第9夜 日本のクマに想いを馳せよう
今回は日本のクマにスポットを当てて、おかれている現状と課題、そして私たちはクマとどう付き合っていけばよいか、参加者の皆さんと想いを馳せました。
1.クマってどんな動物?
まずはじめに、世界にクマは8種類いるということを共有しました。そのうちの2種類が日本で暮らしています。
北海道に生息するヒグマは、世界では北半球に広く分布しています。北海道では5つの地域個体群に分かれており、札幌の個体群は絶滅のおそれのある地域個体群に指定されています。
本州・四国に生息するツキノワグマは、世界ではアジアに広く分布しています。昔は九州にも生息していましたが、現在は絶滅したとされています。四国のツキノワグマは、数十頭しか生息していないと考えられており、絶滅が危惧されています。
2.クマの特徴を比べてみよう
ヒグマはホッキョクグマの次に大きなクマで、日本では一番大きな陸上哺乳類です。なんでも食べる雑食性で、植物の芽やアリや魚も食べます。
ツキノワグマは胸に白い三日月模様があるのが特徴で、ヒグマより小柄です。ドングリやはちみつ、草を食べます。やや草食寄りの動物です。
ヒグマとツキノワグマに共通しているのは、冬眠をすることです。
こちらに特徴をまとめましたので、ぜひ見てみてください。
3.クマの問題って、何だろう?
クマの知識を共有したところで、今度はクマと人のあいだに起こっている問題を整理していきました。
まずは、農作物被害についてです。
令和2年度の報告では、クマによる農作物被害額は5億円でした。
一番被害のある農作物は、家畜の飼料に使われる飼料用トウモロコシ(デントコーン)。クマは畑の端から食べ始めるのでなく、なぜかトウモロコシ畑の真ん中に行って食べるため、背の高いトウモロコシ畑ではクマの存在に気付きづらく、人との接触事故も多いとのことです。
次は、果実類です。果実は単価が高いため、被害額も大きくなり、大変問題です。
そのほか木材になる針葉樹の被害もあります。クマは杉の皮をはいで、間の薄皮や樹液を食べます。また、爪痕を残して縄張りを示すような行動もするので、材木としての価値がなくなっていしまうという被害が出ています。
また、餌付けの問題もあります。
ヒグマの例でいうと、観光客が面白がって餌をやったり、良い写真を撮りたいがために与えるケースが挙げられます。また、ヒグマが出没した道路では、観光客が車を止めてしまい道路渋滞が発生することもあるほどです。
無責任な餌付けによって、近隣の小学校に出たクマが捕殺されることもあります。
さまざまな要因によって、人との接触が多かったり、人に危害を加えたクマは駆除の対象になります。
令和2年度の調査では、1年間でこれだけの数のクマが駆除されています。
4.クマが住む地域の人は、どう感じているのだろう?
ツキノワグマとヒグマ、それぞれが住む地域で暮らしている人々は、クマのことをどう感じているのかを共有する前に、参加者のみなさんに質問をしました。
①野生のクマを見たことがありますか?
今回参加された方々と私たちを含め、全員、野生のクマを見たことがありませんでした。都市部に住んでいたりすると、なかなか出会う機会がないかもしれませんね。
②クマに対して、どんなイメージがありますか?
こちらはいろいろな感想をいただいて、とても面白かったです!
参加者のみなさんのクマのイメージをお聞きしたところで、地域の方々のアンケート調査の結果をシェアしました。
まずは、四国のツキノワグマについてです。
徳島と高知に暮らす人にアンケート調査が行われた例を紹介しました。
クマが絶滅しても関係ないという方も多いですが、クマがいることで多くのほかの生き物を守ることができます。こういった生物種のピラミッドの頂点にいて、その動物種を正しく守ることで環境も守られ、多くの生物を守ることができる種を「アンブレラ種」と言います。
クマがいなくなることで、今後豊かな森がなくなってしまうかもしれません。
次に、ヒグマです。
ヒグマが住む北海道の人々、今回は札幌に住む人はどう感じているのか?というアンケート結果がありましたので、こちらもシェアしました。
この結果を見て、ヒグマは北海道全域に生息しているけれども、北海道の人でもクマについて学ぶ機会があまりないことに驚きました。
同時に、クマのことをよく知らない人も、正しい知識を持つことで前向きに対策したいと考えるのだなと分かったアンケート結果でした。
5.クマに出会ったらどうする?正しい知識をシェアしよう!
次に、これからクマに出会ってしまったら?クマを守るためには何ができるか?を中心にシェアしました。
6.みんなで感想やエピソードを共有しよう
今回、クマの情報を知ってどんなことを感じましたかなど、参加者のみなさんと感想を共有しました。
そのほか、
・クマに出会った時の対処を知っていましたか?
・仔グマは可愛いけど、親グマに会ったらやっぱり怖そうですね
・動物園でクマのことをどのように伝えているのでしょうか?
・保護されたクマが動物園で飼育されているケース
・今後、どうやってクマと付き合っていこう?
などなど、参加者のみなさんと話し合いました。チャットで皆さんのいろいろなお話しを聞くことができて、とても楽しかったです!
7.むすび
私たちの暮らす日本には、様々な動物たち、生き物たちが暮らしています。どの国でもそうかもしれませんが、対策が遅れて、絶滅してしまってはもう遅いのです。そんな危機がクマたちだけでなく、様々な動物に迫っています。
今回なぜクマを取り上げたかというと、クマが暮らす森ではクマが生態系の頂点にいるので、クマを守る、クマが暮らせる環境づくりをすることが、そのほかの生き物を守ることに繋がるからなのです。
しかし、そもそも関心がなければ、知ることがなければ守ることもできません。
情報を発信する側の発信不足も、もちろんありますが、皆様自身もアンテナを高くして、生き物たちのことに、少しでも関心を寄せていただけたらと思います。ヒトも生き物も、みんなが豊かに暮らしていける日本にしたいですね。
8.次回の掲載予告
次回は
『第9夜 畜産の副産物』の内容を掲載します。
どうぞお楽しみに!
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【第8夜で使用した参考文献】
・シリーズ:クマの保護管理を考える(9)クマと人間の今昔 ~弘前藩史料より(1) WWF
・SHIRECOCO シレココ ヒグマを正しく知る
・NPO法人信州ツキノワグマ研究会
・【超危険?!】クマに出会ってしまった場合の正しい対処法 ハンティングスクール長野
・長野県 林務部森林づくり推進課鳥獣対策・ジビエ振興室
・日本クマネットワーク
・豊かな森の生活者 クマと共存するために
・クマ類の出没対応マニュアル 環境省自然環境局
・クマに関する各種情報・取組 環境省
・日本自然保護協会(NACS-J)
・石川県Q&A クマとどうつきあうか?
・農作業中のクマ類の出没に対する指導の徹底 農林水産省
・クマ類による人身被害について [速報値] 環境省
・アイヌは如何にして熊を狩猟したか 狩猟の象徴的意味と行動戦略 煎本 孝
・クマ類の捕獲数(許可捕獲数)について [速報値] 環境省
・全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和2年度)
・WWF クマによる被害
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