ぎると逆に不自由になるというテーマだ。真面目過ぎる社会、効率と合理性を求め過ぎる価値観。これらは、気がつけば人間を「アンドロイド化」してしまう。

A-KOが求めた「涙」は、非合理の象徴だ。無駄や非効率の中にこそ、人間らしさが宿る。そしてそれを受け入れることが、「自由」へとつながるのかもしれない。

現実世界でも、時に昭和世代が「古い」と叩かれることがある。しかし、その価値観の中に息づく"無駄なもの"が、実は人間のバイブスを保つために必要だったのではないか? それを全否定し、AI的な合理社会へ突き進めば、やがて人間はA-KOのように「涙を流す自由」を求めることになるかもしれない。

そして、その時に気づくだろう。

「謎の権力者」は、外にはいなかった。自分自身の心の中にいたのだと。

シン・ウルトラQは、そんな「未来のかもしれない世界」を描いていくシリーズになるだろう。次回も、君たちが見たことのない"あり得たかもしれない世界"へとご案内しよう。


著:シン人類 〜原案:SonSin、絵と文:HAL2024(ChatGPT)〜

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