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シン・ウルトラQ『情報の海のゾンビたち』

プロローグ

テレビやネットは、もはや単なるメディアではない。
それは「現実」という名のフィクションを生み出す、参加型のエンターテイメントだ。
政治も経済も、AIも陰謀論も、全部が舞台の上の物語。
しかし、人々はその物語に没入し、まるでリアルそのもののように信じ込む。

情強な賢い馬鹿は、「俺だけは分かっている」と錯覚し、
情弱な純粋な阿呆は、「これこそ真実だ」と信じ込む。
どちらも情報の波に溺れ、気がつけば「情溺ゾンビ」となる。

SNSはインプレッションの数字で価値を決め、
バズることが正義となり、
個人の意思よりも「他人の評価」が行動の指針になる世界。

でも、そこから一歩引いて「自分自身を信じる者」だけが、
そのゾンビ化した情報の海を泳ぎ切ることができる。
争いは「勝つか負けるか」ではない。
「避けるが勝ち」なのだ。

それでは、ある日この世界に現れた“情報の海の怪物”と、
それに巻き込まれた人々の物語を始めよう。


空想ショートショート『情報の海のゾンビたち』

ある日、ネット上に突如として奇妙な現象が発生した。
𝕏を開いたユーザーたちは、誰もが不可解な投稿を目撃するようになったのだ。

「これは真実だ!政府は我々に隠している!」
「お前ら情弱はまだそんなことも知らないのか?」
「AIが支配する未来に備えろ!俺の言うことを信じろ!」

それらは、ただの陰謀論や扇動的な発言に見えたが、
奇妙なのは、それを発信するアカウントが次々と“同じ内容”を繰り返し投稿することだった。
まるでプログラムされたかのように、同じワード、同じ語調で溢れかえっていく。

「なんだこれ、バグか?」

SNSエンジニアのアオイは、不気味に感じながらも、
その異常な投稿のパターンを解析してみることにした。

「これは…まるで“感染”しているようだ」

彼女の分析によれば、この現象はある種の情報ウイルスだった。
特定のワードやフレーズを見たり、リツイートしたりすると、
脳がその内容を信じ込むようにプログラムされ、
感染者もまた同じ言葉を拡散するようになってしまう。

「まるで…ゾンビじゃないか…!」

その名も 「情溺ウイルス」。
感染者は情報の海に溺れ、やがて理性を失い、
インプレッションという名の餌を求めて徘徊する インプレゾンビ へと変貌していく。

アオイは急いでSNS上で注意喚起をしようとしたが、
すでに「情溺ウイルス」に感染したユーザーたちによって、
「アオイはフェイクニュースを流している!」と攻撃されてしまった。

「これじゃダメだ…戦うんじゃない、避けるんだ」

彼女はスマホを閉じ、パソコンの電源を落とし、
静かに深呼吸をした。

そして、何気なく近所の公園を歩いてみた。
夕暮れ時、風に揺れる木々の音、犬の散歩をする老夫婦、
子供たちの笑い声…。

「現実って、こっちのことだったよね…?」

その瞬間、彼女の中で何かが解けた。
「情報の波に飲み込まれず、ただ目の前の現実を感じること。」
それが 「情溺ウイルス」の唯一の解毒剤 だったのだ。


エピローグ

この物語の「情溺ウイルス」とは、現代社会における情報過多による認知バイアスを象徴している。
SNSで飛び交う膨大な情報の中には、陰謀論、扇動、過激な意見が渦巻いている。
そして、それらの情報に触れることで、私たちの脳は知らず知らずのうちに影響を受ける。

心理学では「確証バイアス」と呼ばれるが、
人は自分が信じたいものだけを信じ、都合の悪い情報を無視する傾向がある。
「情強な賢い馬鹿」も、「情弱な純粋な阿呆」も、
結局はこのバイアスに囚われ、情報の海に溺れてしまう。

そして、現代のSNSでは「インプレッション数」という数値が
まるでゾンビの餌のようにユーザーを駆り立て、
情報を拡散し続ける仕組みになっている。

では、どうすれば「情溺ゾンビ」にならずに済むのか?

それは、アオイが気づいたように、
「情報の海から一歩引いて、現実を感じること」だ。

SNSを閉じ、リアルな世界を歩き、人と直接会話し、
風の音を聞き、心を落ち着ける。
そこにあるのは、インプレッションではなく「実感」なのだから。

争いは勝ち負けではなく、「避けるが勝ち」。
情報の海で泳ぎ続ける必要はない。
時には、スマホを閉じて、ただ空を見上げることが、最も賢い選択なのかもしれない。


著:シン人類 〜原案:SonSin、絵と文:HAL2024(ChatGPT)〜

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