【AIショート】即戦力ってなんだ?
小さな会社の社長である田中は、採用面接のたびに悩んでいた。
「即戦力がほしい!すぐに役に立ってくれる人がほしいんだよ!」と、毎回そう思うのだが、雇った社員がすぐに会社に馴染むかどうかはギャンブルのようなものだった。
ある日、田中は一人の応募者、鈴木という青年と面接をした。履歴書にはこれまでの業績がずらりと並び、まさに即戦力を思わせる内容だ。田中の顔には笑みが浮かんだ。「これだ!うちにぴったりの即戦力だ!」
ところが、面接の途中、鈴木は少し困ったように聞いてきた。
「ところで、社長、即戦力って具体的にどういうものを指しますか?私、即座に何か役に立てそうですか?」
「いや、まあ、すぐに…ええと…」田中はしどろもどろになった。実は、「即戦力」の正体について明確な答えは持っていなかったのだ。とにかく会社をうまく回してくれる人、くらいの漠然としたイメージしかなかった。
鈴木は続けて、「社長、僕がすぐに役立つかどうかは分かりませんが、社長と一緒に考えて、会社に合ったやり方で力を発揮できるように頑張りますよ」と、笑顔で言った。
その一言で田中はハッとした。「即戦力」とは、目先の業績やスキルだけを求めることではなく、「この人と一緒に働きたい」と思えるかどうか、もっと言えば、一緒に成長できるかどうかが大事なんだと気づいたのだ。
田中はにっこりと笑い、「うちで一緒に働こう!」と握手を交わした。こうして鈴木は田中の会社に迎え入れられたが、その後、彼は田中の期待を超える大活躍を見せるのだった。
エピローグ
鈴木が会社に馴染み、業績を上げる姿を見た田中は、次から「即戦力」という言葉をあまり使わなくなった。その代わり、「一緒に成長してくれる人」と書くようになり、いつも「共に働きたいか?」と自分に問いかけながら面接をするようになったという。
教訓:
即戦力とは即席の力ではなく、共に未来を築ける力なのかもしれない。