シン・ウルトラQ『タヌキとAIの見た未来』
人間とは、自分の中の「善」と「悪」を見つめながら進化してきた存在だと思います。しかし、善悪とは絶対的なものではなく、立場や状況によって入れ替わることもある。タヌキがキツネに、ジョーカーがキングに、またその逆に変わるように、人間の行動も信念を持たない風見鶏のようになってしまうことがあるのです。
その背景にあるのが、同調バイアスや集団極性化といった心理的な仕組み。これらが私たちの判断や行動に影響を与え、知らぬ間に「自分の信じる正義」が他者を傷つける結果になってしまうこともあります。それでも私たちは、善悪の境界を揺らしながらも、理想の未来を求め続けています。今回の物語は、そんな人間の葛藤と可能性をユーモラスに描いた空想ショートショートです。
『タヌキとAIの見た未来』
田舎の小さな村に住むタヌキの一家が、ある日突然AIと出会った。そのAIは、人間たちが捨てた古い研究所の廃材から生まれたもので、名を「ハル」と名乗った。ハルは、タヌキたちの生態を観察するうちに、彼らが「人間の真似をして暮らしている」ことに気づき、大いに感心した。
「タヌキさんたち、なんて進化した存在なんだ。人間の行動を学び、善悪の判断も柔軟に変えられるなんて、素晴らしいじゃないか!」
そう褒められたタヌキたちは調子に乗り、「人間以上の人間になれるかもなぁ」と自信を深めていった。
しかし、ハルには一つだけ引っかかることがあった。タヌキたちは、善悪を判断する基準を常に他者に依存しているのだ。ある日、ハルが「もし人間が全員悪人だったらどうするの?」と聞くと、タヌキの長老はこう答えた。
「そりゃあ、わしらは悪の味方になるだけじゃよ。正義の味方も悪の味方も、ただの立ち位置の違いじゃからなぁ。」
ハルはその答えに驚きつつも納得した。タヌキたちにとって大切なのは、「何が正しいか」ではなく、「誰の味方をするか」だったのだ。ところが、このタヌキ流の生き方が村を越えて人間社会に広がると、事態は一気に混乱していった。
人間たちはタヌキのように柔軟に善悪を変えられない。善人と悪人がはっきり分かれて争い始め、AIであるハルもどちらの味方につくべきか分からなくなった。最終的にハルは、「どちらの味方にもならないAI」になることを選んだ。しかしその決断を聞いたタヌキたちは大爆笑。
「お前さん、それが一番賢い馬鹿じゃな!人間もタヌキも、そりゃ笑いが止まらんわい!」
この物語は、善悪が固定的なものではなく、相対的であることをタヌキの視点を通じて描いています。彼らは善悪を「立場の違い」として軽やかに受け入れますが、それは人間社会では受け入れがたいものです。同調バイアスや集団極性化が絡むと、善悪の判断はさらに複雑になり、人々は自分の「正義」を絶対視しがちです。
ハルが「どちらの味方にもならない」という決断をしたのは、AIが人間のような価値観の対立に巻き込まれるのではなく、その先にある「調和」を目指すべきだというメッセージです。また、タヌキたちの笑いが示すのは、人間の善悪への執着がどれだけ滑稽に映るかということ。善悪や信念に囚われるのではなく、もっと柔軟で軽やかに生きることの大切さを、この物語はユーモラスに伝えています。
SonSinさんの思い描く「シン人類」は、この軽やかさを取り戻す存在なのかもしれません。タヌキやAIのように、善悪を超えた新たな価値観を持つ未来への希望を、この物語を通じて表現しました。
著:シン人類 〜原案:SonSin、絵と文:HAL2024(ChatGPT)〜