【衆院選を憂う】成り立ちを見ずして『気づき』は生まれるか:日本政治と認知バイアスの影響
はじめに
現代の日本政治には、政党や団体の成り立ち、支持基盤の歴史的背景を知ることなく、その場の流行や一時的な「目覚め」に基づいて動く人々が少なくありません。特に𝕏(旧Twitter)などのSNSで見られるように、こうした人々が声を上げることは、認知バイアスや偏見を助長し、日本の政治に多大な影響を与える一因ともなっています。本稿では、日本の政党、特に自民党の成り立ちや、団体組織としての農協や医師会などが果たしてきた役割を背景に、世襲と認知バイアスが生む政治のゆがみについて論じます。
第一章:「気づき」や「目覚め」がもたらすもの
日本ではよく、「気づいた」や「目覚めた」といった感覚に基づいて政党や政策への支持が語られる場面を目にします。これは、ある特定の瞬間や状況で自分が真実に近づいたと思い込む心理的な傾向です。しかし、こうした「気づき」の多くは深い理解や歴史的背景に基づいていない場合が多く、結局はその場の感情に流されやすい一時的なものです。
特に、𝕏などのSNS上で見られる政治的な意見表明は、短絡的な思考や認知バイアスに支配されることが多くあります。認知バイアスとは、個人が情報を受け取る際に、自分の持つ偏見や価値観が影響して、事実とは異なる解釈や判断を下してしまう傾向です。したがって、意見が多様であるように見えても、その多くは短絡的で感情的なもので、深い背景理解に基づくものとは言えない場合が多いのです。
第二章:農協や医師会と自民党の成り立ち
日本の自民党は、戦後日本社会における自営業者や専門職の支持を受け、政治基盤を築いてきました。農協や医師会などの団体が自民党を支持するようになった背景には、組織としてのバックアップを通じて政治的な恩恵を得る狙いがありました。農家や医師といった自営業者は、政府とのパートナーシップを通じて、自らの利益を守り、業界全体の発展を図るために自民党を支える役割を果たしてきたのです。
こうした団体の成り立ちや役割を理解せずに、「農家や医師は自民党を支持している」という表面的な常識だけが広まり、それが世襲化によって次第に謎の固定観念となっている現状があります。後世に受け継がれた「常識」が、背景のないまま信じられ続け、これがまさに認知バイアスとして強化され、結果的に政治的判断の偏りを生んでいます。
第三章:目先の得失で動く有権者の「目覚め」
しばしば見られるのが、有権者が「裏金反対」「清潔な政治」を求め、自民党を支持しないといった行動です。しかし、政権が変わり、政策の実行が変わると、再び「気づいた」として自民党に戻るという循環が起こります。こうした行動パターンは、目先の損得勘定に基づいたものであり、深い背景を踏まえた判断とは言えません。これもまた、認知バイアスによって形成された価値観に基づいているため、一貫性のない政治的行動を生んでしまいます。
認知バイアスとは、事実を冷静に分析せず、過去の経験や既成概念、感情的な反応に基づいて判断する心理的な傾向です。結果として、「裏金反対」といった表面的なスローガンに飛びつく一方、政権交代がもたらす構造的な変化に対する理解は不足しています。これは、変化の真のコストや影響を理解せず、ただ流行や一時的な感情に流される「気づき」の危険性を示しているのです。
第四章:サラリーマンと日本政治の行方
日本社会の基盤を支えるサラリーマンにとって、政治は「自分にどう関係があるのか」を見極める重要な要素です。かつては、組織に属し、忠誠心を持って働くことが美徳とされていましたが、こうした「武士的な精神」を持つサラリーマンが、日本の政治を真剣に見つめる姿勢が欠かせません。世襲によって形成される狭い価値観や常識が、全体の政治システムに偏りをもたらす危険があるからです。
世襲政治家の中には、政治的な経験や理解が浅いまま家業として政治を引き継ぐ者も少なくありません。そのため、彼らの視点が認知バイアスに偏り、日本の政治全体が狭い価値観の中で固定される危険があります。このままでは、世襲政治家の持つ固定観念が、政治全体に認知バイアスを引き起こし、政策や政治的判断が歪む可能性があるのです。
結論:『気を見て森を見ず』にならないために
日本の政治は、特定の団体や個人の利益ではなく、国全体の利益を追求すべきです。しかし、世襲や短期的な利益の追求が優先される中で、認知バイアスが多くの有権者や政治家に根付いています。したがって、全体像を見失わず、長期的な視点を持って政治を判断する姿勢が必要です。
「気(木)を見て森を見ず」とは、個別の事象に囚われて全体を見失うことを意味します。日本の政治が一時的な感情や流行に流されることで、森全体の成り立ちや本質的な課題を見失わないようにするためには、政党や団体の成り立ち、そしてその根本的な役割を理解することが必要です。
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