第15夜 動物園の「ふれあい」について考えよう!
今回は、3月に京都市動物園で開催された「動物園DEサイエンストーク『動物園でサイエンスコミュニケーションを始めよう!ー「ふれあい」をテーマにー」から着想を得て、動物園の「ふれあい」についてみなさんとじっくりお話しをしました。
また、実際に京都市動物園のイベント時にいただいたご意見も共有して、このテーマについてどう思うか、一緒に深く考えていきました。
ぜひこの記事を通して、「ふれあい」について考えてみてください。
1. みなさんに質問しました!
最初にみなさんに、動物園での「ふれあい」のイメージをお聞きしました!
参加者のみなさんからは、
・動物が大好きなので、子どもの頃は楽しいイベントだと思っていた。小~中学校くらいからかわいそうというイメージが強くなってきた
・犬猫以外の動物に触れるからワクワクしていた
・牛とかヤギなどが結構大きくて驚いた
・昔は勝手に触ってくださいという形式が多かったので、正しくふれあえてない人がいてやるせない気持ちになったことがある
などのご意見をいただきました!
たしかに、「ふれあい」は楽しい場所だったり、動物をもっと好きになるきっかけだったり、印象に残っている人も多いと思います。
一方で、コメントでもいただきましたが、動物がかわいそうという気持ちだったり、正しくふれあえていない場面を見て心苦しくなったという思い出がある人もいると思います。
そんな、複雑な気持ちになる動物園の「ふれあい」。
ここからは、動物園の役割について、そして「ふれあい」はどんな役割を担っているのかをお話しました。
2.考えてみよう!動物園の「ふれあい」の役割って?
まず、そもそも動物園の役割はどういった位置づけなのかを紹介しました。
動物園には、4つの役割があることをご存じでしょうか?
順番に見ていきましょう。
1つめは、動物を守る「保全」。
2つめは、動物のことを伝える「教育普及」。
3つめは、動物のことを調べる「研究」。
4つめは、動物園をみんなで楽しむ「レクリエーション」。
この4つの役割から考えると、
動物園の「ふれあい」は、教育普及とレクリエーションの役割が当てはまります。
もともと「ふれあい」は、動物に触れて楽しみながら、命のぬくもりを五感で感じて学んで欲しいという想いから始まったものです。
実際に生き物に触れると、愛おしい、守りたい、動物のことをもっと知りたいなど、いろいろな気持ちを感じることができます。そして、そういった気持ちを育むことで、たくさんの気づきが得られます。
でも、動物に触れて「かわいかったー!」で終わらせたくないな、と思っている人もいます。
ここでは、わたなべから、『大学生の頃から動物園に関わりを持っているけれど、動物園の役割に「教育普及」とあるからには、動物を通してたくさんのことを感じ、考えて、それを家に持って帰って欲しいと考えている。』というお話しをしました。
そして、触られる側、触られる動物たちの「気持ち」も考えてみよう、という提案をしてみました。
動物が嫌な思いをしてでも「ふれあい」をするのはなんだか違うようにも思いますし、京都市動物園のイベント時のコメントでもそういった考えが寄せられました。
では、実際に「ふれあい」に使われている動物には、どのような影響があるのでしょうか。
研究結果から考えていきます。
3.動物園での「ふれあい」、動物への影響は…?
京都市動物園でのイベント時には、京都市動物園のふれあい施設である「おとぎの国」で調査研究をされている帝京科学大学の戸澤あきつ先生と、京都市動物園の研究員である山梨由美さんが、テンジクネズミとヤギを対象にした研究結果と動物園での取り組みを紹介してくださいました。
お二人の研究成果に関しては、概要についてのみお話しチェックをいただいて皆さんに共有しました。
京都市動物園のテンジクネズミは、抱きかかえて実施した「ふれあい」とカゴに入れたまま、背中のみをなでで行う「ふれあい」では、いずれもストレスを感じていることが分かりました。
一方ヤギは、触れられてもそこまでストレスを感じていない個体が多いのでは?という結果でした。しかし、ふれあいに来る人が増えると人を避ける行動が出る個体もいました。
この調査結果は、あくまでも京都市動物園の場合のお話しで、他の動物園では環境も変わりますし、それによって結果も変わってくると思われます。
京都市動物園では、この研究結果から、テンジクネズミにさわらない「ふれあい」のプログラム「MIKKE(みっけ)」に変更して実施しています。
詳しくは前回のnoteに掲載していますので、そちらも併せてご覧ください。
こういった、新しい「ふれあい」の模索には、動物がどのように感じているか徐々に分かりつつあるという背景があります。
今後は、動物に負担をかけない「ふれあい」のスタイルや方法を考えていく必要がありそうです。
4.これからの「ふれあい」をどうしていきたい?
参加者の皆さんにここまで聞いていただいて、今度はみなさんと思ったことや感じたことを共有しました。
MIKKEについては、こういった意見が出ましたよ。
・MIKKEは動物が苦手な人でも、見ているだけでも勉強になるのが素敵だなと思った
・触ることで分かることもあるので、動物福祉に配慮して教育につなげていけるふれあいが実現できたらいいな
・MIKKEは視覚障害がある人は楽しめないかも…
・動物介在療法にも取り入れられるかも?アレルギーがある人にも優しそう
そして、具体的に新しい「ふれあい」のアイデアも出ました!
・咀嚼音を聞く
・生活音でなんの動物か当てるクイズ
・型を取って足跡を触る
・換毛で抜けた毛、羽を触る
そして、こんなコメントも。
ふれあえるようトレーニングしたらどうか?という話題では…
・過剰にトレーニングしてしまうと、この動物は触られるのが好きなんだ!と思われて、認識にずれが起きそうで心配
テンジクネズミとヤギの研究について…
・ヤギがモルモットよりストレスが少なかったのは、サイズ感の違いもあったのかな?
・モルモットにとっては(私たちは)巨人みたいだから、ふれあう動物種を考え直すことも必要かも
そのほかにも、子どもがネガティブな反応をしたときに大人はどんな対応をすればいいか、ご自身の思い出、今度動物園に行きます!といったお話など、いろいろなお話しができました!
5.まとめ『楽しかった!だけでなく、触られる動物のことも考えた「ふれあい」の実施を考えたいね』
今回は、動物園の「ふれあい」についてみなさんとざっくばらんと話す機会になりました。
また、いろいろな考えやアイデアが出て素晴らしい1時間でした。
現在、動物園では今後の「ふれあい」をどうしていくか、さまざまな見直しが行われています。
そして来園者である私たちも、触られる動物たちのことを考えた「ふれあい」を考えていく必要があります。
次に動物園に行くときには、どのような「ふれあい」が行われているか、ぜひこの回を思い出して見てみていただけると嬉しいです。
6.次回予告
次回は、学校飼育動物をテーマにした内容を掲載します!
どうぞお楽しみに!
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